大判例

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広島地方裁判所 昭和39年(行ウ)24号 判決

広島県豊田郡安芸津町大字三津四二四六番地の三二

原告

山本実こと 鄭東浩

右訴訟代理人弁護士

飯田信一

三原市宮沖町二四四番地

被告

三原税務署長

安原正

右指定代理人

鴨井孝之

吉川清人

浅田和男

吉富正輝

中本兼三

石田金之助

右当事者間の所得税更正決定取消請求事件について当裁判所ほ次のとおり判決する。

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用ほ原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は別紙請求の越旨記載のとおりの判決を求め、その請求の原因として次のとおり陳述した。

一、被告は原告の昭和三五年度及び同三六年度の所得につき右請求の趣旨記載の右課税処分をなしこれに対し原告は異議申立並びに審査請求をなしたが広島国税局長は昭和三九年四月二八日付で右審査請求を棄却する旨の裁決をなし、同年六月一三日原告は右裁決書の謄本を受取つた。右謄本の送達は郵便配達人の錯誤から原告の前住所で当時既に離婚していた妻何無運の居住している三原市宮沖町三九一の二に配達されたため、原告の受領が遅延したものである。当時原告の住所は三原市宮沖町四〇二番地の一であつたが、実際には豊田郡安芸津町に居た。

二、右課税処分は次の理由で違法である。すなわち、原告の営業は昭和三五年度は開業したばかりで収入少く欠損続きであつたし、その揚句同年未には営業を第三者に譲渡したもので、翌昭和三六年度には原告は全然営業をしていない。

よつてその取消を求めるため本訴に及んだ。

被告指定代理人は、本案前の申立として、主文同旨の判決を求め、その理由として次のとおり陳述した。

原告に関する昭和三五年分所得税の再更正処分、同三六年分所得税の更正処分についての審査請求に対する裁決は、いずれも裁決書の謄本が昭和三九年五月一四日原告の住所である三原市宮沖町四〇二番地の一宛てに発送し、翌一五日右住所に到達しているから、同日原告は右裁決を知つた筈であり、同日から三ケ月以上を経過して提起された本件訴は出訴期間を遵守しない不適法な訴である。

立証として、原告訴訟代理人は甲第一ないし第一三号証、第一四号証の一ないし一五、第一五号証の一ないし六、第一六号証の一、二、三、第一七号証、第一八号証の一、二、第一九、第二〇、第二一号証を提出し、証人何無蓮の尋問及び三原郵便局長に対する調査嘱託(第一回)を求め、乙号証全部の成立を認め、被告指定代理人は乙第一ないし第四号証、第五、第六号証の右一、二、三、第七ないし第一四号証、第一五証の一、二、三、第一六、第一七号を提出し、証人稲垣務の尋問を求め、甲号証はすべて知らないと述べた、当裁判所は職権で三原郵便局長に対する調査嘱託(第二回)をなした。

理由

本訴請求は要するに昭和三五年分所得税の再更正処分及び同三六年分所得税の更正処分の取消を求める趣旨と解されるので、まず本訴が出訴期間を経過して提起せられた不適法のものであるかどうかについて判断する。

原告の昭和三九年五月一五日当時における住所が三原市宮沖町四〇二番地の一であつたえとほ当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第一、第二、第三号証、第五、第六号証の各一、二と証人稲垣務の証言を総合すると、右各行政処分についての審査請求に対する広島国税局長の裁決はいずれも同年四月二八日付で審査請求人三原市宮沖町四〇二山本実こと鄭東浩としてなされ、右裁決書の謄本ほ同年五月一四日書留郵便に付して右審査請求人の住所宛てに発送され、翌一五日三原郵便局配達人が右住所にこれを配達し、「山本実」なる署名及び「山本」の押印ある配達証を受取つた事実が認められる。右認定にてい触する稲垣務の証言の一部は信用しがたく、三原郵便局長に対する各調査嘱託の結果ほ稲垣務の証言に照らすと必ずしも右認定に反するものとはいえない。その他右認定を左右するに足る証拠はない。

そして右認定事実によれば、右裁決書の謄本ほ原告か或いほ原告を代理する者の手に渡されたものと解されるから、特段の事情の認められない限り、原告はその頃右裁決があつたことを知つたものと推認するのが相当である。この点につき、原告ほ当時実際にほ豊田郡安芸津町に居た旨主張しているが、これを確認するに足る証拠がない。

してみると、記録上明白な本訴提起の日である同年九月四日にほ右裁決があつたことを知つた日から三箇月以上経過していたことになるから、本件訴ほ出訴期間を嘱守しない不適法のものとして却下を免れない。

よつて、民事訴訟法第八九条にしたがい、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 胡田勲 裁判官 永松昭次郎 裁判官 清水利亮)

請求の趣旨

被告が原告の昭和三五年度分所得税として昭和三八年四月一〇日所得金額一、二四四、一一二円、所得税額二五六、二三〇円、無申告加算税五一〇、〇〇円と更正決定し同年四月一七日所得金額二、四八六、九六二円、所得税額六七三、九一〇円、無申告加算税一三四、四〇〇円と再更正決定し、之に対する原告の異議申立により同年八月一〇日所得金額二、四四五、八七二円、所得税額六五九、五五〇円、無申告加算税一三一、六〇〇円と変更決定した課税処分並に被告が原告の昭和三六年度分所得税として昭和三八年四月一〇日所得金額一、四九二、一二〇円、所得税額三〇八、一三〇円重加算税一五四、〇〇〇円と決定し、同年四月二二日所得金額三三、〇四、四二六円、所得税額九七三、二六〇円、重加算税四八六、五〇〇円と更正決定し、原告の異議申立により同年八月一〇日所得金額三、〇五二、三二二円、所得税額八七二、四二〇円、重加算税額四三六、〇〇〇円と変更決定し、更に審査請求の結果所得税額七一七、四六〇円、重加算税額二五六、〇〇〇円と変更決定した課税処分は之を取消す。

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