大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

徳島地方裁判所 平成6年(ワ)415号 判決

主文

一  被告は、原告に対し、金一五六万八五五六円及びこれに対する平成五年四月一〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  本判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金七二四万二八三六円及びこれに対する平成五年四月一〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、交差点での出合頭の衝突事故により負傷した原告が、民法七〇九条及び自動車損害賠償保障法三条に基づいて損害賠償を求めた事案である。

一  本件事故【甲一及び乙一の1、2、5、6により認定した事実及び争いがない事実】

1  日時 平成五年四月一〇日午前二時一五分ころ

2  場所 徳島市八万町川南五三番地の一先路上

3  原告車両 普通乗用自動車(徳五六に六七七六)

右運転者 近藤敦夫

右同乗者 原告(助手席に乗車)

4  被告車両 普通乗用自動車(徳島五七に八五五〇)

右運転者・所有者 被告

5  態様 前記場所の交差点において、赤色で点滅する対面信号に従つて一時停止した後発進し、時速約一五キロメートルで走行していた原告車両の右前部と、交差道路を右方から時速約六〇キロメートルで進行して来た被告車両の左前部とが衝突した。

二  傷害の内容等

1  原告は、本件事故により、頸部捻挫、腰部捻挫、右前胸部挫傷、左大腿打撲、右膝打撲、両側下腿打撲の傷害を負つた。

【甲二の1、乙一の3、7、二、原告本人尋問の結果により認定。右認定に反する甲二の2、甲三の1、2の記載は、甲二の1、乙一の3、7、二に照らして、採用しない。】

2  原告は、本件交通事故後、次のとおりの入通院をした。

【甲二、三の各1、2により認定。但し、右入通院の必要性には争いがある。】

(一) 平成五年四月一四日から同年七月二日まで、庄野外科胃腸科(以下「庄野外科」という。)に入院(八〇日間)

(二) 平成五年四月一一日から同月一三日まで、庄野外科に通院治療

平成五年七月三日から同年一一月三〇日まで、庄野外科に通院治療

(実治療日数合計九七日)

三  争点

1  入院の必要性(本件事故との因果関係)の有無

〔被告の主張〕

原告は、本件事故前から、庄野外科に入通院していたものであり、本件事故による受傷について、入院する必要はなかつた。

2  損害額

〔原告の主張〕

(一) 休業損害 四三五万七二八〇円

(二) 入院雑費 八万円

(三) 入通院慰謝料 一八〇万円

(四) 車両修理費 三五万五五五六円【但し、この点は争いがない。】

(五) 弁護士費用 六五万円

3  過失相殺

〔被告の主張〕

原告車両の進行方向前方の信号は赤色点滅であつたのに対し、被告車両の進行方向前方の信号は黄色点滅であつた。

したがつて、過失割合は、原告車両七、被告車両三である。

そして、原告車両を運転していたのは、原告の息子であるから、好意同乗による減額ないし損害の公平な分担の見地から、七〇パーセントの過失相殺をするのが相当である。

第三当裁判所の判断

一  入院の必要性について

1  後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実を認めることができる。

(一) 原告は、平成四年六月一三日ころから、胸痛、肋間神経痛、肝障害、食道炎等の治療を庄野外科で継続的に受けていた。【乙二、証人庄野】

(二) 原告は、平成四年六月一三日から平成六年一〇月三一日までの間、右傷病の療養のため労務に服することができないとして、次のとおり、健康保険法に基づく傷病手当を受給していた。【調査嘱託】

(1) 平成四年六月一三日から同年一〇月二五日まで、胸痛、肋間神経痛等の傷病名で、合計一五八万一四六八円

(2) 平成四年一〇月二六日から平成五年一一月二五日まで、肝障害、食道炎、胃潰瘍等の傷病名で、合計四六七万三五九二円

(3) 平成五年一一月二六日から平成六年二月二五日まで、右足間接脱臼骨折、肝障害、糖尿により、合計一〇八万五七八四円

(4) 平成六年一〇月六日から同月三一日まで、右足間接脱臼骨折、間接術後の病名で、合計三〇万六八五二円

(三) 原告は、本件事故後、腰部、頸部、足等各部の痛みや自宅療養の不安を庄野外科の医師に訴え、右医師にも、原告の不安感、いらいら感が強いことや、身体各部の痛みが持続していることから、入院治療が相当と判断した結果、原告は、平成五年四月一四日から庄野外科に入院した。【乙二、証人庄野、原告本人】

