大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

岡山地方裁判所 昭和28年(行モ)1号 決定

申立人

多賀静而

被申立人

稲倉村長

主文

本件申立を却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

申立人は「被申立人が申立人に対して昭和二十八年三月十一日昭和二十三ないし二十五年度村民税等約五十万円の滞納税金徴収のため差押えた別紙目録記載の物件に対する滞納処分による公売を停止する」との裁判を求め、その理由とするところは「申立人は肩書地で疊表の製造販売および製材業を営んでいたものであるが被申立人は申立人に前示滞納税金があるとして昭和二十七年八月および同年十月の二回に亘り申立人所有の別紙目録記載の物件に対して差押をなし次いで昭和二十八年三月十一日付をもつて同月二十三日午後一時これを公売すべき旨公告した。

然れども申立人は昭和二十八年三月十七日附広島国税局長の証明書記載の如く、その昭和二十三、四年度所得金額は当初決定の約四割減、約二百七十万円と減額訂正される見込であり、従つて右訂正所得額に準じて村民税等も当然減額訂正さるべき筋合であるから申立人の前記村民税等の滞納部分は皆無となる見込なのである。

しかるに被申立人は右事情を知りながら村民税徴収のため既に四回に亘り申立人所有財産の公売処分を行い今回更に申立人所有の別紙目録記載物件をも近々に公売に附せんとしているのである。

不幸にして右公売が実施せられんか、その公売価格は時価の八分の一位であり、申立人はこれにより回復することのできない損害を蒙むるのみならず、その最後の財産を喪失し、信用名誉を失墜するは勿論、人間としての最低生活をすら営み得なくなる。

以上は金銭をもつて償うことのできない損害でありその損害を避けるため緊急の必要ある場合に該当するので申立人は前記滞納処分取消訴訟(昭和二十八年(行)第四号)を当庁に提出したから右本案判決が確定するまで本件滞納処分による公売の停止を求めるため本申立に及んだ」というにある。

そこで本件申立の当否を考えてみるに、申立人の主張と疏明の程度では未だ申立人が右滞納処分による公売によつて償うことのできない損害を蒙むるものとは考えられないので本件申立はこれを却下すべきものとし、民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 三関幸太郎 原田博司 中原恒雄)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com