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広島地方裁判所 昭和56年(行ウ)13号 判決

広島県呉市中央二丁目六番三〇号

原告

株式会社久保田組

右代表者代表取締役

久保田義勇

右訴訟代理人弁護士

原田香留夫

二國則昭

同市西二丁目一番二一号

被告

呉税務署長

今村浩哉

右指定代理人

宮越健次

古谷智春

寺越慎一

河村龍三

土井哲生

大土井秀樹

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五四年六月三〇日付けでした原告の昭和五一年四月一日から同五二年三月三一日までの事業年度(以下「五一事業年度」という。)の法人税の更正のうち、所得金額二四四万五八四五円を越える部分及び課税土地譲渡利益金額一六〇万円を越える部分並びに重加算税賦課決定を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、五一事業年度の所得について、別表一(課税経過表)の1、2のとおり確定申告及び修正申告をしたところ、被告は、昭和五四年六月三〇日同表の3のとおり右所得金額を八〇八万二一一五円及び課税土地譲渡利益金額を七一四万三〇〇〇円とする更正(以下「本件更正処分」という。)及び重加算税賦課決定(以下「本件賦課処分」という。)をした。

2  しかし、右は、五一事業年度分の所得金額及び課税土地譲渡利益金額の算定につき土地譲渡原価(取得価額)を五六三万六二七〇円過少に計上したもので、したがって、本件更正処分の所得金額のうち二四四万五八四五円を越える部分及び課税土地譲渡利益金額のうち一六〇万円を越える部分並びに本件賦課処分はいずれも違法である。

3  本件更正処分及び本件賦課処分に対する異議申立て及び審査請求の経過は、同表の4ないし7のとおりである。

二  請求原因に対する認否

請求原因1及び3の各事実は認め、同2は争う。

三  被告の主張

1  本件更正処分の適法性

(一) 原告は、昭和五一年四月二八日訴外山下哲男に対し広島県賀茂郡黒瀬町大字宗近柳国字下モ原一一八番一五原野四九六〇平方メートル(以下「本件土地」という。)を代金三四六〇万円で売り渡した。

(二) 原告は、五一事業年度の法人税の確定申告及び修正申告において、本件土地の譲渡原価として別表五のとおり三四六四万八八一六円を損金の額に算入した。そして、右各申告の際、原告は、右譲渡原価を構成する本件土地の取得価額を一三〇〇万円として損金に算入した。

(三) しかし、本件土地の取得価額は、次に述べるとおり土地購入代金五七五万円、仲介手数料二〇万円及び登記手続費用五七〇〇円の合計五九五万五七〇〇円である。

(1) 原告は、昭和四六年一二月ころ訴外西野木清(以下「訴外西野木」という。)から本件土地を代金五七五万円で買い受けた。

(2) 本件土地の仲介手数料は、二〇万円である。

(3) 原告が要した本件土地の右売買による登記手続費用(登録免許税を含む。)は、右売買が行われた昭和四六年一二月当時採用されていた司法書士報酬規定に基づいて計算すると、五七〇〇円である。

(四) 右取得価額のうち、本件土地の譲渡原価を構成する価額は、左記の理由により、四三六万三七三〇円である。

(1) 原告は、砂利販売業者であるところから、本件土地取得の主目的は砂利採取であり、砂利採取の跡地は埋め戻して売却又は工場等の用地として利用する計画を有していたところ、昭和四七年七月一一日付けで広島県知事から本件土地に係る砂利採取の許可(一万七三八八立方メートルの採取許可)を受けて採取した上、右砂利を販売している。

(2) 原告は、昭和四七年三月三一日現在及び同四八年三月三一日現在の各貸借対照表の土地勘定に本件土地の価額として四三六万三七三〇円を計上しているが、計上金額の内訳は、土地代金三六〇万円、造成費七〇万円及び抵当権設定費用六万三七三〇円である。

(3) 本件土地の購入資金五九五万五七〇〇円は、呉市信用組合(現在の呉中央信用金庫、以下「呉市信用組合」という。)からの借入金により支払われており、右購入資金源たる借入金は、原告の公表帳簿に計上されている。

(4) ところが、原告の昭和四九年三月三一日現在及び同五〇年三月三一日現在の各貸借対照表には、土地勘定が計上されておらず、本件土地の価額は零円となっている。このことから、原告は、本件土地勘定四三六万三七三〇円を損金処理したものと推認される。

