大判例

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広島高等裁判所 昭和36年(ネ)37号 判決

控訴人 被告 株式会社広角鉄工所

訴訟代理人 行森孚

被控訴人 原告 中国舶用電機株式会社

訴訟代理人 由井健之助

主文

本件控訴を棄却する

控訴費用は控訴人の負担とする

事実

控訴人訴訟代理人は、原判決を取り消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする、との判決を求め、被控訴人訴訟代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張および証拠の提出、援用、認否は、控訴人において当審証人落合作一の証言を援用したほか原判決事実欄記載のとおりであるからここにこれを引用する。

理由

被控訴人がその主張のような約束手形四通を現に所持していることは当事者間に争がない。

被控訴人は、右約束手形四通はいずれも控訴会社代表取締役広角喜三太が控訴会社のためこれを振り出したものであると主張し、控訴人はこれを否認するのでこの点について判断するに、甲第一ないし第四号証によれば本件各手形の振出人欄には控訴会社の商号および代表取締役広角喜三太のゴム印およびその名下の職印の各印影が存し、これらが控訴会社および右広角喜三太において使用する印によつて顕出されたものであることは当事者間に争がなく、原審における被控訴会社代表者本人尋問の結果中には被控訴人の右主張に副う部分が存するが、右供述部分は後記認定事実に対比しにわかに措信することができず、又甲第一ないし第四号証における前記各印影の成立の経緯も後記認定のとおりであるからこれらはいずれも被控訴人の主張を肯認する資料となしがたく、他に被控訴人の右主張を認むべき証拠はない。かえつて、成立に争ない乙第一、二号証、同第三号証の一ないし六、同第四号証の一ないし四〇、同第五、六号証(各一部)、甲第九号証、原本の存在および成立に争ない甲第一〇号証を綜合すれば、訴外奥村堅志郎は、控訴会社の会計および経理事務を担当しかつ前記広角喜三太とならんで控訴会社の代表取締役に在任していたものであるが、右喜三太からその指示の下に同人名義で控訴会社のため手形を作成振り出すことを委されていたところ、昭和三三年四月から同年六月頃にかけ自己の遊興費等私用に充てる金員捻出のため前記喜三太に無断で自己の保管していた控訴会社および代表取締役広角喜三太のゴム印、職印等を利用して控訴会社代表取締役広角喜三太名義の約束手形総額約二〇〇万円を作成し、尾道市内各所でこれが割引換金を受けていたもので、本件約束手形もその一部にほかならぬことを認め得べく、従つて被控訴人の前記主張は失当であるといわなければならない。

しかしながら、本件各約束手形の振出当時において、前記奥村堅志郎が控訴会社の代表取締役に在任していたものであることは前記認定のとおりであるところ、およそ株式会社に数人の代表取締役ある場合その一人の代表取締役が他の代表取締役の委任ないし同意なくその代表取締役の記名捺印をなして会社の手形を振り出したときは、右冒用者に会社を代表する権限がある以上、代理人が自己の署名又は記名捺印を手形面上にあらわさず直接本人の記名捺印を代行して手形振出をなした場合における本人に準じ、会社に手形振出の責任あるものと解するを相当とするから、訴外奥村のなした本件各約束手形の振出は控訴会社の手形振出として有効に成立するものといわなければならない。従つて、控訴人は被控訴人に対し本件各手形に基き振出人としての責を負うべきである。

次に、被控訴人が本件各約束手形をその主張のように訴外株式会社西日本相互銀行又は株式会社住友銀行に取立委任し、各受任銀行において各満期に支払場所において支払を受けるため呈示したところいずれもその支払を拒絶されたことは弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一ないし第四号証の各裏面および付箋の記載によりこれを認めるに充分である。

しからば、控訴人は被控訴人に対し本件各約束手形金合計四八万円およびこれに対する各手形の満期の翌日以降完済にいたるまで手形法所定年六分の割合による利息を支払う義務がある。

そこで、進んで本件各約束手形の振出が原因を欠くものである旨の控訴人の抗弁について判断するに、この点についての当裁判所の判断は控訴人の右抗弁を排斥し手形振出の原因関係のあつたことを認定するものであつて、その詳細は被控訴人の主張を支持する証拠として当審証人落合作一の証言を付加するほか原判決理由中該当部分(原判決五枚目裏六行目から六枚目表六行目まで)と同一であるからこれをここに引用する。

以上説示のとおり原判決は結局相当であり、本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき同法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河相格治 裁判官 胡田勲 裁判官 宮本聖司)

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