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山形地方裁判所 昭和62年(行ウ)1号 判決

山形県上山市金瓶字山の上二〇〇

原告

塩野久五郎

右訴訟代理人弁護士

浜田敏

右訴訟復代理人弁護士

熊谷誠

山形県大手町一の二三

被告

山形税務署長 内海玲二

右指定代理人

平尾雅世

阿部洋一

小野健司

栄孝也

斎藤正昭

久城博

菊地陽悟

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

被告が原告の昭和五六年ないし昭和五八年分の所得税について昭和五九年七月二六日付けでした更正及び各過少申告加算税の賦課決定をいずれも取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  本件処分の経緯等

原告は、競争馬の調教を業務とする白色申告者であるが、昭和五六年ないし昭和五八年分の各所得税について、原告のした各確定申告、これに対する被告の各更正及び各過少申告加算税の各賦課決定(以下、右各更正を「本件各更正」と、右各過少申告加算税の各賦課決定を「本件各決定」という。)、国税不服審判所長がした各審査裁決の経緯及び内容等は、別紙一記載のとおりである。

2  本件各更正及び本件各決定の違法事由

被告がした本件各更正は、いずれも原告の所得を過大に認定したものであるから違法であり、したがって、本件各更正を前提としてされた本件各決定も違法である。

よって、原告は被告に対し本件各更正及び本件決定の取消しを求める。

二  請求の原因に対する認否

請求の原因1の事実は認め、同2の主張は争う。

三  被告の主張の要旨

1  原告の昭和五六年ないし昭和五八年分の各年分の所得金額は、それぞれ一一一〇万三九〇七円、七二七万八七八一円、八三三万〇九一〇円であるから、いずれもその範囲内でされた本件各更正及びこれを前提とする本件各決定に違法はない。

2  原告の本件係争各年分の所得金額の収入及び経費の内訳は別紙二記載のとおりであり、その算出根拠は次のとおりである。

(一) 預託料

原告は、山形県調教師会に所属している競争馬の調教師であり、上山市長の許可を受け、上山競馬場内厩舎の馬房において、複数の馬主から依頼を受けて競争馬を預かり、調教し、その報酬として預託料を得ている。各係争年分の預託料収入は、各預託馬の預託期間に、各月別の預託料単価を乗じて算出したものである。

被告は、このうち預託馬の預託期間の算定について、上山市競馬事務所に備え付けてある各係争年分の入退厩台帳の入厩欄及び退厩欄に記載されている日付に基づいた。ところで、原告が各係争年分に割り当てられていた馬房数は、昭和五六年分が二七、昭和五七年分(同年一月のみ二七)及び昭和五八年分が二五である。そうすると、右の入退厩台帳によると、原告が預託を受けている競争馬数が、原告に対し各係争年分に割り当てられていた馬房数を超えることになってしまうため、被告は、原告に割り当てられていた馬房数を超えないように、入退厩台帳に記載された入厩日及び退厩日を合理的に修正して、預託期間を算定した。

また、被告は、預託料の単価の算定について、調教師が各馬主に対して毎月一回発行する各精算書に記載されている預託料の金額に基づき、合理的な金額を算定した。ただし、一部の預託馬については、精算書に記載されている預託料のとおり算定した。

(二) 進上金

進上金は、馬主が調教師に対し、調教師、騎手及び厩務員に対する謝礼金として一括して支払うものであるが、その金額は、預託馬の年間収得本賞金の二〇パーセントに相当する額とすることが慣行になっている。この進上金については、二〇パーセントのうち、調教師が一〇パーセント、騎手が五パーセント、厩務員が五パーセントをそれぞれ得ることになっている。

被告は、原告の昭和五六年分の進上金収入について、昭和五六年度競馬成績書の調教師本賞金収得額調書に基づく原告の昭和五六年分の本賞金収得額に対し、一〇パーセントを乗じて算定した。

