大判例

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広島簡易裁判所 昭和33年(ろ)490号 判決

被告人 大橋輝男

主文

被告人は、無罪。

理由

本件公訴事実は、「被告人は昭和三三年六月九日午後五時三〇分頃、広島県公安委員会が車馬の通行を禁止した広島市比治山本町広島県立盲学校裏門前附近道路において広四た第〇〇七六号小型貨物自動四輪車を西方に向けて運転通行したものである」というにある。

被告人が公訴事実記載の日時、場所において小型貨物自動四輪車を西方に向けて運転通行した事実は被告人の当公廷における供述及び証人河原康二の証言によりこれを認めることができる。被告人は当公廷において右広島県立盲学校裏門前附近道路(以下本件道路と略称する)が広島県公安委員会の指定した通行禁止区域であることは、当日たまたま通行禁止区域の両端の道路標識の立ててある所を通らず途中から右禁止区域に入つたため、道路標識に気付かず、知らなかつた旨弁解する。

そこで進んで被告人の本件犯意の有無について考察する。

検察官は本件道路が通行禁止道路であることの認識の欠如はいわゆる法令の不知とみるべきものであつて、被告人が当該道路を自動四輪車を運転通行するという事実を認識しさえすれば本件犯罪の成立に必要な犯意としては十分であり、通行禁止道路であることの認識の欠如は犯意を阻却するものではない旨主張するけれども、道路交通取締法第六条の規定に基ずいて公安委員会が道路の通行を禁止又は制限するには同法施行令第五条により必ず道路標識又は区画線をもつてしなければならないのであつて、本件のごとき道路交通取締法第六条第一項、第二九条第四号違反の罪において道路標識による通行禁止の事実は犯罪構成要件事実に属するものと解すべく、右事実の認識の欠如は犯意を阻却するものといわなければならない。(昭和三〇年四月一八日、東京高等裁判所第一刑事部、昭和二九年(う)第二、一四九号道路交通取締令違反被告事件判決参照)しかして本件において被告人が本件道路が道路標識によつて通行を禁止されている道路であることを認識していたことを推認するに足りる的確な証拠は何もないから、被告人には本件犯罪の成立に必要な犯意の存在を肯認することができない。従つて被告人の犯意の点についてその証明が十分でなく、結局被告事件について犯罪の証明がない場合に帰するから、刑事訴訟法第三三六条後段に従い被告人に対し無罪の言渡をすべきものである。

よつて主文の通り判決する。

(裁判官 久安弘一)

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