大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

宇都宮地方裁判所 平成6年(ワ)193号 判決

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1. 被告は、原告に対し、金八一万二四四九円及びこれに対する平成六年二月六日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2. 訴訟費用は被告の負担とする。

3. 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1. 原告は、訴外日光重機株式会社(以下訴外会社という。)に対し、昭和五二年一〇月二五日、金四七〇万円を貸し渡したが、訴外会社は、元金の内金二二六万二〇〇〇円と昭和五五年七月九日までの利息を支払ったのみで、残存元本金二四三万八〇〇〇円の分割弁済及び昭和五五年七月一〇日以降の利息の支払をしなかったため、特約により、期限の利益を失った。

2. そこで、原告は訴外会社に対し貸金請求訴訟(事件番号東京地方裁判所昭和五六年(ワ)第八二九五号)を提起し、同裁判所は昭和五六年一〇月八日、原告全部勝訴の判決をなし、右判決は確定した。

3. 一方、被告についての宇都宮地方裁判所昭和五二年(ミ)第一号更生手続開始事件(以下本件更生手続開始事件という)において、昭和五五年九月四日、同裁判所によって更生計画認可の決定がなされた(以下旧更生計画という)。この旧更生計画における訴外会社の被告に対する更生債権の弁済計画は左のとおりであった。

確定債権額 金一二七二万七〇〇〇円

債権免除額 金九五四万五二五〇円

弁済額 金三一八万一七五〇円

弁済方法

第一回(昭和五五年一二月三一日) 金二〇〇万円

第二回ないし第一四回(昭和五六年一二月三一日から昭和六八年一二月三一日まで毎年一二月三一日限り) 計金一〇九万七三三〇円

(毎回金八万四四一〇円)

第一五回(昭和六九年一二月三一日) 金八万四四二〇円

4. 原告は、第1項記載の貸金債権中、元金分金二四三万八〇〇〇円を被保全債権とし、旧更生計画によって変更された訴外会社の被告に対する更生債権(以下旧更生債権という)を差押債権として、債権仮差押命令の申請をなし(事件番号東京地方裁判所昭和五五年(ヨ)第九六八五号)、同裁判所は、昭和五五年一二月二五日に債権仮差押命令をなした。

5. しかるに、訴外株式会社常陽銀行も、訴外会社に対して、債権を有していたので、旧更生債権につき、仮差押命令の申請、次いで差押命令の申請をなしたため、差押競合の状態になった。

6. その後、旧更生計画にもとづき、被告が昭和五五年一二月三一日に支払うべき金二〇〇万円については、宇都宮地方裁判所昭和五六年(リ)第五号配当事件において、昭和五六年八月一〇日に左のとおり配当がされた。

手続費用 金一万〇三五五円

訴外株式会社常陽銀行に対し 金一〇四万五五三五円

(債権額元本 金三一一万円)

原告に対し 金九四万四一一〇円

(債権額元本 金二四三万八〇〇〇円右配当日までの遅延損害金 金三七万〇三〇八円)

7. 原告は、昭和五六年一〇月二一日、残存元本金一八六万四一九八円及びこれに対する昭和五六年八月一一日から同年一〇月二〇日までの遅延損害金五万〇七六七円の合計金一九一万四九六五円を請求債権とし、旧更生債権を差押債権として、債権差押命令を申請し(事件番号宇都宮地方裁判所昭和五六年(ル)第一四五号)、同年一〇月二六日、債権差押命令(以下本件差押命令という)がなされ、同命令は、訴外会社に対し、同年一一月三日、被告に対し、同年一〇月二八日にそれぞれ送達された。

8. ところがその後、昭和五六年一二月一七日、東京高等裁判所において、旧更生計画を認可した原決定を取り消し、宇都宮地方裁判所に事件を差戻す旨の決定がなされた。そして、右差戻決定にもとづいて、宇都宮地方裁判所は昭和五八年一一月一八日、新たな更生計画(以下現更生計画という)の認可の決定をなした。この現更生計画による、訴外会社の被告に対する更生債権の弁済計画は、左のとおりであった。

確定債権額 金一二七二万七〇〇〇円

債権免除額 金九五四万五二五〇円

弁済額 金三一八万一七五〇円

弁済方法

第一回

弁済総額 金二〇七万三八五九円

原認可決定による支払済金額 金二〇〇万円

相殺金額 金二〇〇万円

差引弁済額 金七万三八五九円

第二回ないし第一五回(昭和五九年から昭和七二年まで毎年三月末日限り)

一回当り 金七万三八五九円

総額 金一〇三万四〇二六円

第一六回 金七万三八六五円

(昭和七三年三月末日限り)

9. 前項の現更生計画によれば、第一回の差引弁済額金七万三八五九円と第二回ないし第一一回の弁済額の合計は、金八一万二四四九円である。

10. しかるに、被告は、旧更生計画が取り消され、本件差押命令送達後の昭和五八年一一月一八日、現更生計画が認可されたため、本件差押命令が失効したこと及び本件差押命令送達後、訴外会社に対して取得した債権を以って相殺したとの理由で、前項記載の弁済額金八一万二四四九円を原告に対して弁済しない。しかしながら、本件差押命令の差押債権は、本件更生手続開始事件の更生計画によるすべての弁済金を目的とし、従って、現更生計画による弁済金を含んでいる。

よって、原告は被告に対し、金八一万二四四九円及びこれに対する本訴状の被告に対する送達の日の翌日である平成六年二月六日から完済に至るまで民法所定の年五分の遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1. 第1項及び第2項は不知。

2. 第3項ないし第5項は認める。

3. 第6項は不知。

4. 第7項ないし第10項は認める。

本件差押命令の対象は、旧更生計画によって定められた旧更生債権のみであり、旧更生計画の失効により、本件差押命令の対象債権も消滅したものである。

第三  証拠〈略〉

理由

一  請求原因について

1. 請求原因のうち第1項、第2項及び第6項は弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。同第3項ないし第5項及び第7項ないし第10項については当事者間に争いはない。したがって、請求原因についてはこれを全部認めることができるが、争点は本件差押命令の対象が旧更生債権のみであるかどうかであり、これを次に検討する。

2. まず、債権差押えの目的物はあくまで債権そのものであって、弁済金そのものでないことは明らかである。したがって、原告の主張するように、本件差押命令の対象が、現更生計画による弁済金も含む本件更生手続開始事件の更生計画によるすべての弁済金を目的としているとは必ずしも言えない。

ところで、更生計画の認可決定が取り消されると、更生計画は遡及的に効力を失うものと解される。すなわち、旧更生計画の認可決定が取り消されたことにより、旧更生計画も遡及的に効力を失い、それにより定められた旧更生債権も遡及的に消滅し、右債権を目的とする本件差押命令の効力も消滅するものと解される。

二  結論

以上の事実によれば、原告の本訴請求は、理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com