(5) 原告は、昭和五〇年四月一日に次の修正仕訳を行って土地勘定を一三〇〇万円、つまり、本件土地の取得価額を一三〇〇万円とした。

(借方) 土地一三〇〇万円 (貸方) 売上四三六万三七三〇円

仮受金八六三万六二七〇円

しかしながら、右経理処理は、事実を仮装したものである。すなわち、原告が修正仕訳をした本件土地の取得価額一三〇〇万円のうち、別表五の番号3欄(借方)土地八六三万六二七〇円(貸方)仮受金八六三万六二七〇円は、原告が土地取得及び仮受の事実がないのに、仕訳伝票の操作によって架空に計上したものであり、右一三〇〇万円の金額は、原告がその一部を本件土地の取得代金の支払に充てるため呉市信用組合から借り入れた一三〇〇万円をそのまま利用して(借方)土地一三〇〇万円と修正仕訳したものにすぎないもので、本件土地の取得価額とは何ら関係のない仮装のものである。

また、右仮受金について、原告は、当初、原告代表者からの仮受金として貸借対照表に計上した旨主張していたのに、本件審査請求以降は、昭和四五年三月三一日現在の貸借対照表上に計上されていて、その後何らかの理由で抹消された訴外昭和機材株式会社(以下「訴外昭和機材」という。)からの仮受金九二七万七七五〇円の一部を復活計上したものであると主張を変更したが、右のような仮受金は存在しないし、仮に存在するとしても、本件土地の取得価額には何ら関係がない。

(6) 以上によれば、原告における本件土地の取得価額に係る会計処理は、会計理論からして当然に資産たる土地勘定と砂利販売の原価勘定に区分して処理されることになり、原告の実際の処理は、本件土地の取得価額五九五万五七〇〇円のうち、砂利販売の原価として損金処理したものと推認される二三五万五七〇〇円を控除した残額の三六〇万円を本件土地の底地評価額としたものと推認される。

(7) よって、本件土地の譲渡原価を構成する取得価額は、右三六〇万円と、原告が本件土地勘定に付加したところの造成費七〇万円及び抵当権設定費用六万三七三〇円を加算した四三六万三七三〇円である。

(五) そこで、被告は、原告の五一事業年度の所得金額を本件土地の譲渡原価過大計上額八六三万六二七〇円を含めて計算し、別表二のとおり八〇八万二一一五円と算定した。

(六) また、本件土地の譲渡については、租税特別措置法六三条の規定の適用があるところ、被告は、別表三及び四のとおり、原告が過大計上した本件土地の譲渡原価八六三万六二七〇円を否認し、被告の認定した本件土地の譲渡原価に基づき、同条の規定を適用して課税土地譲渡利益金額を七一四万三〇〇〇円と算定した。

(七) したがって、被告が国税通則法二四条を適用してなした本件更正処分は、適法である。

2  本件賦課処分の適法性

(一) 原告は、その事実がないにもかかわらず、本件土地譲渡原価を過大に計上しており、その行為は、法人税の課税標準の計算の基礎となるべき事実を仮装又は隠ぺいした行為に該当する。原告は、これを基礎に所得金額及び土地譲渡利益金額を過少に申告したものである。

(二) したがって、被告が国税通則法六八条一項の規定に基づいてなした本件賦課処分は、適法である。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1の(一)及び(二)の各事実は認める。

2  同(三)の(2)の事実は認め、同(1)及び(3)の各事実は否認する。

3  同(四)の冒頭の事実は否認する。同(1)の事実及び同(2)のうち、昭和四七年三月三一日現在及び同四八年三月三一日現在の各貸借対照表の土地勘定に被告の主張する価額の記載があることは認めるが、その余は否認する。同(3)の事実は否認する。同(4)のうち、原告が土地勘定を損金処理したことは否認し、その余は認める。同(5)のうち、被告主張のとおり修正仕訳をしたことは認めるが、その余は否認する。同(6)、(7)は争う。

4  同(五)のうち、別表二の番号2、7、8欄は否認し、その余は認める。

5  同(六)のうち、別表三の番号2、6、7、8欄及び同四の番号2、5欄は否認し、その余は認める。

6  同(七)は争う。

7  同2の(一)の事実は否認し、同(二)は争う。

五  原告の反論

1  本件土地の取得経緯及び取得価額は、以下のとおりである。

(一) 原告は、昭和四六年一月二六日訴外西野木から本件土地分筆前の広島県賀茂郡黒瀬町大字宗近柳国字下モ原一一八番一の土地七反を一反当たり一〇〇万円、合計七〇〇万円で買い受ける旨の契約を締結した。

