大判例

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最高裁判所大法廷 昭和24年(れ)1285号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人太田耐造、同玉沢光三郎上告趣意第一点について。

所論指摘の原判決の事実摘示(即ち、原判示第一事実中の原判決附表第一表第一行及び同第七行の各事実、並びに同上第三事実中の原判決附表第三表第四行の事実)とその挙示の証拠とを対照すれば、原審は、被告人は各その日に各氏名不詳者数人づゝから各包括的一個の行為によって、清酒又は味噌を買受けた事実を認定したものと解せられるから、原判決には所論の違法は認められない。よって論旨は採るを得ない。

同第二点について。

判決裁判所の公判廷における被告人の自白は、たとえそれが断罪の唯一の証拠であっても、憲法三八条三項刑訴応急措置法一〇条三項の各自白に包含しないものであることは、当裁判所の判例とするところであるから、論旨は理由がない(昭和二三年(れ)第一六八号同年七月二九日大法廷判決、昭和二三年(れ)第一五四四号昭和二四年四月二〇日大法廷判決各参照)。

同第三点について。

旧刑訴二九一条一項に公訴提起の方式として犯罪事実の表示を必要としたのは、訴訟物体の範囲を明確にするために外ならないのであるから、公訴状に犯罪事実の表示として、記録編綴の司法警察官意見書記載の犯罪事実を引用することはもとより何等妨げないところである。しからば本件は論旨指摘の公判請求書の記載にもとづき公訴事実を陳述したものであるから、適法に被告事件の陳述のあったものであることは明らかである。よって論旨は到底採用できない。

同第四点について。

原審が被告人に対し執行猶予の言渡しをしなかった点に関し、経験則違反その他法令違背のかどを発見することができない。所論は畢竟原審の量刑不当を主張するに帰するものであるから、上告適法の理由とならない。

被告人本人の上告趣意(昭和二四年六月二一日附上申書と題するもの)について。

右は犯情家庭の事情等を述べ寛大な処置を望むというにあるのであって、かかる事由は到底上告適法の理由とならない。

よって、旧刑訴四四六条にしたがい、主文のとおり判決する。

この判決中、弁護人上告趣意第二点については、塚崎、沢田、井上、小谷、穂積各裁判官の反対意見並びに齋藤裁判官の補足意見(各意見の詳細は昭和二三年(れ)第一六八号同年七月二九日大法廷判決、昭和二三年(れ)第一五四四号、昭和二四年四月二〇日大法廷判決参照)の外は、全裁判官一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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