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富山地方裁判所 昭和39年(わ)34号 判決

本籍

富山市長江七〇番地

住居

同市荒川一九九番地の二

会社役員

酒井信行

大正一四年一二月一二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官横山鉄兵出席のうえ審理して、つぎのとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月および判示第一の罪につき罰金三〇万円、判示第二の罪につき罰金一二〇万円に処する。

右各罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、富山市荒川一九九番地の二において鉄工業を営んでいたものであるが、所得税を免れる目的をもつて、

第一、昭和三五年分の所得税に関し、同年中(一月一日から一二月三一日まで)における課税総所得金額は別紙第一表に記載するように七六四万二、三六三円であり、その所得税額は三〇三万一、一五〇円であるのにかかわらず、売上加工料収入の一部を正規帳簿に記載せずあるいは架空雇人費、架空仕入を同帳簿に計上する等の方法により所得を秘匿したうえ、昭和三六年三月一四日、所轄富山税務署長に対し、昭和三五年分の課税総所得金額を一三七万五、六〇〇円(その申告納税額三二万二、六八〇円)と虚偽の記載をした所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、昭和三五年分の所得税二七〇万八、四七〇円を免れて逋脱し

第二、昭和三六年分の所得税に関し、同年中(一月一日から一二月三一日まで)における課税総所得金額は別紙第二表に記載するように二、三〇七万一、六五九円であり、その所得税額は一、一五三万四六〇円であるのにかかわらず、前示第一と同様の方法により所得を秘匿したうえ、昭和三七年三月一五日、所轄富山税務署長に対し昭和三六年分の課税総所得金額を四七三万四、五〇〇円(その申告納税額一六一万八、〇二五円)と虚偽の記載をした所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、昭和三六年分所得税九九一万二、四三五円を免れて逋脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の証明書(三五年分所得税確定申告書写添付のもの。同写を含む)

一、右 同(昭和三五年分所得税青色申告決算書写添付のもの。同写を含む)

一、有馬義雄作成の昭和三八年八月二一日付上申書(同書添付の買掛金台帳写を含む)

一、吉川文秀作成の上申書(同書添付の未払費用台帳写、外註加工費台帳写を含む)

一、夏目靖夫作成の上申書(同書添付の買掛帳写を含む)

一、武内宗八、長崎義利、山口憲三、下林愛三作成の各上申書

一、大浦清一作成の上申書(同書添付の買掛帳写を含む)

一、証人村上清造、同松浦久太郎の当公判廷における各供述

一、収税官吏作成の富山市長宛住民登録、印鑑届に関する照会書写および同市長作成の右照会に対する回答書

一、大蔵事務官作成の石黒喜代司、浦田俊雄、山崎貞夫、高松正一郎、岩城清一郎、森井宗一、鎌田正直に対する各質問てん末書

一、釜谷一郎、坂井時雄作成の各上申書

一、押収してある昭和三五年度総勘定元帳一冊(昭和四〇年押第二六号の三)、不二越関係売上帳一冊(同号の四)、昭和三五年伝票綴一、二冊(同号の八)、昭和三五年分給料領収書綴六冊(同号の一三乃至一八)、請求書領収書各四枚(同号の一)、領収書一枚(同号の一九)、請求書一枚領収書二枚(同号の二〇)、請求書二枚領収書二〇枚書留郵便物受領証一枚(同号の二)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の証明書(三六年分所得税確定申告書写添付のもの。同写を含む)

一、右 同(昭和三六年分所得税青色申告決算書写添付のもの。同写を写む)

一、村田政治作成の昭和三八年三月一九日付上申書(同書添付の買掛の買掛金勘定元帳写を含む)

一、松川長俊作成の上申書(同書添付の仕入帳写を含む)

一、川村敬作作成の上申書

一、南三郎作成の上申書(同書添付の仕入帳写を含む)

一、宮沢茂夫作成の上申書(同書添付の買掛帳写を含む)

一、証人松枝信義の当公判廷における供述

一、大蔵事務官作成の大浦清一(二通)、内山精一、白本正男、池田作治、杉本慶広、大野栄子、五十嵐喜義、新田米夫、畠貞夫に対する各質問てん末書

一、中田八吉作成の上申書

一、大蔵事務官作成の信濃勝之、中村浩、飯野利泰、中田撤に対する各質問てん末書

一、品川忠雄作成の上申書(同書添付の註文書写、車輛台帳写を含む)