しかし、その後、山陽新幹線建設に伴う本件土地付近の用地買収価額が一反当たり二〇〇万円であったことから、この契約は解除された。

その後、同年夏ころ、再度両者間で代金を一二〇〇万円として売買契約を締結した。

ところが、右売買契約を知った地元の者十数名が本件土地の所有名義は訴外西野木になっているが、自分たちの土地もあると主張したことから、売買の対象を本件土地に限定し、代金九〇〇万円で原告が買い受けたものである。なお、右一連の交渉は、原告の再建委員会の委員長であった訴外大辻勇(以下「訴外大辻」という。)が担当した。

(二) 原告は、昭和四六年八月訴外西野木に売買契約の手附として三〇〇万円を支払い、同じころ訴外貫目一二三(以下「訴外貫目」という。)に仲介手数料二〇万円を支払い、同年一二月一日訴外西野木に残代金六〇〇万円及び登記手続費用一〇万円(抵当権設定費用六万三七三〇円を含む。)を支払った。したがって、本件土地の取得価額は、右合計額である九三〇万円であり、譲渡原価を構成する価額は、これに造成費七〇万円を加えた一〇〇〇万円である。

2  本件土地の取得価額計上の経緯は、次のとおりである。

(一) 昭和四七年三月三一日現在及び同四八年三月三一日現在の各貸借対照表に本件土地取得価額を四三六万三七三〇円と計上し、更に同四九年三月三一日現在及び同五〇年三月三一日現在の貸借対照表に土地勘定を零円としたのは、税理士の訴外平岡孝男が誤ってしたことであり、原告代表者は、関知していなかった。

(二) 原告代表者は、本件土地を買い受けるに当たり銀行から一三〇〇万円を借り入れた記憶があったため、本件土地の取得価額を一三〇〇万円とする修正仕訳を行ったものである。

(三) 仮受金八六三万六二七〇円は、昭和四四年四月一日から同四五年三月三一日までの事業年度の決算において計上していた訴外昭和機材からの仮受金九二七万七七五〇円が誤って抹消されていたので、これを一部復活計上したものであり、被告が右仮受金を架空なものと認定したのは不当である。

3  したがって、被告主張の本件土地の取得価額のうち譲渡原価を構成する、価額四三六万三七三〇円は、本件土地の取得価額九三〇万円に造成費七〇万円を加えた価額を五六三万六二七〇円だけ過少に計上していることになる。よって、本件更正処分における所得金額及び課税土地譲渡利益金額のうち右過少に計上した金額に相当する部分、つまり、右所得金額については二四四万五八四五円を越える部分及び右課税土地譲渡利益金額については一六〇万円を越える部分は、違法に所得金額及び譲渡利益金額を認定したものである。

六  原告の反論に対する認否

1  原告の反論1の(一)のうち、原告が昭和四六年一月二六日訴外西野木と原告主張の売買を締結したこと、その後、右契約が解除されたこと及び当初の約七反のうち本件土地四九六〇平方メートルのみを売買することになったことは認めるが、その余の事実は否認する。

2  同(二)のうち、仲介手数料二〇万円を支払ったことは認め、その余の事実は否認する。

3  同2の(一)の事実は否認する。

4  同(二)のうち、原告が本件土地の購入資金などとして、昭和四六年一〇月二七日呉市信用組合から一三〇〇万円を借り入れた事実は認めるが、その余は知らない。

5  同(三)の事実は否認する。仮に仮受金が存在するとしても、本件土地取得価額には全く関係がない。

6  同3は争う。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1及び3の各事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、本件更正処分の違法性の有無について、以下検討する。

1  被告の主張1の(一)及び(二)の各事実は、当事者間に争いがない。

2  そこで、本件土地の取得価額について判断する。

(一)  原告の反論1の(一)のとおり、昭和四六年一月二六日原告と訴外西野木との間で売買契約が締結されたこと、その後、右売買契約が解除され、本件土地のみについて売買契約が締結されたことは当事者間に争いがなく、右事実に成立に争いのない甲第一、第一〇号証、乙第一〇、第一号証、第一二号証の一、二、第一三、第一五号証、第一六号証の一ないし三、第一七、第一八号証、第二五号証の一ないし二四、第二七号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第一九ないし第二二号証、第二三号証の一、第二六号証の一ないし八、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第二四号証の三、証人西野木清、同中田俊二、同福本林太郎の各証言及び原告代表者本人尋問の結果(第一、二回)を総合すると、以下の事実が認められ、乙第一七号証、右原告代表者本人尋問の結果中、右認定に反する部分は、前掲他の証拠に照らし措信し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(1) 原告は、総合建設、砂・砂利の採取、販売等を営む会社であるが、砂利を採取した上、跡地を埋め戻して売却又は工場等の用地として利用する目的で、昭和四四年頃から訴外貫目の仲介により訴外西野木と同人所有の広島県賀茂郡黒瀬町大字宗近柳国字下モ原一一八番一原野七二四一平方メートル(以下「旧一一八番一の土地」という。)を購入する交渉をしていたところ、昭和四六年一月二六日右土地を七反二歩とし、代金を七〇〇万円とする売買契約が成立した。ところが、右契約は、原告が購入資金を調達できなかったため、解除された。原告は、同年五月一八日、右購入資金及びその他の運転資金を調達するため、呉市信用組合に一二五〇万円の借入れを申し込んだが、借入れ申込額が多額で、取引実績がなかったことから、右申込みを断わられた。

