大判例

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最高裁判所大法廷 昭和25年(し)16号 決定

主文

本件特別抗告を棄却する。

理由

特別抗告の理由について。

論旨第一点は、赤間勝美の証人尋問調書は任意性のない供述を録取したもので、これにつき証拠調をすることは憲法三八条に違反すると主張する。しかし、原決定が右赤間の供述に任意性のあることを認めた理由として判示するところは充分首肯することができる。所論の強調するが如き右赤間の公判廷における供述等があったからといって、これによって直ちに前記裁判官の面前における赤間の供述には任意性がないと断定することはできない。原決定は正当で論旨は理由がない。

同第二点は、右赤間の証人訊問調書は、刑訴二二八条二項により、捜査に支障を生ずる虞があるとの理由で被疑者、弁護人等の反対尋問の機会を与えないで作成されたものであるが、右刑訴の規定は、憲法三七条二項に違反する無効の規定であるから、右調書を適法とする原決定は、右憲法の規定に違反すると主張する。

しかし、憲法三七条二項に、刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられると規定しているのは、裁判所の職権により又は訴訟当事者の請求により喚問した証人につき、反対尋問の機会を充分に与えなければならないというのであって、反対尋問の機会を与えない証人その他の者(被告人を除く)の供述を録取した書類は絶対に証拠とすることは許されないという意味をふくむものでないことは当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第八三三号同二四年五月一八日大法廷判決)。しかして記録によれば本件においては、所論の証人赤間勝美は、検察官の請求により、原審公判廷において尋問せられ、被告人側の反対尋問にも充分にさらされたことが明白である。従ってこの点において、憲法三七条二項の要請は充たされたものと認めることができる。原審は唯、右証人がその公判廷において所論裁判官の面前における同証人の供述(刑訴二二七条、二二八条によるもの)と異った供述を為した為に、検察官の請求により、刑訴三二一条一項一号によって右裁判官の面前における供述を録取した書面即ち所論証人尋問調書を証拠とすることができるものとして、これを証拠調する旨の決定をした迄のことであって、原審のかかる措置には何等違法の廉はない。原決定は正当で論旨は理由がない。

その余の論旨は、憲法違反という語を用いてはいるが、その実質は原決定の訴訟手続に関する法令違反を主張するに過ぎないものであるから、特別抗告適法の理由となし難い。

よって刑訴四三四条、四二六条に従い主文のとおり決定する。

右は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

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