一、稲田健治作成の上申書

一、株式会社不二越貯蓄組合作成の融資証明書

一、押収してある売掛帳一冊(勘定明細表五枚添付のもの。昭和四〇年押第二六号の五)、昭和三六年分給料領収書綴一綴(同号の一一)、請求書二枚領収書二枚(同号の二一)、請求書領収書各一枚(同号の二二)、領収書二枚(同号の二三)、領収書一枚(同号の二四)、メモ一枚(同号の二六)、売上帳一枚(同号の二七)

一、大蔵事務官作成の領置てん末書三通

一、中浜伝治、白本正男(二通)作成の各証拠品提出書

判示第一および第二の事実につき

一、有馬義雄作成の昭和三八年三月一八日付上申書(協和製作所に関する買掛金勘定帳写添付のもの。同写を含む)

一、右 同(手形領収証写一八通添付のもの。同写一八通を含む)

一、右 同(北富製作所に関する買掛金勘定帳写添付のもの。同写を含む)

一、有馬義雄(昭和三八年九月六日付)、村田政治(同年三月二七日付)、村井弘作成の各上申書

一、安田善一作成の上申書(同書添付の外註加工台帳写を含む)

一、山崎良一作成の上申書(同書添付の買掛金元帳写を含む)

一、高松正一郎作成の上申書(同書添付の買掛帳写を含む)

一、野崎○○、斉藤武信、平野平好、広明健三作成の各上申書(各上申書に添付の各仕入帳写を含む)

一、北川政義、松枝信義の検察官に対する各供述調書

一、大蔵事務官作成の井田繁雄、館清範(昭和三八年八月一九日付)堀田肇、山野芳男、伏脇千鶴子、有馬義雄、村田政治(同年六月一七日付)、清水政義、堀口祐介、西野秀雄、森一高に対する各質問てん末書

一、北川千城外二名作成の査察事件調査事績報告書

一、佐倉隆介作成の昭和三八年四月八日付上申書(同書添付の当座勘定元帳を含む)

一、代継瀬録外一名作成の査察事件調査事績報告書

一、林敏彦作成の上申書(同書添付の手形貸付金元帳写、商業手形元帳写、支払承諾見返元帳写を含む)

一、代継瀬録作成の査察事件調査事績報告書

一、佐倉隆介作成の昭和三八年三月二八日付上申書(同書添付の普通預金元帳写を含む)

一、佐賀田栄二作成の査察事件調査事績報告書三通

一、北川干城作成の査察事件調査事績報告書三通

一、酒井映子作成の昭和三八年九月一一日付上申書(同書添付の納税証明書を含む)

一、中沢勇作外一名作成の査察事件調査事績報告書

一、佐賀田栄二作成の上申書二通

一、押収してある昭和三七年日記帳一冊(昭和四〇年押第二六号の六)、昭和三六年伝票綴一二冊(同号の七)、固定資産台帳一冊(同号の九)、支払調書一綴(同号の一〇)、給料賞与支払控一綴(同号の一二)、昭和三六年度総勘定元帳一冊(同号の二五)

一、大蔵事務官作成の臨検捜索てん末書および差押てん末書

一、柴田蔵八郎作成の上申書(添付書類を含む)

一、大蔵事務官作成の柴田蔵八郎に対する質問てん末書

一、証人松田きよしの当公判廷における供述

一、今浦伊吉、村上一雄、中島辰治作成の各上申書

一、島倉幸彦作成の上申書(同書の添付売掛帳写を含む)

一、大蔵事務官作成の金山武彦、館清範(昭和三八年三月二五日付)、村田政治(同日付)、酒井順一、石原常信、金山早苗に対する各質問てん末書

一、中浜伝治作成の上申書四通

一、同人の検察官に対する供述調書

一、酒井映子作成の上申書二通(昭和三八年五月二九日付、同年同月二〇日付)

一、証人佐賀田栄二、同中浜伝治、同川尻作次郎の当公判廷における各供述

一、川尻作次郎、助田修に対する各意見聴取書謄本

判示事実全部につき

一、大蔵事務官作成の酒井映子に対する質問てん末書一二通

一、酒井映子の検察官に対する供述調書

一、被告人作成の上申書

一、大蔵事務官作成の被告人に対する質問てん末書一九通

一、被告人の検察官に対する供述調書二通

一、被告人の第一四回公判における供述

(弁護人の主張に対する判断)

