大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

大阪高等裁判所 昭和61年(う)1259号 判決

本籍

大阪府枚方市宮之阪三丁目五九六番地の一一六

住居

大阪府寝屋川市寿町四九番五号

警備保障会社臨時社員

城戸高虎

昭和一三年八月二四日生

右の者に対する相続税法違反、所得税法違反被告事件について、昭和六一年一〇月二日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し、検察官から控訴の申立があったので、当裁判所は次のとおり判決する。

検察官 藤村輝子 出席

主文

原判決中、被告人に関する部分を破棄する。

被告人を懲役一年六月及び罰金一、五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

本件控訴の趣意は、大阪地方検察庁検察官検事荒川洋二作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。

論旨は、要するに、原判決は、被告人を懲役一年六月及び罰金一、五〇〇万円に処したうえ、「右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。」旨の言渡しをしたが、右労役場留置の言渡しは、その期間が二年を超えている点において法令の適用を誤った違法があり、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。

そこで、検討するに、原判決が、被告人を懲役一年六月及び罰金一、五〇〇万円に処したうえ、「右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。」旨を言い渡したことは、原判決書の記載から明らかであるところ、右労役場留置の期間は、その換算率に従って計算すると七五〇日となり、二年を超えることが明らかである。そうすると、原判決は、罰金を完納することができない場合の労役場留置期間の上限を二年と定めた刑法一八条一項に違反して労役場留置の言渡しをしたものといわなければならない。(なお、同法一八条三項は、罰金を併科した場合における留置の期間を三年以下とすることができる旨を規定しているが、本件のように同法四八条二項により二個以上の罰金を併合罪として一個の罰金刑に処する場合は、これに当たらないと解すべきである。)

したがって、原判決には、労役場留置の言渡しにつき法令の適用の誤りがあり、その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由がある。

よって、刑事訴訟法三九七条一項、三八〇条により原判決中、被告人に関する部分を破棄したうえ、同法四〇〇条但書によりさらに判決することとし、原判決の認定した各事実にその挙示の各法案(刑種の選択、併合罪の処理及び労役場留置に関するものを含む。なお、原判決は、「法令の適用」欄の「懲役刑の執行猶予」の項において、「刑法二五条一項」と記載するのみで、被告人に対する関係でこれを適用しない旨を明示していないが、「量刑の理由」欄の記載によれば、右法条を被告人に適用していないことが明らかである。)を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山中孝茂 裁判官 高橋通延 裁判官 野間洋之助)

昭和六一年(う)第一二五九号

○控訴趣意書

相続税法違反

所得税法違反 城戸高虎

右被告人に対する頭書被告事件につき、昭和六一年一〇月二日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し、検察官から申し立てた控訴の理由は、左記のとおりである。

昭和六二年一月二二日

大阪地方検察庁検察官検事 荒川洋二

大阪高等裁判所第一刑事部 殿

原裁判所は、罪となるべき事実として、公訴事実(但し、昭和六〇年一二月二七日付け起訴にかかる公訴事実につき訴因変更後のもの)と同一の事実を認定した上、「被告人を懲役一年六月及び罰金一五〇〇万円に処する。右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。」旨の判決を言い渡したが、右判決は二年を超える期間労役場留置を言い渡した点において法令の適用を誤った違法があり、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから到底破棄を免れない。

すなわち、刑法第一八条第三項によれば、罰金を併科した場合においては、三年以下の期間労役場に留置することができる旨明定されているが、右条項にいわゆる罰金の併科というのは、同法第四八条第二項の適用により一個の罰金刑を科す場合のことではなく、併合罪でありながら同法第四八条第二項の適用がないため、数個の罰金を科す場合若しくは確定裁判の介在により併合罪関係がないため、各罪別に数個の罰金を科す場合を指称するものと解すべきところ(福岡高等裁判所昭和六一年一月三一日第三部判決・判例時報一、一四三号一五七頁、東京高等裁判所昭和五六年九月二五日第一部判決・税務訴訟資料第一二六号二、〇〇九頁、名古屋高等裁判所昭和四〇年一一月三〇日第四部判決・下級裁判所刑事裁判例集第七巻第一一号二、〇三四頁、福岡高等裁判所昭和三三年三月二五日第二部判決・高等裁判所刑事裁判特報第五巻第三号九九頁)、本件は刑法第一八条第三項の「罰金を併科したる場合」に該当しないことが明白である。したがって、本件において、被告人を労役場に留置できる期間は、刑法第一八条第一項の規定により二年以下であり、罰金刑の換刑処分は一日二万五四八円以上でなければならないのに、原判決がこれを一日二万円と換算したことは被告人を二年と二〇日労役場に留置することになり、原判決はこの点につき法令の適用に誤りがあって、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかである。

よって、原判決を破棄し、更に適正な裁判を求めるため、本件控訴に及んだ次第である。

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com