大判例

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宇都宮家庭裁判所栃木支部 昭和59年(少)364号 決定

少年 H・Y(昭三九・一一・一〇生)

主文

昭和五九年(少)第二五一号、同年(少)第三六四号事件につき、少年を中等少年院に送致する。

昭和五九年(少ハ)第一号事件につき、関東地方更生保護委員会が昭和五九年四月二〇日付でなした少年の戻し収容申請を却下する。

理由

一  昭和五九年(少)第二五一号、同年(少)第三六四号事件関係

1  非行事実

少年は、

イ  昭和五九年三月一一日午後一一時四〇分頃、栃木県小山市○○町×丁目×番××号所在「○○マンション」×××号A方において、Bと共同して、トルエンを含有する塗料をビニール袋を利用して吸入し

ロ  同年同月三〇日午後七時四五分頃、肩書住居の自宅において、トルエンを含有する塗料をビニール袋を利用して吸入したものである。

2  適条

イおよびロの各事実につき、いずれも毒物及び劇物取締法第二四条の三、第三条の三(イにつき刑法第六〇条)。

3  処分理由

少年は、いずれも当庁で、昭和五七年五月二〇日、保護観察に付す旨の、同年一〇月四日、中等少年院に送致する旨の保護処分を受けているものであるが、その非行事実は、本件非行に同じいわゆる「シンナー遊び」であつて、本件非行に至るまでの少年の行状は、少年に遵法意識が薄いことを如実に物語る。しかも、本件非行は、少年が上記の保護処分により多摩少年院を仮退院した昭和五九年一月六日から二ヶ月余りしてなされているのであつて、且つ、仮退院後の保護観察に際しては、特に「シンナーは絶対に吸わないこと」を遵守するよう指導されていたのに本件非行に及んでいることを考えると、その感をより強く抱かざるを得ないし、また、多摩少年院における矯正教育を少年が皮相的にしか受け止めていなかつた(受け止められなかつた)のではないかとも推察されるところである。

そこで、当裁判所は、本件非行が上記仮退院後間も無くなされたことや少年の年齢等に鑑み、少年に先の多摩少年院における矯正教育を思い起こさせ、同時に、社会秩序の中で自らを律していくことの大切さを体得させるため、前件処分とは異なつた角度から、少年を試験観察に付し、関係機関に補導委託したのであるが、その結果に徴すると、現時点で、少年に社会内処遇を試み、その健全な育成を図るには、資質的になお問題が多いと結論する外ないというべきである。

そうすると、少年の今後の更生のためには、少年を再び中等少年院に送致し、同院での周到な紀律ある矯正教育によつて、少年に対して資質的な問題点を改善し、善良な一社会人となるべき意識を心底から培養していくのが相当であるといわざるを得ない。

二  昭和五九年(少ハ)第一号事件関係

当裁判所は、上記一で判断したとおり、少年を上記の本件非行につき中等少年院に送致するのを相当と認めるのであるが、同じく院内処遇を施す結果になるとはいえ、少年の年齢や補導委託中の行状等も併せ鑑みると、現時点で、少年に対して戻し収容を決定するに必要な教育期間を定めるのは、少年が再び院内での矯正教育を皮相的に受け止める虞れがあるし、院内教育が硬直化する危険もあるから、そう妥当ではない。戻し収容によらず、少年を再び(新たに)中等少年院に送致するのを相当と判断した所以の一つである。従つて、本件の戻し収容申請は、その必要がないので、これを却下する。

三  まとめ

以上の次第で、少年法第二四条第一項第三号、少年審判規則第三七条第一項、少年院法第二条第三号により、少年を中等少年院に送致することとして、主文のとおり決定する。

(裁判官 滝澤孝臣)

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