原告の昭和五七年分及び昭和五八年分の進上金収入は、確定申告額である。

(三) 厩務員給料

厩務員給料とは、調教師が、預託馬の世話をさせることなどを目的として、業務に関し雇用した厩務員に対して支払う給料である。

被告は、原告の昭和五八年分の厩務員給料について、原告作成の厩務員給料の明細書に基づき算定した。ただし、右の明細書によると、厩務員の岡崎常弘に対して、一か月一三万円に勤務月数九か月を乗じた一一七万円の給料を支払った旨記載されているが、同人は、遅くとも昭和五八年六月二五日までに原告の厩舎から退職しているので、同人に対する同年七月から同年九月までの給料支払額分三九万円(一か月一三万円に三か月を乗じた額)を含めることはできない。したがって、同年分の厩務員給料は、右の明細書の額一六七一万円から右三九万円を差し引いた一六三二万円である。

原告の昭和五六年分及び昭和五七年分の厩務員給料は、確定申告額である。

(四) 馬糧代

馬糧代とは、預託馬に食べさせる飼料代金のことである。

原告の各係争年分の馬糧代は、原告の仕入れ先である株式会社新潟飼料備付けの売上計算書、得意先元帳、請求書、また、牧草の仕入れ先である泊義一が作成した領収書等に基づき算定した。

(五) その他の項目

原告の各係争年分のその他の項目は、原告の確定申告額である。

3  原告の所得金額

原告の各係争年分の所得金額は、それぞれ収入金額から必要経費を控除した額であり、別紙二記載の事業所得欄記載のとおりである。

四  被告の主張に対する認否及び原告の反論

1  被告の主張に対する認否

被告の主張1及び3は争う。同2は、原告の各係争年分の預託料収入及びわら代、昭和五八年分の厩務員給料については否認し、その余は認める。

2  原告の反論の要旨

(一) 原告の各係争年分の事業所得は、次のとおりである。

昭和五六年分

収入 三七三八万八八八六円

経費 三七九五万五四一四円

所得 -五六万六五二八円

昭和五七年分

収入 三九二六万九六九〇円

経費 四〇八二万〇四〇九円

所得 -一五五万〇七一九円

昭和五八年分

収入 三八八一万五五〇七円

経費 三九六七万五四九七円

所得 -八五万九九九〇円

(二) 原告の各係争年分の預託料収入について

原告の各係争年分の預託料収入は、別紙三記載のとおりである。

被告が算定の根拠としている入退厩台帳に記載されている入退厩日は、競争馬が厩舎に実際に入った日や退去した日とは異なる。また、被告は、入退厩台帳の日付を合理的に修正した旨主張するが、右の修正は、合理的な理由がないとともに、修正した幅が大きく、到底信頼できるものではない。

また、原告が割り当てられた馬房数は、被告の主張とは異なり、各係争年分とも二五である。

さらに、被告は、預託料の単価について、各馬主から提出された精算書に記載された預託料に基づき合理的に算定したものを本件の預託料の単価とした旨主張するが、馬主は、預託料を被告に回答しているのであるから、右の算定は理由がない。なお、預託料の単価は、調教師会と山形県馬主会との間で協定された次の金額を基準とすべきである。

昭和五六年分

一月、二月及び一二月 九万〇〇〇〇円

三月から一一月まで 一一万〇〇〇〇円

昭和五七年分

(預託料が一頭から三頭までの場合)

一月、二月及び一二月 一〇万〇〇〇〇円

三月から一一月まで 一二万五〇〇〇円

(預託馬が四頭の場合)

一月、二月及び一二月 九万〇〇〇〇円

三月から一一月まで 一一万五〇〇〇円

(預託馬が五頭以上の場合)

一月、二月及び一二月 八万〇〇〇〇円

三月から一一月まで 一〇万五〇〇〇円

昭和五八年分

(預託料が一頭から三頭までの場合)

一月、二月及び一二月 一一万五〇〇〇円

三月から一一月まで 一二万五〇〇〇円

(預託馬が四頭の場合)

一月、二月及び一二月 一〇万五〇〇〇円

三月から一一月まで 一一万五〇〇〇円

(預託馬が五頭以上の場合)