(一)  弁護人は「昭和三五年度総勘定元帳(昭和四〇年押第二六号の三)に記載された松浦久太郎からの昭和三五年一月八日二〇万円、同年一二月二九日二九万円、同年同月三一日一六万円合計六五万円の材料仕入につき、検察官は架空であるとして否認しているが右六五万円のうち五五万円は右松浦からの真実の鋼材仕入代金であり、一〇万円は被告人が他から機械を購入するに際し、右松浦にその斡旋をしてもらつた手数料であるから、前者は仕入代金として、後者は雑費として、いずれも昭和三五年分の事業所得の計算に当り必要経費に算入されるべきである」と主張するので案ずるに、昭和三五年度総勘定元帳一冊(昭和四〇年押第二六号の三)、昭和三五年伝票綴一二冊(同号の八)のうち一月分、四月分および一二月分の各綴、昭和三六年度総勘定元帳一冊(同号の二五)、昭和三六年伝票綴一二冊(同号の七)のうち一月分、二月分の各綴、請求書、領収書各四枚(同号の一)のうち松浦久太郎作成名義の請求書、領収書各一枚、請求書二枚、領収書二〇枚、書留郵便物受領証一枚(同号の二)のうち松浦久太郎作成名義の請求書、領収書各一枚、北川干城外二名作成の査察事件調査事績報告書、佐倉隆介作成の昭和三八年四月八日付上申書および同書添付の当座勘定元帳写に証人松浦久太郎の当公判廷における供述を綜合すると、被告人は右松浦に対し、昭和三五年一月八日ごろ額面二〇万円満期同年四月一〇日の約束手形一通、同年一二月二九日ごろ額面二九万円満期昭和三六年二月二八日の約束手形一通、同年一月一四日ごろ昭和三五年度の買掛金支払名下に額面一六万円の小切手一通をそれぞれ交付したことが認められ、証人松浦久太郎、同佐賀田栄二の当公判廷における各供述によると、右手形二通、小切手一通は、いずれも被告人がその事業用固定資産としての機械を購入するに際し、右松浦がその斡旋をした手数料として交付されたことが認められる。証人松浦久太郎の当公判廷における供述および被告人の第一四回公判における供述のうち右認定に反する部分はたやすく信用できない。ところで事業用固定資産の購入手数料は当該固定資産の取得価額に含めて計上すべきであり、これを損費勘定に計上して必要経費に算入することは税法上容認されない(昭和四〇年政令第九六号による改正前の所得税法施行規則一二条の一六、一項参照)から、被告人の事業用固定資産である機械購入の斡旋手数料である右六五万円を、事業所度の計算上必要経費に算入することを認めることはできない。よつて弁護人の右主張は採用しない。

(二)  弁護人は「被告人は村上滋次郎に対し、昭和三五年中に三回位にわたり、外注工賃一二万円を現金で簿外に支払つている」と主張するので案ずるに、支払調書一綴(同号の一〇)、酒井映子の検察官に対する供述調書、昭和三五年度総勘定元帳(同号の三)に証人村上清造の当公判廷における供述および被告人の第一四回公判における供述を綜合すると、被告人は村上滋次郎に対し、昭和三五年中に合計一〇万六、〇八〇円(四月分一万八、六六〇円、五月分五万三、一〇〇円、九月分二万二、二〇〇円、一〇月分一万二、一〇〇円)の外注工費を簿外に支払つていることが認められるので同額を昭和三五年の事業所得計算上心要経費に算入すべきものと認める。弁護人主張の一二万円のうち右認定の一〇万六、〇八〇円を超える部分については、被告人は第一四回公判においてこれに副う供述しているがたやすく信用できないし、他にこれを認めるにたりる証拠はない。

(三)  弁護人は「被告人は酒井喜一に対し、昭和三六年中に検察官認定の右喜一に対する簿外外注工賃三六万円以外に、一〇回位にわたり合計一五〇万円の外注工賃を現金で簿外に支払つている」と主張するので案ずるに、被告人は第一四回公判において右主張に副う供述をしているがたやすく信用できないし、他に右主張事実を認めるにたりる証拠はないから、弁護人の右主張は採用しない。

(四)  弁護人は「被告人は北川政義に対し、昭和三六年夏ごろに、外注工賃一〇万円を現金で簿外に支払つている」と主張するので案ずるに、被告人は第一四回公判において右主張に副う供述をしているがたやすく信用できないし、他に右主張事実を認めるにたりる証拠はないから弁護人の右主張は採用しない。

