大判例

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広島高等裁判所岡山支部 昭和62年(う)54号 判決

主文

本件控訴は棄却する。

理由

本件控訴の趣意は被告人作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。

論旨は、要するに、本件は毎時二〇キロメートル速度超過の違反で本来反則行為に該当するのに、原判決は、被告人が過去一年以内に運転免許停止の行政処分を受けたことがあるから非反則者であるとして、刑事手続により罰金刑に処したが、右行政処分は被告人が人身事故を起したことを理由とするものであつたところ、その後業務上過失傷害事件として岡山簡易裁判所で審理の結果無罪の判断がされ、右裁判は原判決後の昭和六二年三月一七日確定した。したがつて、右行政処分は当然無効となつたから、右行政処分が有効であることを前提として被告人を罰金刑に処した原判決には訴訟手続に法令適用の違背があり、これが判決に影響を及ぼすことが明らかであるというものであると解される。

しかしながら、原判決も指摘するように、所論の行政処分は、交通違反を行つた者に対し一定の期間運転を禁じることによつてその自覚、反省を促し、遵法精神の涵養と運転技術の向上の機会を与えて事故防止を図ることを目的とするものであつて、刑罰の実現である刑事裁判とは趣旨、目的を異にするのみならず、違反事実の認定手続及びその資料にも裁判手続のような厳格さを要求されているわけではない。したがつて、刑事裁判手続によつて右違反事実が認定されなかつた(所論は、別件裁判によつて無罪が確定したというが、記録上、右事件は被告人の脇見運転による追突事故であつたが、被害者が受傷した事実について犯罪の証明がないとされ、安全運転義務違反として罰金刑に処せられたものであることがうかがわれる。)としても、右行政処分が当然に無効となるわけではなく、当該行政処分に不服がある場合には、原判決がいうように行政事件訴訟法にもとづく抗告訴訟によつてその取消しを受けない限り、なお有効に存続するわけである。

本件において、所論の行政処分の存在はいわゆる訴訟条件となるものであると解せられるが、本件のように行政処分の存在が訴訟条件となる場合には、刑事裁判手続においてはその存否のみが審理の対象となるのであつて、処分の有効性や妥当性は前記行政訴訟に属することがらである。そして、原裁判所はその証拠として交通事件原票を取調べており、右記載によれば本件行政処分の存在は明らかであつて、被告人は行政手続上その取消しを受けていないのであるから、これを前提として本件公訴提起を適法とした原判決の訴訟手続には所論の違法はなく、論旨は理由がない。

よつて、刑事訴訟法三九六条に則り本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。

第1部

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