一月、二月及び一二月 九万五〇〇〇円

三月から一一月まで 一〇万五〇〇〇円

(三) 原告の各係争年分のわら代について

わら代については、山形県調教師会と山形県馬主会との間で、調教師は馬主に対し、昭和五六年には一頭一か月一万三〇〇〇円、昭和五七年及び昭和五八年には一頭一か月一万五〇〇〇円をそれぞれ請求することができる旨の協定がされており、右の金額が必要経費に含まれるべきである。

したがって、原告の各係争年分のわら代は、別紙三記載の競争馬の預託期間に、一か月につき右の各金額を乗じた額となり、昭和五六年分は三一九万八〇〇〇円、昭和五七年分は三六六万円、昭和五八年分は三五一万円である。

なお、仮に被告主張の預託期間に基づいて算定すると、右期間に前記協定の各金額を乗じると、原告の各係争年分のわら代は、昭和五六年分が四〇四万七五三三円、昭和五七年分が四四一万四五〇〇円、昭和五八年分が四六〇万六五〇〇円である。

(四) 昭和五八年分の厩務員給料について

昭和五八年分の厩務員給料については、岡崎は、同年一月から五月まで及び九月から一二月まで原告の厩務員として勤務し、原告は、岡崎に対し右期間に一か月一三万円を乗じた額を給料として支払っていたのであるから、当該給料分は、必要経費に含まれるべきである。ところが、被告は、右給料を加算していない。

五  原告の反論に対する認否及び被告の反論の要旨

1  原告の反論に対する認否

(一) 原告の反論(一)は否認する。

(二) 同(二)は否認する。

(三) 同(三)は否認する。

2  被告の反論の要旨

(一) 原告の各係争年分の預託料収入について

入退厩台帳の入退厩日は、競争馬が厩舎に実際に入った日や退去した日を記載している。

また、被告は、預託料の単価について、馬主が提出した精算書と異なる算定をしているが、その理由は、一部の精算書が虚偽の内容を記載したものである疑いがあるからであり、そのため、被告は、当時の一般的かつ合理的な預託料の単価を算定した。

(二) 原告の各係争年分のわら代について

調教師と山形県馬主会との間で協定されたわら代は、わら代を算定するにあたっての一応の目安にすぎず、実際のわら代は、調教師と馬主との間の合意に基づいて定められた。しかも、原告が主張する各係争年分のわら代は、原告の確定申告額の約二倍であるが、自己に有利なはずの必要経費額を実際の金額より低額に申告することは考えられないのであり、この点からも、原告のわら代は、原告の各係争年分の確定申告額のとおり算定するのが相当である。

(三) 昭和五八年分の厩務員給料について

岡崎が原告の厩務員であった期間は、昭和五八年一月から遅くとも同年六月二四日までである。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  次に、被告は、被告の主張の要旨記載のとおり本件各更正及び本件各決定は適法である旨主張するので、以下検討する。

1  被告の主張の要旨1ないし3については、原告の各係争年分の預託料収入、わら代、昭和五八年分の厩務員給料を除いた、原告の各係争年分の収入金額及び必要経費は当事者間に争いがない。

