大判例

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大阪高等裁判所 昭和61年(ラ)532号 決定

一、本件抗告の趣旨と理由及びこれに対する相手方の答弁は別紙(一)(二)記載のとおりである。

二、当裁判所の判断

当裁判所も原決定同様原決定主文記載の帳簿の提出を抗告人に命ずべきものと判断する。

相手方の本件文書提出命令は特許法一〇五条に基づくものであるところ、抗告人は要するに準備書面において販売数量、売上高を開示したから文書提出命令の必要性はない、特許法一〇五条は本件のような通常実施権の侵害を理由とする損害賠償の当事者に適用されない、本件文書の提示は抗告人の営業の秘密を侵すことなどを主張する。

成程、特許法一〇五条は同法一〇二条の自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対する損害賠償請求につきその侵害行為により利益を受けた者がある場合に、その利益の額を損害額とみる規定に対応したものであるが、通常実施権者の侵害についても、これを類推適用ないし同条と同趣旨の推認を行うべきであるから、通常実施権者たる相手方会社の侵害についても同法一〇五条に準じて文書提出命令を発し得ると解するのが相当である。

なお、相手方中塚善造は特許権者であり、もともと同法一〇五条が適用される。

次に、抗告人の主張の利益額と相手方主張のそれとには争いがあることが記録上明らかであり、抗告人の準備書面提出によつては本件文書提出命令の必要性が解消したともいえないし、抗告人のいう営業の秘密は特許法一〇五条に照らし、同条の適用を否定する根拠とならないことが明らかである。

そのほか、一件記録を調べてみても、原決定を取り消すに足りる違法の点はみあたらない。

したがつて、原決定は相当であつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

〔編註その一〕 本件における主文等は左のとおりである。

京都地方裁判所昭和六一年(モ)第一五七一号文書提出命令申立事件について同裁判所が昭和六一年一一月二五日にした文書提出命令に対して、抗告人から即時抗告の申立てがあつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

〔編註その二〕 原決定の表示は左のとおりである。

被告精華織物株式会社は、昭和六一年一月一四日午後一時の事件口頭弁論期日までに、昭和五八年四月から同六一年七月末日までの期間の貸借対照表、損益計算書、売上帳又は売掛帳を提出せよ。

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