大判例

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奈良地方裁判所葛城支部 昭和37年(ワ)63号 判決

奈良県大和高田市大字高田三三一番地の一

原告

上北正義

右訴訟代理人弁護士

白井源喜

奈良県吉野郡西吉野村大字和田一一三番地

被告

中上冨一

右当事者間の頭書事件について、当裁判所はつぎのとおり判決する。

主文

被告は原告に対し別紙第二号目録記載の物件が原告の所有であることを確認せよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文第一、二項同旨の判決を求めその請求原因として訴外中嶋安治は戦前麩凍麺の製造業をしていたが終戦後はパンの製造業を営み、昭和二二年一二月別紙第一号目録の建物を建築し、別紙第二号目録の門及び塀を築造し、右第一号目録中の本家に居住し工場倉庫でパンを製造していたが、昭和三一年にいたり右パンの製造業を廃し昭和三二年七月に右家屋で料理旅館業を経営することを目論見、原告に対しその資金の融通を依頼して、別紙第一号目録の家屋及び附属物有姿の儘で抵当権を設定する旨申出たので、原告は同月五日極度金二〇〇万円存続期間昭和三三年七月四日とする手形割引根抵当権設定契約をなし、金二〇〇万円を貸付け、別紙第一号目録の家屋につき根抵当権設定登記を経由したが、同年九月になつて右中嶋安治より更に金一〇〇万円の融通してくれなければ料理旅館を経営することができないというので原告は同訴外人に更に金一〇〇万円を融通すると共に前の金二〇〇万円の根抵当権設定登記を抹消して奈良地方法務局葛城支局同日受付第三六〇七号を以て債権額金三〇〇万円利息年一割五分、同支払期日毎月五日、元金弁済期日昭和三四年九月二四日、利息の支払を一回でも遅滞したときは、期限の利益を喪失する旨の抵当権設定登記を経由した。しかるに右訴外中嶋は昭和三二年一二月まで右利息の支払をなしたが、その後の支払をしないので、原告は前記約旨により期限の利益を取消し、右中嶋安治に対し右債権額金三〇〇万円の支払を請求をしたがその支払がないので右根抵当権を実行し別紙第一号目録の家屋について競売の申立をなし、奈良地方裁判所葛城支部昭和三三年(ケ)第一九号不動産競売事件として処理されるにいたつたが、訴外中嶋安治は被告及び訴外和田宗安と共に原告に対して被告において右不動産を競落して原告の債権を弁済する旨申出たので、原告はこれに協力すべくその競売期日に競売の申出をなさず結局被告が競落したが、残代金支払期日に代金を納入せず競落が取消され、昭和三五年一月二七日両競売期日に原告において、右別紙第一号目録家屋を競落し、同月二八日競落許可決定があり同年一一月二八日原告は別紙第一号目録の家屋の所有権移転登記を受けた。ところで、別紙目録中の二階建居宅の南方正面に瓦葺塀通用門があり、その門の東と西に瓦葺塀がありその通用門と二階建家屋とは瓦葺客廊路によつて連り竹割塀がその間にあり東方の瓦葺塀の東側につづいていてコンクリート門と板塀が築造されて、結局別紙第一号目録の家屋を別紙第二号目録の塀と門とによつて囲繞しているのである。しかして民法第二四二条によると不動産の所有者はその不動産の従としてこれに附合した物の所有権を取得する旨規定がありその附合とは必ずしも物理的に接着していることを要するものではなく、その物が不動産の従として附合せしめられたもので、その物のみにて独立の物としての経済上の効用を全うすることを得ず、主たる物と併合することによりその経済的効用を全うし得るときは民法第二四二条の適用を受けるものである(大審院大正五年オ第六七八号同年一一月二九日判決大審院判決抄録六九巻一五五六七頁同趣旨)本件において別紙第二目録の物件は別紙第一号目録の家屋の門と塀であつて家屋そのものでないが、その家屋の従として原告の債務者である訴外中嶋安治が別紙第一号目録家屋の所有者であつた当時に附合せしめたものであるから、前記の如く原告が右第一号目録の家屋を競落によりその所有権を取得すると同時にその家屋に附合せられた別紙第二号目録の門と塀も原告の所有となつたものである。このことは民法第八七条第二項の従物は主物の処分に随う旨の規定や民法第三七〇条の抵当権は抵当地の上に存する建物を除く外その目的たる不動産に附加してこれと一体を成した物に及ぶとする旨の規定からしても明らかである。すなわち抵当権の目的物である不動産の常用に供せられる物は建物を除き抵当権の範囲に属せしめ、抵当権実行について、主物の利用価値を減損せずその経済上の効用を充実せしめようとする目的に出たもので、主物である建物の利用価値を標準として担保価値を定めるを常とする抵当権設定の場合も右法条により抵当権の範囲を定むべきものである。本件の第二号目録の門と塀は主たる建物である第一号目録の常用のために築造された従物であり、その門を通行することができないとか、塀が家屋と別の所有者に属することになれば、主たる建物の経済的な価値はなくなるものである。されば前記民法第八七条第二項、第三七〇条の趣旨からしても、第二号目録物件は主たる第一号目録の従物として原告所有となつたものである。尚又家屋台帳法第二条によると家屋とは住家、店舗工場倉庫その他の建物という旨の規定があり門と塀は家屋台帳法の家屋ではなく従つてそれを独立に不動産登記はできない。その点からしても民法第三七〇条により抵当権の目的である不動産に附加された物であると共に抵当権の目的である建物の常用に供する従物である門と塀とは抵当権の実行により前所有者の訴外中嶋安治により競落により原告所有となつたものであること明白である。しかるに被告は昭和三七年春右門と塀を訴外中嶋安治より買受けたと称して原告所有を争うので本訴請求に及んだと述べ立証(省略)