(2) 原告は、同年一〇月二六日再度呉市信用組合に対し右購入資金及び運転資金調達のため一三〇〇万円の借入れを申し込んだところ、右信用組合は、禀議の結果、原告の経営に関与していた訴外大辻所有の不動産及び原告の購入する土地を担保にし、右訴外人及び原告代表者を保証人として、右金員を貸し付ける旨を決定した。原告は、右申込みの際、借入金の使途として、旧一一八番一の土地の購入費を九〇〇万円、諸支払資金を四〇〇万円と計上していた。呉市信用組合は、同月二七日、右貸付けを実行したが、右貸付金のうち土地購入資金に充てられる予定の九〇〇万円については、購入土地に抵当権を設定するまで留保する趣旨で原告名義の通知預金に振り替え、残りを現金で交付したり、普通預金に振り替えるなどしたが、同年一一月一一日、原告代表者から近日中に右土地の売買が成立するとの連絡を受けたので、右通知預金を解約して別段預金に振り替えた。

(3) ところで、訴外西野木は、同年九月ころ訴外苅谷徳男(以下「訴外苅谷」という。)から旧一一八番一の土地の一部を買い受けたい旨の申込みがあったので、右土地のうち道路側から奥寄りの地形の悪い部分を約三反あるものとして、これを代金三〇〇万円で売り渡す旨の売買契約を締結した(なお、後日、右土地の測量をしたところ、二反程度しかなかったので、代金を二〇〇万円に減額した。)。そこで、訴外西野木は、同年一一月三〇日旧一一八番一の土地を本件土地及び広島県賀茂郡黒瀬町大字宗近柳国字下モ原一一八番一山林二二八〇平方メートルに分筆した。

(4) そのころ、訴外貫目の仲介により原告と訴外西野木との間で、本件土地を代金六〇〇万円で売買する旨の話がまとまり、同年一二月一日代金決済のため、原告代表者の訴外久保田義勇(以下「訴外久保田」という。)、訴外大辻、訴外西野木が広島県賀茂郡黒瀬町所在の司法書士事務所に参集し、原告より連絡を受けた呉市信用組合の職員が前記別段預金の中から六一〇万円を引き出して持参し、右事務所で訴外久保田に交付した。その場で、訴外久保田より本件土地売買の仲介手数料二五万円を訴外貫目に支払わなければならないとして、代金減額の申入れがあったため、結局、代金を五七五万円に減額することになり、原告に対する所有権移転登記及び原告の呉市信用組合に対する根抵当権設定登記に必要な手続を司法書士に委任した上、売買代金を訴外西野木に手渡した。同訴外人は、同日、右五七五万円全額を右司法書士事務所の近くにある黒瀬町農業協同組合本所において同組合板城支所の自己名義の普通貯金口座に入金するよう依頼して預け入れた(同日、右組合本所で代受けし、同月三日同支所で入金処理がなされた。)。そして、原告は、翌一二月二日本件土地につき前記売買による所有権移転登記を経由した。

(5) 原告は、呉市信用組合に対し購入予定土地の面積は七二四一平方メートルであり、その購入資金として九〇〇万円必要であるとして前示借入れを受けたところ、購入土地の面積が四九六〇平方メートルに減少したことから、右組合は、原告に対し必要購入資金は六八〇万円であるとして(面積比のみによる計算によれば、六一六万円余となるが、訴外苅谷に売却し、除外されることになった部分が地形的に悪い場所であった点を考慮し、必要購入資金を六八〇万円としたものである。)、不要資金の返還を求め、原告は、同年一二月一〇日一二〇万円を返還した。

