大判例

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最高裁判所大法廷 昭和28年(オ)616号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

論旨は土地の固定資産税の納税義務者は、同税の納期において真実の土地所有権者と解すべきであるにもかかわらず、地方税法の関係条規を右と異つて原判決のように解するとすれば、原判決は憲法一一条、一二条、一四条、二九条、三〇条、六五条に違反すると主張するのである。よつて地方税法の関係条規を見ると、土地の固定資産税は土地の所有者に課せられるけれども、土地所有者とはその年度の初日の属する年の一月一日現在において、土地台帳若しくは土地補充課税台帳に所有者として登録されている者をいい(地方税法三四三条、三五九条)従つてその年の一月一日に所有者として登録されていれば、それだけで固定資産税の納税義務者として法律上確定されるから、四月一日に始まるその年度における納期において土地所有権を有する者であると否とにかかわらず、同年度内は納税義務者にかわりがないこととなつている。かように地方税法は固定資産税の納税義務者を決定するのに課税の便宜のため形式的な標準を採用していることがうかがわれるのである。

おもうに民主政治の下では国民は国会におけるその代表者を通して、自ら国費を負担することが根本原則であつて、国民はその総意を反映する租税立法に基いて自主的に納税の義務を負うものとされ(憲法三〇条参照)その反面においてあらたに租税を課し又は現行の租税を変更するには法律又は法律の定める条件によることが必要とされているのである(憲法八四条)。されば日本国憲法の下では、租税を創設し、改廃するのはもとより、納税義務者、課税標準、徴税の手続はすべて前示のとおり法律に基いて定められなければならないと同時に法律に基いて定めるところに委せられていると解すべきである。それ故地方税法が地租を廃して土地の固定資産税を設け、そして所有権の変動が頻繁でない土地の性格を考慮し、主として徴税の便宜に着眼してその賦課期日を定めることとしても、その当否は立法の過程において審議決定されるところに一任されているものと解すべく、従つて一月一日現在において土地所有者として登録されている者を納税義務者と確定し、その年度における納期において所有権を有する者であると否とを問わないこととした地方税法三四三条、三五九条の規定は前記憲法の諸条規に適合して定められていること明であつて、所論は結局独自の立法論にすぎない。もつとも原判決が本件固定資産税の賦課方法を公共の福祉による制約として説示したのは妥当を欠くきらいがないではないが、所論関係条規が憲法に違反していないとしたその判示は結局正当であつて所論の違法はないから論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 真野毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田克)

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