大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)1415号 決定

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人本人の上告趣意について。

まず、被告人は原審において発言を求めたが裁判長により拒否せられ、最終陳述の機会をも与えられなかった旨主張するのである。しかし、新刑訴における控訴審は旧刑訴における控訴審とは異り、第一審手続の覆審ではなく、第一審判決における一定の事実点並びに法律点に対する事後審査の手続である。されば控訴審の公判期日には被告人は必ずしも出頭することを要せず、被告人のためにする弁論は弁護人でなければこれをすることができないものとされ、しかも検察官及び弁護人は控訴趣意書に基ずいて弁論しなければならない等特別の規定が訴訟法にも存在しているのである(刑訴三八八条乃至三九〇条参照)。従って被告人に陳述の機会を与うべきことを定めている刑訴二九三条刑訴規則二一一条等の第一審に関する規定は控訴審には準用せられず、被告人はその希望により、また刑訴三九〇条但書による裁判所の命令により公判期日に出頭した場合裁判所が必要と認めてなす質問に対し任意に供述することができるものたるに過ぎない。されば原審において被告人に最終の陳述をなす機会を与えなかったとしても、これを違法ということはできない。また、被告人は第一審が事実認定の一資料とした司法警察員作成の被告人に対する第一回乃至第四回の供述調書は偽造文書であると主張する。しかし、かかる事実を窺い得る証跡は記録上存在しないのみならず、その点については原審において何等の主張もなされず従って原判決も何等判断をしなかったのである。所論は法律審において新たな事実を主張するものに外ならない。その他の所論に至っては結局違法になされた第一審及び原審の事実判断を非難するものたるに過ぎない。要するに所論は單なる訴訟法違反の問題としても理由なきのみならず、刑訴四〇五条所定の上告適法の理由とならない。そして、本件は刑訴四一一条に従い職権を発動すべき場合とは認められない。

弁護人竹原祇董の上告趣意について。

所論は單なる量刑不当の主張であり上告適法の理由とならず、また刑訴四一一条を適用すべき場合とも認められない。

よって刑訴四一四条三八六条三号一八一条一項に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔)

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