(五)  弁護人は「昭和三六年度総勘定元帳(同号の二五)に記載された松枝信義に対する昭和三六年四月一六日二〇万円、同年五月一八日一五万円合計三五万円の外注工賃につき、検察官は架空であるとして否認しているが、右三五万円は右松枝に対し実際に支払われている」と主張するので案ずるに、昭和三六年度総勘定元帳一冊(同号の二五)、昭和三六年伝票綴一二冊(同号の七)のうち四月分、五月分および六月分の各綴、北川干城外二名作成の査察事件調査事績報告書、佐倉隆介作成の昭和三八年四月八日付上申書および同書添付の当座勘定元帳写、証人松枝信義の当公判廷における供述、被告人の第一四回公判における供述を総合すると被告人から松枝信義に対し実際に外注工賃として昭和三六年四月一六日ごろ額面二〇万円満期同年六月二六日の手形一通、同年五月八日ごろに額面一五万円満期同年六月三〇日の手形一通がそれぞれ交付されたことを認めることができるから、右合計三五万円の外注工賃は昭和三六年度の事業所得計算上、必要経費に算入すべきものと認める。

(六)  更に弁護人は「被告人は右松枝に対し、昭和三六年中に外注工賃として三五万円を簿外に支払つている」と主張するので案ずるに、支払調書一綴(同号の一〇)、酒井映子の検察官に対する供述調書、昭和三六年度総勘定元帳(同号の二五)に被告人の第一四回公判における供述を総合すると、被告人は右松枝に対し、外注工賃一万五〇〇円(四月分)を昭和三六年中に簿外に支払つたことが認められるので、同額を昭和三六年度の事業所得計算上必要経費に算入すべきものと認める。弁護人主張の三五万円のうち右認定額を超える部分についてはこれを認めるにたりる証拠はない。

(七)  弁護人は「被告人の弟西野秀雄は、被告人方の従業員であるが被告人の事業が不振であつたため右西野に対し昭和二八年から昭和三四年ごろまでの間、他の従業員並みに賃金を支払うことができず、事業資金に余裕ができたときに不足分を支払うという約束で交通費程度の金額しか賃金を支払つていなかつたので、右西野が家屋を新築するに際し、昭和三六年中に右未払賃金分として一九四万円を支払つたから、同額を雇人費として同年度の事業所得計算上必要経費に算入すべきである」と主張するので案ずるに、証人西野秀雄および被告人は、当公判廷においていずれも弁護人の右主張に副う供述をしているが、証人佐賀田栄二の当公判廷における供述、昭和三五年分給料領収書綴六冊(同号の一三乃至一八)の記載、昭和三六年分給料領収書綴一冊(同号の一一)の記載に照したやすく信用できないし、他に右事実を認めるにたりる証拠はないから、弁護人の右主張は採用しない。

(八)  弁護人は「昭和三六年度総勘定元帳(同号の二五)に、昭和三六年九月に平面研磨盤を取得し、同年一二月二九日にこれを不二越鋼材工業株式会社に売却した旨の記載があるが、売却に関する右記帳は誤りで、実際は、同会社は昭和三七年一月末に右平面研磨盤の検収を行い、同年二月二八日にその代金支払のために同日振出の額面二一二万二、〇〇〇円の約束手形一通を被告人に交付したのであるから、右平面研磨盤の所有権が同会社に移転したのは昭和三七年に入つてからである。したがつて、右平面研磨盤の売却代金は昭和三七年度の譲渡収入に属し、検察官がこれを昭和三六年度の譲渡収入に計上したのは誤りである。また右平面研磨盤の昭和三六年九月から同年一二月までの減価償却費は、同年分の事業所得計算上必要経費に算入すべきである」と主張するので、まず譲渡所得の点につき案ずるに、大蔵事務官作成の有馬義雄に対する質問てん末書、証人佐賀田栄二の当公判廷における供述を綜合すると、同会社は、昭和三六年一二月八日に右平面研磨盤を代金二一二万二、〇〇〇円で被告人から買い受ける契約を締結し、同日検収手続を了したことが認められるから、その所有権は同日同会社に移転したものと認められる。証人中浜伝治の当公判廷における供述および被告人の第一四回における供述中右認定に反する部分は信用できない。したがつて右平面研磨盤の売却代金は検察官主張のとおり昭和三六年度の譲渡収入に計上すべきものと認める。次に右平面研磨盤の減価償却費の点について案ずるに、昭和三六年度総勘定元帳(同号の二五)によると、被告人が右平面研磨盤を取得したのは昭和三六年九月七日でありこれを譲渡したのは右認定のように同年一二月八日であるが、年の中途において新たに事業の用に供された固定資産がその年の中途において事業の用に供されなくなつた場合でも、昭和四〇年大蔵省令第一一号による改正前の所得税法施行規則二条の趣旨に則り、その事業の用に供された期間の減価償却費を必要経費に算入すべきものと解する(なお昭和四〇年政令第九六号所得税法施行令一三二条一項二号イ参照)から、右平面研磨盤について、取得価格一八一万五〇〇〇円に対する昭和三六年九月分から同年一二月分までの四カ月分の減価償却費九万一、九六〇円を昭和三六年度の事業所得計算上必要経費に算入すべきものと認める。したがつて本件の昭和三六年度の譲渡所得の計算上、右平面研磨盤の譲渡原価は、一八一万五、〇〇〇円から右減価償却費九万一、九六〇円を控除した一七二万三、〇四〇円とすべきものと認める。