右認定の事実によれば、本件土地の購入代金は、五七五万円であると認められる。

原告は、昭和四六年夏ころ訴外西野木から本件土地を代金九〇〇万円で買い受ける旨の売買契約を締結し、手附金三〇〇万円を支払い、同年一二月一日残代金六〇〇万円を支払った旨主張し、原告代表者は、本人尋問(第一、二回)において右主張に添う供述をしているが、以下の検討に照らし、右供述は、にわかに措信できない。

(1) 原告が五一事業年度の法人税の確定申告及び修正申告において、本件土地の取得価額を一三〇〇万円であるとして申告したことは当事者間に争いがなく、前掲乙第一七号証によると、原告代表者は、本件更正処分に係る法人税調査の際、係官に対し本件土地の代金は一三〇〇万円であり、右代金は、全額呉市信用組合からの借入金を充て、右以外に代金決済のための資金調達はしていない、右代金は、一回で全額を支払ったものであり、手附とか中間金の支払はなく、契約書も領収書も作成しなかった、と供述していたことが認められ、前記本人尋問の結果と著しく相違している。

(2) 原告代表者は、本人尋問(第一回)において、手附金の支払に関し、昭和四六年夏訴外大辻とともに本件土地に赴いた際、手附金三〇〇万円を支払った、右手附金は、訴外大辻からの借入金二〇〇万円や手持資金を充てた、手附金の領収書は訴外大辻が受け取った、原告代表者自身は、右領収書を見ていないが、呉市信用組合に借入れの申込みをした際、訴外大辻が右領収書を同組合音戸支店長の訴外中田俊二に見せたはずであり、右により手附金の授受が確認されたので、貸付の禀議が通ったと供述している。

しかしながら、右供述は、原告代表者の右(1)の供述と大きく異なり、一貫性がないばかりでなく、証人西野木清は、自分は、訴外大辻とは面識がなく、本件土地の売買については、仲介人の訴外貫目ないし原告代表者と交渉したと証言しているのであって、手附金の授受に訴外大辻が関与したというのは疑わしく、また、手附金三〇〇万円が授受され、領収書が作成されたのが事実とすれば、原告代表者がこれを見ていないというのは極めて不自然である。

また、証人中田俊二の証言によれば、同人は、本件土地の領収書を見ていないことが認められ、また、前掲乙第二一号証、証人福本林太郎の証言によれば、原告は、呉市信用組合に対し、旧一一八番一の土地の購入資金が九〇〇万円であるとして借入れの申込みをしているのみであって、手附金三〇〇万円が支払済みであることには全く言及していないことが認められる。

(3) 原告は、訴外大辻から手附金の一部二〇〇万円を借り受けた事実の証拠として、原告が昭和四六年七月三〇日訴外大辻から二〇〇万円を借り受けた旨の記載のある金銭消費貸借契約公正証書(甲第二号証)を提出している。ところで、証人田中俊二の証言及び原告代表者本人尋問の結果(第一回)によると、原告は、昭和四六年ころ訴外大辻より運転資金を借り入れていたが、右借入金の大部分は、同訴外人と内縁関係にあった訴外安斎シズコ(以下「訴外安斎」という。)が訴外大辻に融通していたが、訴外安斎は、訴外大辻が原告に貸与する金員を調達するため、昭和四六年一月ころ以降甥の訴外田中俊二が支店長をしていた呉市信用組合の音戸支店から定期貯金を担保に一回当たり約五〇万円宛数回にわたって借り入れ、これを訴外大辻に融通していたが、その金額が多額になったので、心配して訴外大辻に交渉した結果、同訴外人が右公正証書を示して、原告から右公正証書により担保を取っている旨説明したことが認められる。右によれば、訴外大辻が右公正証書記載の二〇〇万円を一度に貸与したものか否か疑わしく、手附金は、一度に調達するのが一般的であることからすると、右二〇〇万円が手附金の支払に充てられたものともにわかに認め難く、右甲第二号証も手附金支払の事実を証する資料とするに足りない。

(4) 前記のとおり昭和四六年一月の訴外西野木と原告間の旧一一八番一の土地(七反二歩)の売買契約の代金額が七〇〇万円(反当り約一〇〇万円)であり、同年一一月ころの訴外西野木と訴外苅谷間の、旧一一八番一の土地の一部で本件土地に隣接する道路より奥寄りの地形の悪い土地(三反)の売買契約の代金額が三〇〇万円(反当り一〇〇万円)である事実に照らすと、本件土地の代金額五七五万円(反当り約一一五万円)は、本件土地の当時の価額として相当なものであったものと認められる。

