大判例

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広島高等裁判所 昭和53年(行コ)12号 判決

控訴人(原告) 下土井澄雄

被控訴人(被告) 広島市議会

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。本件を広島地方裁判所に差し戻す。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実の主張、証拠の関係は、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

本件訴の適否について検討する。

一、まず、被控訴人には当事者能力がないから本件訴は不適法である旨の被控訴人の主張は、当裁判所も、原判決理由一説示と同一の理由により失当と判断するので、右説示をここに引用する。

また、地方議会が地方自治法一〇〇条所定の調査権の行使としてなした関係人に対する出頭請求は、出頭請求を受けた関係人に対し、指定した日時、場所に証人として出頭すべき義務を課するものであるから、出頭請求をもつて、地方議会の内部的自律権の行使ないし調査権発動の過程における内部的意思決定にすぎないものとして、これを理由に抗告訴訟の対象となり得ないとする被控訴人の主張は採用し得ない。

二、そこで、控訴人の本件各出頭請求の無効確認を訴求する行政事件訴訟法三六条所定の原告適格の有無について検討する。

まず、本件各出頭請求において出頭すべく指定された日時は、いずれも経過したことは明らかであるところ、出頭請求を受けた関係人が正当の理由がないのに、議会に出頭しなかつたときは六箇月以下の禁錮または五〇〇〇円以下の罰金に処せられるものとされ、地方議会は、出頭請求を受けた関係人が右不出頭の罪を犯したものと認めるときは、告発しなければならないものとされているのであるから、控訴人において出頭請求にも拘らず、正当の理由がないのに出頭しなかつたときは、前記の刑事罰を科せられる虞れがあるものである。しかし、行政処分により課せられた義務の懈怠ないし不遵守に対し、たんに罰則の適用あることをもつて、前記行政事件訴訟法の規定にいう行政処分に続く処分により損害を受けるおそれあるものとすることはできない。右罰則の適用については、当該刑事裁判手続においてその当否を争い得ること勿論であり、控訴人は右手続において本件出頭請求の無効を主張すべきである。そして、他に控訴人に本件各出頭請求の無効確認を訴求する法律上の利益あるものとは認め難いから、本件は結局前記規定に定める要件を欠くものというほかはない。

そうすると、控訴人に本件各出頭請求の無効確認を訴求する原告適格はないものというべく、したがつて、本件訴は不適法として却下すべく、これと同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却し、控訴費用につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 胡田勲 北村恬夫 高升五十雄)

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