(九)  弁護人は「被告人は、昭和三六年一二月二九日、不二越貯蓄組合から、二一〇万円を弁済期日昭和三七年二月二八日、利息日歩三銭の約で借り受けたから、昭和三六年一二月二九日から同年同月三一日までの三日分の利息を昭和三六年度の事業所得計算上必要経費に算入すべきである」と主張するので案ずるに、株式会社不二越貯蓄組合作成の昭和四〇年一〇月一三日付融資証明書、証人中浜伝治の当公判廷における供述、被告人の第一四回公判における供述を総合すると、右主張事実を認めることができるので、右借入金二一〇万円に対する日歩三銭の割合による三日分の利息一、八九〇円を、昭和三六年度の事業所得計算上必要経費に算入すべきものと認める。

(十)  弁護人は「被告人は昭和三五年度および昭和三六年度に各二四万円を不二越鋼材工業株式会社の熱処理係員に支払つた」と主張するので案ずるに、証人川尻作次郎の当公判廷における供述、川尻作次郎に対する意見聴取書謄本、被告人の第一四回公判における供述を綜合すると、被告人は正規に同会社を経由することなく同会社の従業員に対し同会社の設備を使用して被告人のため熱処理加工をなすことを依頼し、その報酬として右従業員に対し昭和三五年度、昭和三六年度に各二四万円を支払つたことが認められるので、右両年度の事業所得計算上各二四万円を雇人費として必要経費にそれぞれ算入すべきものと認める。

(十一)  弁護人は「被告人は助田修に対し、被告人方の労務に従事した報酬として昭和三五年度および昭和三六年度に各三六万円を支払つた」と主張するので案ずるに、助田修に対する意見聴取書謄本、被告人の第一四公判における供述を綜合すると、当時不二越鋼材工業株式会社の社員であつた助田修は、臨時に被告人方の労務に従事し、その報酬として被告人から昭和三五年度および昭和三六年度に各二四万円の支払いをうけたものと認められるので、右両年度の事業所得計算上各二四万円を雇人費として必要経費にそれぞれ算入すべきものと認める。弁護人主張の右各金額のうち、右認定額を超える部分については、これに副う助田修に対する意見聴取書謄本の記載および被告人の第一回公判における供述はたやすく信用できないし、他にこれを認めるにたりる証拠はない。

(十二)  弁護人は「被告人は、不二越鋼材工業株式会社の従業員を、自己の業務のため臨時に雇用し、その報酬として昭和三五年度に六五万円、昭和三七年度に一八五万二、〇〇〇円を支払つた」と主張するので案ずるに、右主張に副う証人松田茂の当公判廷における供述、松山茂に対する意見聴取書謄本の記載および被告人の第一四回公判における供述はたやすく信用できないし、他に弁護人の右主張事実を認めるにたりる証拠はないから、弁護人の右主張は採用しない。

(法令の適用)

被告人の判示第一および第二の各所得税逋脱の所為は、いずれも昭和四〇年法律第三三号附則三五条により同法による改正前の所得税法第六九条一項に該当するから、所定刑中懲役刑と罰金刑とを併科することとし、右各罪は刑法四五条前段の併合罪の関係にあるから懲役刑については同法四七条本文、一〇条を適用し、犯情の重いと認める判示第二の罪の懲役刑に法定の加重をし、罰金刑については昭和三七年法律第四四号附則一五条により同法による改正前の所得税法七三条本文を適用し、その刑期および各金額の範囲内において被告人を懲役一〇月および判示第一の罪につき罰金三〇万円に、判示第二の罪につき罰金一二〇万円に処し、刑法一八条に従い、右各罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して被告人に負担させることとする。

以上の理由により、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栄枝清一郎 裁判官 古田時博 裁判官 谷鉄雄)

第一表

自昭和35年1月1日

至 同年12月31日

〈省略〉

第二表

自昭和36年1月1日

至 同年12月31日

〈省略〉

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