次に、証人阪田義登は、旧一一八番一の土地は、自分を含む十数人の共有であり、共有者の代表者として訴外西野木の名義で登記していたところ、訴外西野木と売買代金の配分について交渉した訴外胡田某から、訴外西野木は、本件土地を原告に八〇〇万円で売却し、その中から他の共有者に七〇〇万円を支払うことになった旨聞いており、昭和四七年一月二八日に右七〇〇万円について分配の協議をし、翌一月二九日に分配することになったが、自分は、右の経過を当時所持していた手帳(甲第八号証)に記載した旨証言し、証人阪田義登の証言により真正に成立したものと認められる甲第八号証によれば、右手帳に「一月二八日協議、二九日分配」と記載されていることが認められる。

この点につき、証人西野木清は、自分は、原告に本件土地を代金五七五万円で、訴外苅谷にその隣地を代金三〇〇万円でそれぞれ売却し、右代金の中から右各土地の入会権者に対し分配金七〇〇万円(訴外苅谷に対する代金の一部返還分一〇〇万円を含む。)を支払ったと証言している。成立に争いがない甲第一〇号証によると、訴外西野木は、昭和四八年一月一二日に訴外苅谷に売却土地につき所有権移転登記を経由していることが認められ、右事実に証人西野木清の証言を合わせ考えると、訴外苅谷は、そのころ代金三〇〇万円を完済したものと認められ、また、前掲乙第一六号証の二によると、昭和四八年一月二六日訴外西野木の呉市信用組合板城支所の普通貯金口座から七〇〇万円余が払い出されていることが認められ、これが右分配金の支払に充てられたものと推認される。また、前掲甲第八号証によれば、前記手帳は、昭和四八年版のものであることが認められる。

右によれば、前記証人阪田が証言する一月二八日協議、一月二九日分配というのは、昭和四七年ではなく、昭和四八年のことであると認められる。しかして、旧一一八番一の土地の売却代金のうち本件土地の代金のみ分配したというのは不自然であり、右分配金は、本件土地と訴外苅谷に売却した土地の両方の代金の分配金であると認められるのであって、前記証人阪田の証言は、事実に反し措信できない。

(二)  原告が本件土地の仲介手数料として二〇万円を支払ったことは、当事者間に争いがない。

(三)  登記手続費用について検討するに、原告が司法書士に委任して本件土地について前記売買による所有権移転登記を経由したことは前記認定のとおりであるから、原告は、右に要する所定の費用を支出したものと推認されるところ、成立に争いがない乙第八号証、登録免許税法及び当時の司法書士報酬規定によると、本件土地の所有権移転登記手続費用(登録免許税及び報酬)は、被告主張の五七〇〇円を越えないものと認められる。

原告は、呉市信用組合に対する抵当権設定登記費用を含めて登記手続費用として一〇万円支払った旨主張し、原告代表者は、本人尋問(第一回)において右主張に添う供述をしている。しかして、前掲第二四号証の三、第二五号証の一及び弁論の全趣旨によると、原告は、呉市信用組合からの前記借入金の中から同組合に対する抵当権の設定登記費用六万三七三〇円を支払ったことが認められるが、右は、本件土地の取得価額としてではなく、後記3記載のとおり取得価額以外の本件土地の譲渡原価の一部を構成する費用として計上するのが相当である。

右以外に登記手続費用の支出を裏付ける資料はなく、本件土地の取得価額を構成する登記手続費用は五七〇〇円を越えないものと認めるのが相当である。

3  次に、本件土地の譲渡原価を構成する取得価額について判断する。

(一)  被告の主張1の(四)の(1)の事実(原告が砂利販売業者であって、本件土地取得の主目的は、砂利の採取であり、砂利採取の跡地は埋め戻して売却する等の計画を有し、許可を受けて砂利採取をした上、これを販売したこと)は、当事者間に争いがない。

(二)  昭和四七年三月三一日現在及び同四八年三月三一日現在の原告の各貸借対照表の土地勘定に本件土地の価額として四三六万三七三〇円が計上されている事実は、当事者間に争いがなく、前掲乙第一一号証、成立に争いのない乙第一号証第七号証の一、原本の存在及び成立に争いのない乙第二八号証、証人平岡孝男の証言及び原告代表者本人尋問の結果(第一、二回)によると、税理士の訴外平岡孝男(以下「訴外平岡」という。)は、昭和四四年ころから原告の依頼で原告が税務署に提出する申告書や諸帳簿の作成を担当しており、前記各貸借対照表も同訴外人の作成に係るものであるところ、訴外平岡は、昭和五五年四月七日本件審査請求を審理した国税不服審判所に対し、昭和四七年三月三一日現在の貸借対照表の土地勘定に計上した金額は、原告代表者からの申出によるものであり、その内容は、土地代四三〇万円、登記料六万三七三〇円の合計四三六万三七三〇円であった旨上申していること、原告の総勘定元帳の土地勘定口座(乙第七号証の一)には、同口座の昭和五〇年四月一日欄に記載されている本件土地の金額四三六万三七三〇円の内訳が、昭和四七年三月期、買取り三六〇万円、造成費七〇万円、登記費用六万三七六〇円と具体的にメモされていることが認められる。

