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新潟地方裁判所高田支部 昭和43年(ワ)46号 判決

主文

1. 原告の請求を棄却する。

2. 訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の求める裁判

一、請求の趣旨

1. 昭和四三年五月二四日被告会社の定時株主総会においてなされた次の決議(一)ないし(三)はこれを取消す。

(一)  直江津海陸運送株式会社定款の一部を次のとおり改正する。

第一〇条を第一一条とし以下順次一条づつ繰下げ第九条の次に次の一条を加える。

第一〇条 本会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を要する。

(二)  昭和四二年度営業報告書、貸借対照表、損益計算書ならびに利益金処分案を承認する。

(三)  監査役任期満了に付、二名選任、小出幸作、滝沢善勝の重任とする。

2. 訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告は主文同旨の判決を求めた。

第二、請求の原因並びに被告主張に対する反駁

一、被告は資本金七、五〇〇万円、発行済株式総数一五〇万株、一株の金額五〇円で、港湾運送事業及び通運事業を主たる目的とする株式会社であり、原告は被告会社の株式二万六、六七五株を有する株主であるが、昭和四三年五月二四日被告会社の定時株主総会が開催され、請求の趣旨記載の(一)ないし(三)の決議がなされた。

二、しかしながら、右総会の招集手続及び決議の方法には、次のような法令もしくは定款に違反し、又は著しく不公正な点があるので、前記決議は取消を免れない。

(一)  訴外丸山実は、被告会社の主たる創設者として、昭和一七年八月被告会社設立当時同社の取締役副社長であり、昭和二三年四月以降昭和四二年一二月二〇日死亡退職するまで代表取締役社長であつた。そして、右丸山実は都合により後記訴外人七名の名義を借用し、合計三万一、〇〇〇株の被告会社株式を所有していた。それは中村和子名義一万株、中村昭一名義九、〇〇〇株、中村徹立名義一、五〇〇株、中村拓立名義一、五〇〇株、山崎久子名義四、五〇〇株、山崎久和名義三、〇〇〇株、山崎純一名義一、五〇〇株計三万一、〇〇〇株であつて、右株式の取得代金は全額訴外丸山実が支出し、株券及び株主名簿登録印は同訴外人が保管していた。よつて、右株式は右丸山実の死亡により同人の相続人たる妻丸山信、長女中村和子、長男原告、次女山崎久子、三女野田利子、四男丸山節夫の共有となつたのである。しかるに、被告会社は右三万一、〇〇〇株が右相続人らに帰属することを知悉しながら、同人らの正当な議決権行使を妨害すると同時に、被告会社の意図にそう議決権の行使を確保することを企図し、右相続人らに対し前記総会の招集手続をなさず、かつ相続人らのうち中村和子、山崎久子両名に不当な圧迫を加えてその自由意志を拘束し、右相続人らが議決権を行使すべき者一名を定める協議をする機会を奪い、株主名簿閉鎖期間中、右総会開催前に、前記訴外人七名をして株主名簿登録住所の変更と株主名簿登録印の改印を届出させ、かつ本件定時株主総会における議決権について中村和子、中村徹立、中村拓立三名は野原正、中村昭一、山崎久子、山崎久和、山崎純一四名は石黒満雄に対する各委任状を取付け、これにより右総会において自己の意図どおりの議決権の行使を得、以てその目的を達した。以上のとおり右三万一、〇〇〇株につき、前記相続人らの議決権の行使が阻害され、前記訴外人らは株式の所有者でないのに(但し中村和子、山崎久子は相続人の一員であるが一五分の二の各持分を有するにすぎない。)議決権を行使した違法があり、右は被告会社の策動によつたのであるから、甚だしい不公正があるといわねばならない。なお、右三万一、〇〇〇株については、被告会社において亡丸山実の所有であることを知悉し、従来株主総会の通知は名義人らに対して行わず、議決権の行使及び配当金の受領は、亡丸山実が行つてきたものであつて、丸山実が死亡したからといつて、にわかに右取扱いを覆し、名義人を所有者として取扱うことは信義則上からいつても許されるべきでない、商法第二二四条の三の規定は、右の如き場合を予想したものではなく、株式が転々譲渡される性質を有することに鑑み、株主権を行使すべき株主を確定するため設けられた規定であつて、例えば名義書換請求書が偽造であることを会社が知悉している場合等にまで適用されるべきでないことは当然である。右三万一、〇〇〇株は亡丸山実の所有株として処理してきた取扱に従い同人の死亡により相続人の共有に属するものとして処理すべきであつた。また商法第二二四条第一項は真実の株主を前提とした規定であるのみならず、名義借株主に適用があるとしても、従来真実の株主の所有を会社に於て認め、専ら真実の株主をして株主権を行使せしめ、名義借株主に総会の通知をもなさなかつた本件の如き場合にまで適用さるべきではない。かかる場合、真実の株主に無断で名義借株主に総会の通知をなし、真実の株主に議決権行使の機会を失わせることは明らかに信義則に反し許されるべきでない。商法第二〇六条第一項は株式の譲渡の場合を予想した規定であつて、これを相続の場合に適用するに当つては相続の性質上自ら別個の考慮を必要とする。株主の死亡の事実及び相続人の氏名住所が明白な場合は、特段の事情のない限り、会社は株主名簿の書替ができていない場合でも、その相続人を株主と認めるべきである。然らざれば、総会の通知及び配当金の支払は死者に対してなすこととなり無意味であるからである。現に本件においても、被告会社は亡丸山実名義の株式一〇万三、七七三株については、丸山実相続人殿として本件総会の通知を発している。本件に関する限り商法第二〇六条第一項適用の余地はない。

