大判例

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徳島家庭裁判所 昭和61年(家)1050号 審判

申立人 後藤法子

主文

申立人の氏を「鄭」と変更することを許可する。

理由

(本件申立の事情)

申立人は、日本国籍を有する者であるが、昭和58年6月7日、カナダ国籍のテイ・ジュハ(Ju-Ha Teh)と婚姻し、長男文俊(昭和59年7月2日生、カナダ及び日本国籍)、長女梅淑(昭和61年4月8日生、カナダ及び日本国籍)をもうけて、ともにカナダ国の肩書住所地に居住している(なお、長男及び長女は、申立人の戸籍に同籍している。)。申立人はカナダにおいては、婚姻証明書には Noriko Goto と記載されているものの、必要に応じて、「Goto」「Teh」あるいは「Goto Teh」を使用しているが、夫は申立人や子供達には、自分と同じ氏である鄭(Teh)(夫は元中国系マレーシア人で、「鄭樹波」と称していた者で、カナダにおいても、日本人や中国人向けには「鄭樹波」の氏名を使用している。)を名乗らせたいとの強い希望を持っているので、申立人も夫と共通の氏を使用したいと考えて本件申立に及んだ。

なお、申立人の一家は、近い将来日本に帰住することを検討中であり、これからも日本国籍を捨てる予定はないので、氏は「テイ」ではなく、夫の先祖の氏であり、日本人の氏としてもより自然な「鄭」にしたい。

(当裁判所の判断)

申立人代理人提出の名資料及び同代理人の審問の結果によれば、前記「本件申立の事情」記載の事実は全てこれを認めることができる。

そこで、本件申立の当否を検討するに、まず、申立人の氏を中国系カナダ人の夫の称する氏に変更することについては、昭和59年法第45号により改正された戸籍法107条2項によれば、「外国人と婚姻した者がその氏を配偶者が称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から6か月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨届け出ることができる」ことになったこと(本件申立は、昭和59年法第45号附則11条に定められた期間(施行日である昭和60年1月1日から6月)を徒過しているが、同法107条2項の趣旨は十分考慮されるべきである。)及び前記認定の事情を勘案すれば、子の福祉にとつても何ら障害が認められない本件においては、外国人である配偶者の称している氏(本件の場合は、夫の氏「Teh」の日本語表記「テイ」となる。)に変更することについては「やむを得ない事由」を認めることは困難ではない。

しかし、申立人は、その氏を「テイ」ではなく「鄭」に変更したいというので、さらに検討するに、「鄭」はもとよりカナダにおける夫の公式の氏ではなく、同人の氏「Teh」の日本語表記ともいえないが、同人の先祖が中国あるいはマレーシアの中国人社会において代々使用してきた氏であると認められ、またカナダにおいて証券取引業を営んでいた夫は日本人や中国人向けにはその氏として漢字の「鄭」を使用しているものであって、申立人が日本人として称する氏としては、片仮名の「テイ」よりも「鄭」の方がより自然であると解されるから、同法107条1項に則り、本件申立のとおり申立人の氏を「後藤」から「鄭」に変更することを許可するのが相当である。

よって、主文のとおり審判する。

(家事審判官 虎井寧夫)

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