そこで、原告の各係争年分の預託料収入、わら代、昭和五八年分の厩務員給料について、以下検討する。

2  原告の各係争年分の預託料収入について

(一)  原告の各係争年分の預託料収入は、後掲証拠により別紙四記載の預託料の合計欄記載のとおりと認められるが、以下詳述する。

(二)  まず、原告が預託を受けている競争馬の各係争年分の預託期間について検討する。

乙第八号証、第九号証の一ないし四、第一〇号証、第二五号証、第二九号証、第三四号証、第三六号証によれば、上山市競馬事務所は、競争馬の内厩舎における在厩状況を管理するため、各調教師ごとに、入退厩台帳を作成していること、上山市競馬場内厩舎に関する条例施行規則(昭和五一年七月一二日規則二〇号)等に基づき、各調教師は、競争馬を入厩させるにあたり、競争馬入厩申請書を上山市長に提出しなければならず、その提出を受けた後同市長は、競争馬を検疫厩舎に収容して伝染性貧血検査をし、その検査に合格した場合、競争馬入厩承認通知書を各調教師に交付し、これらの手続を経た後に競争馬は内厩舎に入厩される取扱とされていること、前記入退厩台帳の入厩欄には、伝染性貧血検査に合格した競争馬の採血日が記載されていること、前記条例施行規則等に基づき、各調教師は、上山市長に対し、競争馬を退厩させるときは、在厩馬退厩届を提出することとされているほか、昭和五七年以降は、内厩舎出入口を管理している警備員が内厩舎からの競争馬の退厩を確認して退厩馬一覧表を作成する取扱いとされていること、前記入退厩台帳の退厩欄には、昭和五六年以前は、各調教師から提出される在厩馬退厩届の退厩年月日が記載され、昭和五七年以降は、前記退厩馬一覧表の退厩年月日が記載されていること、調教師は、上山市競馬事務所に対し、毎月末の時点における在厩馬数を、内厩舎団地在厩馬申請書に記載して提出しなければならないこと、上山市競馬事務所は、右申請書により、記載漏れが見つかった場合には、調教師に確認し、補正することとされていることが認められ、これに、入退厩台帳の記載の態様及び内容等を併せて考慮すると、一応、前記入退厩台帳には各競争馬が実際に厩舎に入退した年月日が記載されているものと認めることが相当であり、したがって、基本的には入退厩台帳の記載によって、競争馬の預託期間を認定することが相当である。そうすると、各競争馬の預託期間は、別紙四記載の預託期間記載のとおりであることが認められる。

ところで、甲第三号証の一、二、第五号証、乙第九号証の二ないし四、第二七号証、第二九号証、第三六、第三七号証によると、調教師に対する馬房の割当てについては、前記条例施行規則及び上山市地方競馬内厩舎馬房割当要綱に基づいて割り当てられることになっていること、原告が各係争年分につき割り当てられた馬房数については、昭和五六年分が二七(内訳は、通常の馬房が二五、休養馬房が二である。)、昭和五七年分のうち一月が二七(内訳は、前記同様である。)、同年二月から同年一二月までが二五(内訳は、通常の馬房が二五である。)、昭和五八年分が二五(内訳は、通常の馬房が二五である。)と認められる。

この点について、原告は、原告が割り当てられた昭和五六年分の馬房数も二五である旨主張するとともに同旨の供述をし、証人鏡紀一郎及び佐藤喜治も同旨の証言をし、一応、甲第三号証の一に右主張に沿う記載がある。しかしながら、甲第三号証の一、乙第九号証の二、証人鏡紀一郎の証言によれば、原告が当時馬房を有していた上山競馬場内厩舎には、通常の馬房のほか、休養のための休養馬房が全部で五馬房あったことが認められるとともに、甲第三号証の一は果たして昭和五六年分の馬房数を記載したものかどうかは必ずしも明らかでないが、同号証には原告が通常の馬房二五のほか休養馬房一が割り当てられていた旨記載されていること、また、乙第九号証の二には、原告が昭和五六年度の馬房の割当てとして、通常の馬房二五のほかに休養馬房二が割り当てられていたことを明確に示す記載があることが認められ、そうすると、昭和五六年の馬房数が二五であった旨の原告の供述及び証人鏡紀一郎及び同佐藤喜治の証言は、通常の馬房の馬房数をのみ供述したものと認めるのが相当である。そうすると、前掲証拠は、原告に割り当てられた各係争年分の馬房数が前記記載のとおりであるとの認定を覆すに足りるものではない。

