大判例

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広島高等裁判所 昭和25年(う)296号 判決

被告人

林茂

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人田中両吉の控訴趣意第一点について。

(イ)(ロ)しかし、刑事訴訟法第二百五十六条第六項の起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならないとの規定は、検察官の公訴提起の方式に関するものであり、同法第二百九十六条並びに刑事訴訟規則百九十八条の規定は、いわゆる証拠調請求の冐頭陳述に関するものであつて、いずれも刑事訴訟手続のうち公判手続の証拠調の段階以前の手続に関する規定であること明らかである。いま本件について見ると、本件は竊盗被告事件として徳山簡易裁判所に起訴せられ、公訴事実に対する審理がなされた上、検察官から訴因、罰条の変更請求即ち、竊盗をもつて訴因として起訴せられた公訴事実を、業務上横領と変更する旨の請求があつたのであるが、右は公訴事実の同一性を害しないから適法なものというべく、同裁判所またこの見解に従い同裁判所の事物の管轄に属しないものとして管轄地方裁判所としての山口地方裁判所徳山支部にこれを移送したものである。このような場合においては、事件は徳山簡易裁判所において審理され、移送決定のあつたその当時の状態において、山口地方裁判所徳山支部に繋属するに至つたものというべく、従つて徳山簡易裁判所における公判調書証拠書類等は、当然山口地方裁判所徳山支部に引継がれるものであつて、これらの書類等につき記録取寄の請求乃至決定を要するものではないと解する。

けだし、刑事訴訟法第十三条において、訴訟手続は管轄違の理由によつてはその効力を失わないと規定しているからである。されば竊盗の訴因を横領と変更したことを公訴事実の同一性を害するとなす所論も、徳山簡易裁判所における公判調書等の添附をもつて、裁判官に事件につき予断を生ぜしめるとなす所論も理由なきものといわなければならない。

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