被告は原告の請求棄却の判決を求め答弁として原告の主張事実はこれを争う、別紙第二号目録物件は被告が昭和三四年一月二三日訴外中嶋安治より買受けたものであると述べ立証として乙第一号証を提出し証人和田宗安の尋問を求めたが甲号各証の認否をしなかつた。

理由

(証拠―省略)を綜合すると、原告はその主張の如き経過により訴外中嶋安治に対し同人所有であつた別紙第一号目録記載家屋につき抵当権を設定して結局合計金三〇〇〇、〇〇〇円を融資したが同訴外人の不払により、右抵当権を実行して、右家屋につき競売の申立をなし、昭和三三年八月二一日奈良地方裁判所葛城支部において右不動産に対する競売開始決定があり、その手続進行して原告主張の如く昭和三五年一月二八日原告に対し右不動産の競落許可決定があり同年一一月二八日その所有権移転登記を経由されたこと。

別紙第二号目録記載の物件は原告が前記の如く競落した別紙第一号家屋を囲繞する門塀であつて、前所有者の中嶋安治において、右家屋の常用に供するためこれに附属せしめたもので、前記右家屋の抵当権の範囲に含まれていたものであることが認められ(省略)他に右認定を覆えすに足る証拠はない。そうすると原告所論の如く民法第八七条、第二四二条、第三七〇条本文の各規定に照して別紙第二号目録物件は、原告の前記別紙第一号目録記載家屋の競落による所有権取得により原告の所有に帰したものと認めるが相当であつて乙第一号証によると被告は昭和三四年一月二三日訴外中嶋安治より別紙第二号目録記載物件と推定される門塀を買受ける旨契約したことが認められるけれども、これによつて被告が原告に対しその所有権を主張し得るものとは解し得ない。

よつて原告の本訴請求はこれを正当として認容し訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

奈良地方裁判所葛城支部

裁判官 坂 口 公 男

第一号目録

大和高田市大字高田一一六一番地の一家屋番号同所第一三一四番の二

一木造かわらぶき弐階建居宅 一棟

建 坪  四八坪五合九勺、外二階坪三三坪四合一勺

附属第一号

木造かわらぶき平家建倉庫 一棟

建 坪  二二坪八合二勺

附属第二号

木造かわらぶき平家建工場 一棟

建 坪  一六坪五合六勺

第二号目録

第一号目録建物を囲繞する

一、木造瓦葺通用門両くぐり附

二、瓦葺木造塀延長二十一間

三、木造瓦葺客廊路

四、右附属竹割塀延長三間

五、コンクリート造通用門両くぐり附

六、右附属板塀延長十七間

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