(二)  訴外亡丸山実は前項記載の三万一、〇〇〇株の外にも、同人名義一〇万三、七七三株、訴外飯塚捨三郎名義一万六、〇〇〇株、訴外北川鉄馬名義一万五、〇〇〇株、訴外斉藤政也名義七、五〇〇株計一四万二、二七三株を所有し、右訴外人三名名義の株式は名義を借りたものにすぎないから、右株式全部もまた前記実の相続人らの共有に属する。しかるに、被告会社は右株式一四万二、二七三株についても議決権行使を妨害することを企図し、右相続人らに対し前記総会の招集手続をなさず、かつ右相続人らのうち、中村和子、山崎久子両名に不当な圧迫を加えてその自由意思を拘束し、他の共有者四名が右両名と議決権を行使すべき者一名を定める協議をする機会を奪い、前記総会における議決権行使を不能ならしめたもので違法である。

(三)  前記総会において、株主新潟県(株数三〇万株)は広川広勝に、株主直江津市(株数一五万株)は服部一二三に、株主日本通運株式会社(株数一万九、〇〇〇株)は野田繁正に委任状を交付し、右受任者三名は総会に出席し、それぞれ右株式について議決権を行使した。しかし、被告会社の定款第二一条(当時)には「株主又はその法定代理人は他の出席株主を代理人として其の議決権を行使する事が出来る。」と規定され、株主以外の者を受任者として議決権を行使することは出来ない。ところが、前記受任者三名は被告会社の株主ではないから、これらの者による前記計四六万九、〇〇〇株の議決権行使は、定款に違反している。右総会の議事録によれば、出席株主の所有株式数は委任状提出分を含めて一〇三万九、四六九株であるから、右四六万九、〇〇〇株を控除すれば、五七万〇、四六九株となり、株主総会の決議のため必要な発行済株式総数の過半数七五万株に及ばないのである。もつとも、特段の理由の存する場合は、右定款第二一条の規定にかかわらず、非株主が受任者として株主権を行使することを認めるべき場合もあろうが、いやしくも定款の規定であるから軽々に無視すべきではない。少なくとも当該総会に出席した株主の意見を聞くべきである。本件に於ては、出席株主の意見を聞かず、役員に於て専断的に処理したのは不当である。