ところで、預託期間と割当て馬房数を右認定のとおりとすると、入退厩台帳に記載された預託期間のうち一部の期間について、原告が預託を受けていた競争馬の合計数が、原告に対し割り当てられた馬房数を上回る場合が生じる。原告は、この点を根拠として、入退厩台帳の記載内容が不正確である旨主張する。すなわち、原告は、入退厩台帳の預託期間が正確に記載されておらず、その内容を信頼することはできない旨主張し、同旨の供述をする。確かに、前記認定のとおり、競争馬の入退厩の手続は、法令で定められていたほか、所定の運用がされていたのであるが、証人鏡紀一郎及び佐藤喜治の各証言によると、実際には、法令で定められた手続に従って競争馬の入退厩がされていなかったこともあったと認めざるを得ない。しかしながら、証人鏡紀一郎の証言によれば、入退厩台帳の入厩日及び退厩日の記載は、調教師の申告、警備保障会社のガードマンの報告、厩務員の報告等、適宜かつまちまちの方法で行われていたため、実際の入退厩の日付が同台帳にすべて正確に記載されているわけではなく、競争馬が実際に入退した日と入退厩台帳の入退厩日欄の記載とで多少の食い違いがあることも予想されることが認められ、右の食い違いが生じた場合、原告が預託を受けていた競争馬の合計が原告が割り当てられていた馬房数を超えないように、入退厩台帳に記載された入退厩日欄を合理的に修正することも、他にこれに代わる正確な資料がない場合においては、当然許されるものと解するのが相当である。したがって、預託期間の算定にあたっては、入退厩台帳によると、原告が預託を受けていた競争馬の合計数が、原告に対し割り当てられていた馬房数を上回る場合には、退厩馬年月日を入厩馬年月日の前日と修正することが、合理的かつ相当なものといえる。

ちなみに、原告は、預託を受けていた競争馬の入退厩の日付を記載したノートを所持していたが、税務署職員から処分をしてもよいといわれたので廃棄した旨主張し、同旨の供述をする。しかしながら、右のノートは、税務署に対する原告の主張を立証するためのきわめて重要な書類であり、税務署職員の調査を受けている最中に、同職員の指示でそれを処分してしまうことは通常考えられず、右の供述は到底採用できない。また、原告は、実際に預託を受けている数以上の数の預託馬を内厩舎団地在厩馬申請書に記載して提出していた旨主張して、同旨の供述をするが、右事実を認めるに足りる証拠はない。また、証人佐藤喜治は、馬房が常に満杯ではないこと、調教師と馬主との間の預託契約は預託馬が伝染性貧血検査に合格し内厩舎に入厩した後に締結されること等の証言をするが、右証言内容は他の証拠に裏付けられた具体的なものではなく、前記認定を覆すものではない。

また、馬主が仙台国税不服審判所に対し回答した「競争馬預託料の支払状況について」と題する書面(乙第一四号証の一ないし一三)に記載された預託期間と、入退厩台帳の預託期間は必ずしも一致しない。しかしながら、右の回答書の記載は大まかなものであり、その記載内容の根拠も明確ではないから、入退厩台帳の預託期間が右回答書の記載と一致しないからといって、入退厩台帳記載の預託期間が信頼できないものということはできない。

以上によれば、原告が預託を受けていた競争馬の預託期間は、入退厩台帳に記載された預託期間に合理的な修正を加えたうえで、別紙四記載の預託期間記載のとおり認めることが相当というべきである。

(三)  次に、預託料について検討する。

乙第二号証の三、第一一号証、第一四号証の一及び四、第一五号証の一ないし三、第一六号証、証人佐藤喜治の証言によれば、次の事実が認められる。

(1) 山形県調教師会と山形県馬主会との間では、毎年預託料について協定され、各係争年分の預託料については次のとおり定められていた。

昭和五六年分

一月、二月及び一二月 九万〇〇〇〇円

三月から一一月まで 一一万〇〇〇〇円

昭和五七年分

(預託料が一頭から三頭までの場合)

一月、二月及び一二月 一〇万〇〇〇〇円

三月から一一月まで 一二万五〇〇〇円

(預託馬が四頭の場合)

一月、二月及び一二月 九万〇〇〇〇円

三月から一一月まで 一一万五〇〇〇円

(預託馬が五頭以上の場合)

一月、二月及び一二月 八万〇〇〇〇円

三月から一一月まで 一〇万五〇〇〇円

昭和五八年分

(預託料が一頭から三頭までの場合)

一月、二月及び一二月 一一万五〇〇〇円

三月から一一月まで 一二万五〇〇〇円

(預託馬が四頭の場合)

一月、二月及び一二月 一〇万五〇〇〇円

三月から一一月まで 一一万五〇〇〇円

(預託馬が五頭以上の場合)