右認定の事実によれば、昭和四七年三月三一日現在及び昭和四八年三月三一日現在の各貸借対照表の土地勘定に本件土地の価額として計上された四三六万三七三〇円の内訳は、土地代金三六〇万円、造成費七〇万円及び抵当権設定登記費用六万三七三〇円であると認められる。

(三)  前記認定のとおり、本件土地の購入資金は、呉市信用組合からの借入金により賄われたものであるが、前掲乙第一号証、原本の存在と成立に争いのない乙第二三号証の二によると、右信用組合の原告に対する昭和四七年三月三一日現在の貸付残高は、前記昭和四六年一〇月二七日の貸付金一三〇〇万円を含め一七四二万円であり、原告の昭和四七年三月三一日現在の貸借対照表の借入金残高一七九九万円に係る借入金及び支払利子の内訳書(原告の昭和四六年四月一日から同四七年三月三一日までの事業年度の確定申告書に添付された勘定科目内訳明細書)に記載されている同信用組合に対する借入金期末残在高と一致することが認められるから、本件土地の購入資金に充てられた右借入金が原告の公表帳簿に計上されていることが明らかである。

(四)  前掲乙第一一号証、原告代表者本人尋問の結果(第一回)によると、原告代表者は、被告の税務調査の際、本件土地の取得価額は一三〇〇万円であり、そのうち底地が八〇〇万円から九〇〇万円、砂利が四〇〇万円から五〇〇万円と認識している旨供述していることが認められ、右本人尋問の結果によると、原告代表者は、本件土地の取得価額を砂利販売の原価と砂利採取後の底地評価額とに分け、前記昭和四七年三月三一日現在及び同四八年三月三一日現在の土地勘定に四三六万三七三〇円を計上するに当たり、本件土地の取得価額の一部を砂利販売の原価に算入したとの認識を有していたことが窺われる。

右によれば、原告代表者が認識していた本件土地の底地割合(砂利部分を含んだ土地全体に対する底地の割合)は、平均すると六五パーセント強であり、本件土地の代金額五七五万円にこれを乗ずると三七三万円強となり、前記(二)の土地代金三六〇万円にほぼ合致することが認められる。

(五)  原告の昭和四九年三月三一日現在及び同五〇年三月三一日現在の貸借対照表には土地勘定が計上されておらず、本件土地の価額が零円となっていること、ところが、原告は、被告の主張1の(四)の(5)のとおり昭和五〇年四月一日に修正仕訳を行い、土地勘定を一三〇〇万円としたことは当事者間に争いがない。

しかして、原告代表者本人尋問の結果(第一回)によると、右一三〇〇万円の金額は、原告代表者が訴外平岡に指示した金額であり、これが本件土地の真実の代金額でないことは明らかである。

また、前掲乙第一〇、第一一号証、成立に争いのない乙第七号証の二によると、右修正仕訳に係る仮受金八六三万六二七〇円は原告の総勘定元帳の仮受金勘定(乙第七号証の二)の昭和五〇年四月一日欄に社長仮受金として計上されており、原告代表者は、当初、右仮受金は、原告代表者からの借受金として貸借対照表に計上したと主張していたのに、本件審査請求以降は、昭和四五年三月三一日現在の貸借対照表に計上されていて、その後何らかの理由で抹消された訴外昭和機材からの仮受金九二七万七七五〇円の一部を復活計上したものであると主張を変更するに至ったことが認められるのであって、右仮受金に関する原告の主張には一貫性がない。成立に争いがない甲第一二号証によると、原告の昭和四四年四月一日から同四五年三月三一日までの事業年度の確定申告書に添付されている仮受金の内訳書に訴外昭和機材に対する仮受金の期末現在高が九二七万七七五〇円である旨記載されていることが認められ、原告は、右仮受金の存在を証するものとして、原告に対する債権を五〇〇万円に減額する旨の弁護士熊木正の原告宛の手紙(甲第一三号証)を提出しているが、右手紙が訴外昭和機材に対する仮受金に関するものであるか否か明らかでないばかりでなく、そもそも右仮受金の発生経過、使途等を明らかにする資料はなく、また、右手紙の日付は、昭和四六年三月五日であり、記載されている金額も五〇〇万円と原告主張の額を下回っており、同日以降昭和五〇年四月一日までの間における支払等の事実は、全く不明であるから、同日現在において右仮受金の存在を認めるに足りず、結局、同日現在の仮受金八六三万六二七〇円の存在は、極めて疑わしく、仮に、右仮受金が存在していたとしても、本件土地の取得価額には直接関係ないものと認められる。