(四)  被告会社の株式五、一八七株を所有する訴外金子安次は、本件株主総会に出席せず、また委任状をも提出しなかつたが、右訴外人の株式は右総会の出席株式数に計上され、議決権行使の株式中に加えられており、これは明らかに違法である。

(五)  本件における新潟県、直江津市、日本通運株式会社の各所有株式について、株主でない受任者らの株主権行使が許されるならば、亡船木義一名義の株式一、六八〇株を相続により取得した船木智子の不在者財産管理人船木セツの代理議決権行使も同様に許されるべきであるのに、被告会社は出席株主にも計らず、定款第二一条を理由として専断的に船木セツの代理議決権行使を認めなかつた。よつて、前記新潟県等三者の代理議決権行使が違法でないならば、船木セツの代理議決権行使を認めなかつたことは違法である。

被告会社は定款第二一条の運用につき、船木智子の場合は、同条を有効であるとし、或いは適用除外をなさずして、これと代理議決権行使を認めるべき必要性及び無害性について特段の差異を認め難い新潟県外二名の場合に、同条を無効とし、或いは適用除外をなしたのは、株主平等の原則に反し、かつ禁反言の原則ないし信義衡平の原則にも反する。

第三、被告の答弁および主張

一、請求の原因のうち、一の事実及び同二の事実のうち、訴外丸山実が昭和一七年八月被告会社設立当時同社の取締役副社長であり、昭和二三年四月以降昭和四二年一二月二〇日死亡退職するまで代表取締役社長であつたこと、訴外中村和子外六名が被告会社の株主名簿に原告主張の株式を所有する旨記載されていたこと、被告会社が訴外中村和子、山崎久子から住所更正の届出と登録印の改印届出を受けたこと、本件総会につき右両名から代理人石黒満雄、野原正に委任する旨の委任状が提出されたこと、右両名が丸山実の相続人の一人であつたこと、訴外丸山実外三名が被告会社の株主名簿に原告主張の株式を所有する旨記載されていたこと、被告会社の定款第二一条に原告主張のとおりの規定のあつたこと、前記総会において、株主新潟県は広川広勝に、株主直江津市は服部一二三に、株主日本通運株式会社は野田繁正に委任状を交付し、右受任者三名は総会に出席し、それぞれ原告主張の株数につき議決権を行使したこと、訴外金子安次が被告会社の株式五、一八七株の株主であることは認めるが、その余の事実は争う。

二、被告会社としては、従来株主名簿に株主として登録されてきた者をもつて一応株主と取扱うべきが当然であつて、もし真実丸山実の所有株で何かの都合上他人の名義を借りて株主名簿登録を受けていたものならば、丸山実の相続人らにて株主名簿の正当書換手続を了しない限り、原告らはその所有株なることを被告会社に対抗し得ない。商法第二二三条以下の株主名簿に関する各規定、殊に同法第二〇六条第一項の趣旨とするところが、株主の権利というものが継続的かつ反覆的に行使され、また多くの場合同時に多数の株主によつて集団的に行使されるものであり、しかも絶えず変動する株主によつて行使されるものであつて、かかる株主の権利行使の実態に対応する技術的処理として、株主名簿の記載によつて会社対株主の関係を画一的に処理しようという目的にでたものであることから考えて当然である。従つて、たとえ株式につき実質的な権利を有する者と雖も、会社の株主名簿に記載されるまでは、会社に対して株主としての権利を主張することができない。また、かりに原告の主張するとおり、亡実の相続人原告外五名の共有株となつたとしても、商法第二〇三条第二項の規定により共有株主会員で株主の権利を行使すべき者一名を定めなければ議決権の行使ができないものであるが、原告らにはそのことがなかつた。