一月、二月及び一二月 九万五〇〇〇円

三月から一一月まで 一〇万五〇〇〇円

(2) ただし、前記協定で定められた預託料は一応の目安にすぎず、実際の預託料は右の協定金額に拘束されずに、調教師と馬主の間の話合いで定められた。

そして、調教師と馬主が競争馬の預託契約を締結する際に使用する定型の競争馬預託契約書には、預託料の記載はされず、同契約書八条によると、調教師は、預託馬一頭ごとの経費について明細書を作成し、毎月末日までに馬主に提出することと定められている。そこで、調教師は、各馬主に対し、毎月一回精算書を発行し、預託料その他の経費についての精算をしている。

(3) 原告が預託を受けた競争馬のうち、馬名チョウカイレディ(馬主新田嘉一)、馬名チャンピオンリンド(馬主佐々木己代)、馬名センゴクエース(馬主本郷重雄)の一か月の各預託料をまとめると次のとおりである。

昭和五六年一月及び二月 九万五〇〇〇円

同年三月 一一万〇〇〇〇円

同年四月ないし一一月 一二万〇〇〇〇円

同年一二月 一〇万〇〇〇〇円

昭和五七年一月及び二月 一〇万〇〇〇〇円

同年三月ないし六月 一二万三〇〇〇円

同年七月 一二万三〇〇〇円

同年八月ないし一一月 一二万五〇〇〇円

同年一二月 一〇万五〇〇〇円

昭和五八年一月及び二月 一〇万五〇〇〇円

同年三月ないし七月 一二万五〇〇〇円

(4) 原告の昭和五八年分の確定申告のうち、月別預託料単価は、一月、二月及び一二月は一〇万五〇〇〇円、三月ないし一一月は一二万五〇〇〇円である。

以上のとおり認められる。

右の各事実によると、各係争年分の預託料の単価は、右(3)記載の預託馬については、右(3)記載のとおりの預託料を、すなわち、右預託馬について発行された精算書(乙第一四号証の一、同号証の四、第一六号証)に記載されている金額を、また、それ以外の預託馬については、基本的には右(3)記載の預託料に基づき、かつ原告の確定申告をも考慮して、別紙五記載のうち1一か月の預託料単価記載のとおり認めることが相当である。

また、預託期間が一か月に満たない部分の預託馬の預託料については、乙第一五号証の一ないし三によると、競争馬預託契約書第七条には、一か月を三〇日として日割り計算によるものとすると規定されていることが認められ、そうすると、前記認定の一か月の預託料の単価を三〇で除した額を、一日の預託料と認めることが相当であり、別紙五記載のうち2日割り分の預託料単価記載のとおりである。

なお、預託料の算定にあたり、被告は、原告に有利な算定方法を主張するので、これに従い、預託馬の預託期間が一か月未満のときは、当該預託馬の預託料は算定せず、また、日割り計算をするときは、万未満は切り捨てるとともに、預託期間の最終日は預託期間に算入しない。

ところで、預託料は、調教師や競争馬ごとに異なる可能性がないわけでないが、しかし、本件では個々の競争馬の預託料を算定するに足りる証拠はないばかりか、弁論の全趣旨によると、仙台国税不服審判所は原告に競争馬を預託している馬主に対し預託料の支払状況について照会したものの、一部の馬主から回答があったにすぎず、しかもその内容は精算書が添付されていない大まかなものであることが認められ、これらの事情によると、個々の競争馬の預託料を認定することはできず、各係争年分の合理的な預託料を認定するほかないのであり、右の認定事実は、乙第一四号証の一ないし一三の馬主の回答書に記載された預託料と一致する点も多く、合理的なものというべきである(なお、乙第一四号証の一ないし一三の預託料の記載は、預託期間と同様に大まかなものであり、これ自体から預託料を認定することは相当でない。また、右各号証によると、馬主が、原告に対し、所定の預託料を支払っていない旨の回答があるが、右回答については、他にこれを認めるに足りる証拠はなく、右事実を認定することはできない。)。