(四) 原告は、平成五年七月二日まで庄野外科に入院したが、その間、同年五月一日から四日まで三泊(土曜日から火曜日まで)、同月一四日から一六日まで二泊(金曜日から日曜日まで)、同月二一日から二三日まで二泊(同)、同月二八日から三〇日まで二泊(同)、同年六月四日から六日まで二泊(同)、同月一一日から一三日まで二泊(同)、同月一八日から二〇日まで二泊(同)、同月二五日から二七日まで二泊(同)と、同年五月以降ほぼ毎週末に外泊(合計一七泊)した。【乙二】

(五) 庄野外科の医師は、治療を続けながら、原告の気持ちを徐々に退院に向かわせ、原告は、平成五年七月二日に退院した。【証人庄野】

2  右認定事実によれば、原告は、担当医師の判断により、本件事故により受けた傷害の治療のために、平成五年四月一四日から同年七月二日まで入院したことを認めることができる。

なるほど、原告には、前記1(四)認定のとおり外泊が多く、また、顕著な他覚的所見を認めるに足りる証拠はない。しかしながら、前記1(四)認定のとおり、外泊は週末に行われているものであり、また、原告の受傷の部位、内容に照らすと、他覚的所見が乏しくてもやむを得ないと考えられるから、原告について、本件事故による傷害の治療に、入院の必要性がなかつたとまではいうことができない。

二  損害額について

1  休業損害について〔認定額〇〕

本件事故による傷害の治療期間中に、原告が稼働して得たであろう収入を認めるに足りる証拠はない。

調査嘱託の結果によれば、かえつて、前記一1(二)認定のとおり、本件事故の約一〇か月前である平成四年六月一三日以降、本件事故の約一年六か月後の平成六年一〇月末まで、稼働できないとして、傷病手当を受給していたことが認められる。

2  入院被雑費〔認定額六万三〇〇〇円〕

前記第二の二2(一)、同第三の一1(四)各認定のとおり、原告は、八〇日間入院したが、その間に合計一七泊の外泊をしている。また、原告は、外泊の際は、概ね夕刻に庄野外科を出て、午後から夜にかけて庄野外科に帰院している。【乙二】

右の事実と、入院雑費は入院中に通常必要となる日用品雑貨費、通信費、文化費等のために一日当たり一〇〇〇円を認めるのが相当であることを併せ考慮すると、入院雑費相当の損害額は、六万三〇〇〇円となる。

{一〇〇〇円×(八〇日-一七日)}

3  入通院慰謝料〔認定額一〇〇万円〕

本件事故の態様、原告の受傷程度、治療経過、その他本件に現れた一切の資料を考慮すると、本件事故により原告が受けた苦痛等に対する慰謝料は、一〇〇万円が相当である。

4  車両修理費〔三五万五五五六円。争いがない。〕

三  過失相殺について

原告は、近藤敦夫の運転する原告車両に同乗中、本件事故に遭つたものであるが、仮に近藤敦夫と被告との間で過失相殺が問題となるとしても、原告は、本件事故の発生について何らの過失も寄与もないから、過失相殺を適用又は類推適用することは相当でなく、被告に対して、その受けた損害全部の賠償を請求することができるというべきである。

四  弁護士費用〔認定額一五万円〕

本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害額は、一五万円と認めるのが相当である。

五  結論

以上の次第であるから、原告の本訴請求は一五六万八五五六円(六万三〇〇〇円+一〇〇万円+三五万五五五六円+一五万円)の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 髙橋文淸)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com