大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(れ)430号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人横田静造、同木寺義通の上告趣意について。

しかし、詐欺罪の目的物たる財物とは、財産権ことに所有権の目的となることを得べき物をいい、必ずしも金銭的価値を有すると否とを問わないものである。そして、原判決の認定した判示第一の詐欺の目的物は、兵庫県経済部商工課長名義の神戸戦災者同盟本部宛昭和二二年一月一四日附硝子特配申請の件については四箱の配給を約束する旨の書面であるから、かゝる配給を受くべき財産上の利益を期待しうべき書面であり、從って経済的価値なしといえないばかりでなく、少くとも所有権の目的となることを得べき物であること明らかであるといわなければならない。從って、たといその約束書それ自体が所論のように硝子板の受配の権利を附与するものでないとしても財物でないとはいえない。そして、原判決は、該約束書を認定するのに、同書の控である証第一二号の存在を証拠の一つとしているが、所論のごとくその交付責任者及び取扱関係者等を公判廷において取り調べ審理を盡した後でなければ証拠とすることができないとする法的根拠を毫も見出すことができない。それ故論旨は採ることができない。

弁護人鍛冶利一、同横田静造の上告趣意第一点について。

しかし、所論山手厚は、既に第一審第七回公判廷で、被告人並びに弁護人の面前において証人として喚問せられ、被告人に対し同証人を審問する機会を充分に与えたものであること記録上明白であるから、原審において重ねてその機会を与えなくとも同人に対する檢事の聴取書を証拠としても何等憲法三七条二項又は刑訴応急措置法一二条に反しない。その趣旨は当裁判所大法廷の確立した判例である。それ故所論は採ることができない。

同第二点について。

しかし、論旨の理由のないことは、横田、木寺両弁護人の上告趣意について説明したところにより了解すべきである。

同第三点について。

しかし、判示虚僞の事実を申向けるとともにその旨記載した申請書を提出したことその他原判示の詐欺の事実認定は、挙示の証拠を綜合すれば、これを肯認するに充分であって、その認定には反経驗則その他の違法は認められない。それ故所論は採ることができない。

よって旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔)

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