これに対し、原告は、預託料は山形県馬主会との間で協定されている旨主張し、同旨の供述をするが、前記のとおり、調教師会と馬主会との間の預託料の協定は一応の目安にすぎず、右の供述は、前記認定を覆すものではない。また、乙第一八号証、第一九号証(馬主が原告に対して交付した精算書)によると、前記認定事実と異なる預託料が記載されているが、右の精算書の記載内容は、他の精算書、特に乙第一七号証の九枚目及び一〇枚目の精算書と比べて、非常に大まかなものであり、その記載内容を信頼することは到底できないというべきである。

したがって、以上のとおり、預託料について認定することができる。

(四)  以上により、原告が預託を受けている競争馬の預託期間及び預託料を認定できるが、そうすると、原告の各係争年分の預託料収入は別紙四記載の預託料収入のとおり認められる。したがって、預託料に関する原告の主張はいずれも理由がない。

3  原告の各係争年分のわら代について

乙第二号証の一ないし三によると、原告は昭和五六年分のわら代として一四一万四八六五円を、昭和五七年分のわら代として一六三万三七五〇円を、昭和五八年分のわら代として一九七万一三〇〇円をそれぞれ確定申告していることが認められる。そうすると、納税者が自己に有利な必要経費について、実際に支出した額よりも低い額を申告することは通常考えられず、他に原告が右の金額以上のわら代を支出したことを認めるに足りる証拠がない本件では、原告の各係争年分のわら代については、確定申告額のとおりのわら代を認めることが相当である。

これに対し、原告は、わら代については山形県調教師会と山形県馬主会との間で協定されている旨主張し、同旨の供述をするとともに、乙代一一号証も右主張に沿う。また、証人佐藤喜治は、実際のわら代は、右の協定金額よりも高額である旨証言する。この点について検討すると、乙第一一号証によると、調教師会と馬主会との間でわら代を協定した事実が認められるが、他方、実際のわら代は、調教師と購入先との話合いで決められる事実も認められ、証人佐藤喜治の証言も、この点を否定するものではないから、そうすると、前掲証拠は、前記認定の妨げとなるものではない。

したがって、わら代に関する原告の主張は理由がない。

4  原告の昭和五八年分の厩務員給料について

乙第一七号証、第二〇、第二一号証、第三三号証、第三八号証の一、二、第四一号証、第四二号証、証人安田一の証言によると、調教師の厩務員として勤務するためには、上山市きゅう務員設置認定要綱(昭和五二年三月一日制定)に基づき上山市長の認定を受けなければならないこと、岡崎常弘は、昭和五八年四月一日右認定を受けたが、同年一〇月二三日右認定を取り消されていること、上山市から厩務員に対し、開催ごとに開催手当が支給されることになっていること、岡崎は、同年六月一五日開催手当を受領しているが、同月二六日からの開催手当分は受領していないこと、岡崎は原告から、給料として一か月一三万円を受け取っていたことが認められ、これらの事実によると、岡崎は、原告の厩務員として、一か月の給料を一三万円と定めて、昭和五八年一月から遅くとも同年六月二五日まで働いていた事実が認められる。

これに対し、原告は、岡崎は昭和五八年九月から同年一二月までの期間も働いていた旨主張し、同旨の供述をするとともに、証人岡崎常弘は同旨の証言をし、甲第一号証(領収書)も右主張に沿う。しかしながら、前掲証拠に照らすと、右の供述及び証言を採用することはできない。また、甲第一号証(領収書)については、原告は、後日本件紛争が生じてから右領収書を作成した旨供述しており、そうすると、右領収書に基づいて、原告主張の事実を直ちに認めることはできない。なお、甲第二号証(課税証明書)については、これから直ちに原告主張事実を認めることはできない。

したがって、厩務員給料に関する原告の主張は理由がない。

5  以上のとおり、いずれの点についても原告の主張は理由がなく、被告の主張のとおり、本件各更正は適法であり、したがって、本件各決定も適法であると認められる。

三  以上によれば、原告の本訴請求は、いずれも理由がないことからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本朝光 裁判官 杉本正樹 裁判官 斎藤清文)

別紙一 本件訴訟に至るまでの経緯

〈省略〉

別紙二 原告の収入及び経費の内訳

〈省略〉

別紙三 原告主張の原告の各係争年分の預託料収入

〈省略〉

別紙四 原告の預託料収入

〈省略〉

別紙五

〈省略〉

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