三、被告会社の定款第二一条の規定が、もしも株主の議決権行使に株主でない者を代理人とすることを禁止する趣旨であるならば、右規定は無効である。なんとなれば、商法第二三九条第三項が「株主は代理人をもつてその議決権を行使することを得」と規定し、他の場合のように定款又は株主総会の決議などでこれに異なる定めをなすことができる旨の但し書を設けていない法意に反するからである。また元来右定款規定は、株主の議決権行使には本質的に自社の株主でなければ代理行使できないという訳のものではなく、ただ会社に無関係ないわゆる総会荒し屋などが代理委任状一枚で株主代理人として出席し、議事妨害をなすが如きことを防止せんとする消極的意味しかないものである。本件の株主新潟県、同直江津市、同日本通運株式会社の如くその法定代理人たる県知事、市長、社長が職務上の多忙や遠隔地の総会のため自ら出席できない場合などに、自己の意思を適正に発現するには、日常その業務を補佐もしくは代行している部下職員などを代理出席させるのが最も適切な方法であつて、右定款規定が株主でない者を代理人とする議決権行使を絶対に禁止した趣旨だとすれば、それは株主の有する議決権行使を不当に制限するもので無効と解さなければならない。仮に右規定が無効でないとしても、その趣旨は、株主新潟県が県直江津港湾事務所の所長広川広勝を、同直江津市が同市助役の服部一二三を、同日本通運株式会社が同会社高田支店長代理の野田繁正を代理人として委任出席させた場合のように、何れも日常その業務を補佐もしくは代行している者で、適当な代理人であることが顕著な場合まで、同人が株主でないからといつて議決権の代理行使を禁止する趣旨ではなく、被告会社の従来の株主総会においても右定款規定にかかわらず、此の種代理人による議決権行使を認めてきたものであるから適法である。また右規定は、当該株主総会において株主が自社株主でない者を代理人として出席させ議決権行使をなすことに異議のない場合までもこれを禁止する趣旨ではなく、本件株主総会でも原告はじめ前記の受任者らが自身株主でないことを知つても、誰も異議なく議決を了したものであるから、該代理人の議決権行使は有効である。さらに、新潟県、直江津市が委任した代理人は、それぞれ県および市の吏員であつて、いずれも地方自治法第一五三条の規定により、新潟県代表者知事および直江津市代表者市長がその権限に属する事務の一部を委任し、それぞれ臨時に県または市の株主議決権を代理行使させたものであるから、被告会社の定款にかかわらず適法なものであり、むしろ地方自治体の権限は地方自治法に従い行使しなければならないもので、同法第一五三条によれば、地方自治体の長が公法上たると私法上たるとを問わず、その職務とされている事務につき任意代理させる場合には、当該自治体の吏員に代理させるべきで、当該吏員以外の者に代理させることはできないと解せられ、しかして県、市の所有する株式につき株主権を行使することは、県、市を代表する県知事、市長の権限に属する事務であるから、県、市の吏員以外の私人に代理行使させることはできないものと解される。

四、原告の主張する船木セツの代理議決権行使に関する主張は、決議取消の事由を新たに追加主張するものと解されるが、右は明らかに商法第二四八条第一項に定められた総会決議取消の訴の提起期間経過後になされたもので、右期間経過後においては新たな取消事由を追加主張することはできないから、右主張は許されない。

第四、証拠(省略)

理由

一、原告主張事実のうち、第二の一の事実並びに訴外丸山実は昭和一七年八月被告会社設立当時同社の取締役副社長であり、昭和二三年四月以降昭和四二年一二月二〇日死亡退職するまで代表取締役社長であつたこと、訴外中村和子ら七名が被告会社の株主名簿に原告主張どおりの株式を所有する旨の記載のあつたことは、当事者間に争いがない。

そこで、訴外中村和子ら七名名義の株式計三万一、〇〇〇株についての原告主張の当否につき判断する。

かりに右株式三万一、〇〇〇株が、原告主張のとおり、実質上亡丸山実の所有であつたとしても(原告が中村昭一、中村徹立、中村拓立、山崎久和、山崎純一らを相手取り、同人ら名義の被告会社株式は、丸山実の遺産分割の結果原告が取得したとして、右株式の所有権確認を求める別件訴訟(当庁昭和四五年(ワ)第六三号)が係属していることは顕著な事実であるから、前記事実の判断は留保しておく)、該事実および右株式が原告の主張する相続人らの共有になつたことを被告会社が知悉していたこと並びに被告会社が策謀し、右相続人らが共有株の権利を行使すべき者一名を定める協議を妨げたとの事実は、本件に顕れた全証拠を検討してもこれを認めることはできない。従つてこれらの事実を前提とする原告主張は、その余の点について判断するまでもなく失当として採用することはできない。