右(一)ないし(五)を総合考慮すると、原告の本件土地の取得価額に係る経理処理は、会計理論上、資産たる土地勘定と砂利販売の原価勘定に区分処理されるものであって、原告は、前記認定の本件土地の取得価額五九五万五七〇〇円のうち、三六〇円を本件土地の砂利採取後の底地評価額とし、残余の金額を砂利販売原価として損金処理し、実際上の経理処理をしたものと推認される。

したがって、本件土地の譲渡原価を構成する取得価額は、右五九五万五七〇〇円から原告自ら砂利販売原価として損金処理したものと推認される二三五万五七〇〇円を控除した三六〇万円であり、昭和五〇年四月一日現在本件土地の譲渡原価を構成する価額は、右三六〇万円と、原告が同日現在の本件土地勘定に計上している造成費七〇万円及び抵当権設定登記費用六万三七三〇円の合計四三六万三七三〇円と認められるのが相当である。

したがって、原告が同日修正仕訳をした本件土地の取得価額のうち、右四三六万三七三〇円を除いた(借方)土地八六三万六二七〇円、(貸方)仮受金八六三万六二七〇円は、原告が土地取得及び仮受の事実がないのに架空に計上したものと認めざるを得ない。

4  原告は、前記のとおり本件土地を昭和四六年一一月ころ買い受けた上、昭和五一年四月にこれを譲渡したのであるから右譲渡については、租税特別措置法六三条の適用があるところ、原告が昭和五一事業年度の法人税の修正申告において、同条による課税土地譲渡利益金額を零円として申告したことは当事者間に争いがない。しかして、原告が本件土地の譲渡原価について八六三万六二七〇円(別表五の番号3)を仮装し、過大に計上したものであることは前認定のとおりであるから、これを否認し、本件土地の譲渡による収益の額に対応する原価を計算すると、別表のとおり(同表の番号1、3、4欄は当事者間に争いがない。)、二五〇六万九九七五円となり、これに基づいて同条の規定を適用して課税土地譲渡利益金額を算定すると、別表のとおり(同表の番号1、3ないし5欄は当事者間に争いがない。)、七一四万三〇〇〇円となる。

次に、本件土地の譲渡原価のうち前記八六三万六二七〇円を否認し。原告の五一事業年度の所得金額を計算すると、別表二のとおり(同表の番号1、3ないし6欄は当事者間に争いがない。)、八〇八万二一一五円となる。

以上によれば、本件更正処分には、何ら違法はなく、適法なものと認められる。

三  次に、本件賦課処分の違法性の有無について判断する。

以上によると、原告は、その事実がないのに本件土地の譲渡原価を八六三万六二七〇円過大に計上して、五一事業年度の法人税の確定申告及び修正申告をしたものと認められる。右は、原告が、法人税の課税標準の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したものと認められるから、右は、国税通則法六八条一項の規定に該当する。

したがって、同条に基づいてなされた本件賦課処分には、何ら違法はなく、適法なものと認められる。

四  以上の説示に照せば、原告の本訴請求は、いずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高升五十雄 裁判官 重富朗 裁判官平弘行は、差支につき署名、捺印することができない。裁判長裁判官 高升五十雄)

別表一

課税経過表(自昭和五一年四月一日 至昭和五二年三月三一日 事業年度)

〈省略〉

(注) 法人税額三、八二一、三〇〇円は、別表二の8の二、三九二、八〇〇円と別表三の8の一、四二八、六〇〇円を加えて、控除所得税額一、五六〇円を差引いて一〇〇円未満を切捨て、それに還付所得税額一、五六〇円を加えて、一〇〇円未満を切捨てたものである。

別表二

更正処分による所得金額等(自昭和五一年四月一日 至昭和五二年三月三一日 事業年度)

〈省略〉

(△は、マイナスを示す。)

別表三

課税土地譲渡利益金額等(自昭和五一年四月一日 至昭和五二年三月三一日 事業年度)

〈省略〉

別表四

別表三の2の土地の譲渡による収益の額に対応する原価の額

〈省略〉

別表五

土地譲渡原価内訳表

〈省略〉

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