大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

広島高等裁判所 昭和33年(う)283号 判決

控訴人 被告人 金本光男

弁護人 下向井貞一

検察官 伊都博 外一名

主文

原判決中被告人に関する部分を破棄する。

被告人を懲役三年に処する。

原審における未決勾留日数中百二十日を右刑期に算入する。

原審の訴訟費用中証人岩見千恵子・同矢迫陽子・同堀口勝正・同岡田三郎・同松田一男・同郷地静枝に各支給した分は被告人と原審相被告人四名との連帯負担とする。

理由

弁護人下向井貞一の控訴の趣意は記録編綴の控訴趣意書(二通)記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

所論は要するに、原判示第一(一)(二)の各事実につき事実誤認乃至法律の適用に誤がある旨主張するものである。そこで原判決が原判示第一(一)(二)の各事実を認定するに引用した各証拠を綜合して考察するに、原判示佐名木重夫・金本健吾・西下正司・奥田勉・池永二三男・尾崎利久・堀口勝正等が昭和三十二年十月二十六日午後七時頃呉市海岸通り七丁目バス停留所に予て知合いの○○○○○(当時十七年)及び△△△△(当時十五年)がいるのを見かけて同女等を強いて姦淫しようと共謀し、同日午後七時三十分過頃同女等を誘つて同市鍜冶屋町八十六番地金本健吾方に連込み、佐名木重夫、金本健吾の両名を除きその余の者等は一時同家隣の肩書被告人方に立寄つて待機し、最初に佐名木重夫において右金本健吾方奥の間で岩見千恵子の顔面を手拳で殴打し且つ突倒す等の暴行を加えてその反抗を抑圧した上強いて同女を姦淫し、また金本健吾において同家炊事場隣四畳間で△△△△を押倒して押えつける等の暴行を加えてその反抗を抑圧した上強いて同女を姦淫し終つたあと、被告人は被告人方に寄集まつている者等がこれに続いて順次右各室に赴き○○○○○・△△△△を強姦するものであることを知るに及び被告人においても亦その気になり、まだ被告人方に居残つて待機している堀口勝正等数名と意を通じて同女等を強姦しようと共謀し、堀口勝正等に続いて金本健吾方の前記各室に赴き前に強姦し終つた者等の行為により既に抵抗する気力を失い下半身裸体となつたまま仰向けに寝ている同女等の上に乗りかかつて順次姦淫の目的を遂げた事実、並びに以上の一連の強姦行為中のいずれかによつて○○○○○・△△△△がそれぞれ原判示の傷害を負うに至つた事実はこれを認め得るところであるが、原判決摘示のように被告人が上記一連の強姦について事前に原審相被告人等及び金本健吾・奥田勉・尾崎利久・堀口勝正等と共謀したとの点はこれを認めることができない。そして、このように先行者によつて既に開始された犯罪実行の中途からこれに介入した者の責任は、その介入後の行為についてのみ発生するものと解すべきであるから、本件においても被告人は前述の共謀関係成立後の犯行についてのみ責任を負い、それ以前の他の者の犯行については責任を負わないものといわなければならない。したがつて被告人に原判示の各致傷の責任を負わせるには、該各致傷の結果が上述被告人の共謀関係成立後の強姦行為によつて生じたものであることが立証されなければならない。しかるに、右各致傷の結果が本件一連の強姦行為中に生じたものであることは前段認定のとおりであるけれども、果してそのいずれの段階において生じたものであるかは証拠上全く不明である。それゆえ、被告人については強姦の範囲内においてのみ責任を問い得るに止り、原判示の各致傷の結果についてまで責任を問うことはできない。してみれば、被告人に原判示第一(一)(二)の各強姦致傷の罪責を認めた原判決は前提たる事実を誤認したか、あるいは共犯における共同責任についての法律の解釈適用を誤つたものというの外なく、この誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、刑事訴訟法第三百九十七条第一項・第三百八十二条・第三百八十条の破棄事由に該当するものと解される。論旨は理由がある。

よつて右各条項に則り原判決中被告人に関する部分を破棄し、同法第四百条但書に従い直ちに判決する。

当裁判所が認定した罪となるべき事実並びにこれに対する証拠・法律の適用は次のとおりである。

「罪となるべき事実」

被告人は、

第一、昭和三十二年十月二十六日午後七時三十分過頃、弟金本健吾とその友人である佐名木重夫・西下正司・奥田勉・池永二三男・尾崎利久・堀口勝正等が同人等の知合いである○○○○○(当時十七年)及び△△△△(当時十五年)を強いて姦淫しようと共謀し、呉市海岸通り七丁目バス停留所にいた同女等を誘つて同市鍜冶屋町八十六番地金本健吾方に連込み、同人及び佐名木重夫の両名を除きその余の者等は一時同家隣の肩書被告人方に立寄つて待機し、最初に佐名木重夫において右金本健吾方奥の間で○○○○○の顔面を手拳で殴打し且つ突倒す等の暴行を加えてその反抗を抑圧した上強いて同女を姦淫し、また金本健吾において同家炊事場隣四畳間で△△△△を押倒して押えつける等の暴行を加えてその反抗を抑圧した上強いて同女を姦淫し、次いで西下正司において右奥の間に赴き逃げようとする○○○○○を突倒してその反抗を抑圧した上強いて同女を姦淫し、佐名木重夫において更に右四畳間に赴き△△△△に対し同様の暴行を加えてその反抗を抑圧した上強いて同女を姦淫し終つた頃、被告人方に寄集まつている者等がこれに続いて順次前記各室に赴き○○○○○・△△△△を強姦するものであることを知るに及び被告人においても亦その気になり、まだ被告人方に居残つて待機している堀口勝正等数名と意を通じ同女等を強いて姦淫しようと共謀し、堀口勝正等に続いて金本健吾方の前記各室に赴き同所で前に強姦し終つた佐名木重夫・金本健吾・西下正司の前記行為により既に抵抗する気力を失い下半身裸体となつたまま仰向けに寝ている○○○○○・△△△△上に乗りかかつて順次姦淫の目的を遂げ、

第二、昭和三十一年八月八日頃呉港内に繋留中の米国貨物船パイオニア・ミユーズ号内で同船船長イー・ヴイ・ウイリアムズ保管のストレプトマイシン等の医薬品約二千三百本(価格合計約金十万五千五百円相当)を窃取し

たものである。

「証拠」〈省略〉

「法律の適用」

法律に照らすと、被告人の判示各所為中、第一の点はいずれも刑法第百七十八条・第百七十七条前段・第六十条に、第二の点は同法第二百三十五条に各該当するところ、以上の各罪は同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条本文・第十条に則り犯情最も重い判示第一の矢迫陽子に対する強姦罪の刑に同法第十四条の制限に従い法定の加重をした刑期範囲内において被告人を懲役三年に処し、なお原審における未決勾留日数の一部刑期算入につき同法第二十一条、原審における訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第百八十一条第一項本文・第百八十二条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 岡田建治 判事 赤木薫 判事 高橋正男)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

本サイトは報道(不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること)を事業としており,掲載された全ての情報は報道等に活用することを目的としています。

©daihanrei.com