二、次に訴外丸山実外三名名義の株式計一四万二、二七三株についても、被告会社が原告ら丸山実の相続人の共有権の権利を行使すべき者一名を定める協議を妨げたことを認めるに足る証拠のないことは前項と同様である。従つて、仮に右株式も原告主張のとおり共有に属するとしても、その旨株主名簿の書換手続を了し、これにつき議決権を行使すべき者一名を届出ない以上、被告会社に対抗できない筋合いであり、この点に関する原告の主張も理由がない。

三、被告会社の定款第二一条に「株主又はその法定代理人は他の出席株主を代理人として其の議決権を行使する事が出来る」と規定されていること、本件株主総会において、株主新潟県(株数三〇万株)は広川広勝に、株主直江津市(株式一五万株)は服部一二三に、株主日本通運株式会社(株式一万九、〇〇〇株)は野田繁正に委任し、右受任者三名が出席し、それぞれ議決権を行使したこと、右受任者三名は被告会社の株主ではなかつたことは、当事者間に争いがない。

そこで、右受任者三名の議決権行使は定款に違反するか否かについて判断する。

右定款に定める議決権代理行使の制限は、この程度ではまだ不当に株主権の行使に制限を加えるものとは考えられないから、一般的には右定款の定めは有効と解するのが相当である。しかしながら、かかる規定の設けられる主旨は、株主総会の運営が株主以外の第三者によつて攪乱、阻害されることを防止しようとするところにあると解されるから、非株主による議決権の代理行使を認めても、右定款の趣旨に反せず、何ら支障がないことが明らかであり、却つてこれを認めないことが当該株主の議決権行使の機会を事実上奪うに等しく、不当な結果となるような特別の事情がある場合には、当該株主の非株主による議決権の代理行使を拒否し得ないものと解するのが相当である。今これを本件についてみるに、成立に争いない乙第一五、一六号証、証人滝沢逸精の証言(第一回)により真正に成立したと認められる乙第七号証の一ないし三並びに同証言によれば、広川は新潟県吏員、服部は直江津市吏員、野田は日本通運株式会社の従業員であり、右吏員は地方自治法第一五三条に基づき、各地方自治体の長の権限に属する事務の一部を委任されたものであり、会社従業員も会社のため会社代表者の職務を代行すべく委任されたことが認められるから、これらの者による議決権の代理行使を認めても右定款の趣旨に反するところはないといわねばならない。よつて、この点についての原告主張は採用することができない。

四、次に、原告は、被告会社の株主金子安次は本件総会に出席しなかつた旨主張するが、証人斉藤吉嗣、同三木遂の各証言によれば、同人は本件総会に出席していたことが認められ、証人斉藤政也の証言および原告本人尋問の結果によつても右認定を左右するに足りず、他に右認定をくつがえすに足る証拠はない。よつて、原告のこの点に関する主張も採用することができない。

五、船木セツの代理議決権行使を認めなかつたのは違法である旨の主張について検討する。

原告の右主張は、昭和四三年一二月二三日受付の準備書面(第一、二回)において始めてなされ、右準備書面は昭和四四年一月一四日の口頭弁論期日において陳述されたことは、訴訟上明らかである。ところで、株主総会決議取消の訴は商法第二四八条第一項により訴提起期間が定められており、右期間はできるだけ早期に決議の効力を明確ならしめるために設けられたものであるから、この期間は決議の瑕疵の主張そのものを制限したものとみるべきであつて、この期間経過後に新たな取消原因を追加することは許されないと解するを相当とする。そうだとすると、原告の右主張は本件取消の訴の提起期間を経過した後になされたことが明らかであるから、許されないものである。

六、以上判断したとおり、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

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