大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(れ)945号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人神道寛次上告趣意第一点について。

所論検事の聴取書によれば、被告人が判示同旨の供述をなしていることが認められる。所論は右供述記載中の文字に特種の意義を附し、強いて供述の趣旨を別意に理解せんとするものに過ぎない。原判決には所論のような違法はなく、論旨は採用に値しない。

同第二点について。

所論鑑定人上村義明の鑑定の趣旨が、原判決適録の通り、判示神祐丸を以てすれば冬期においても周到なる注意に依って天候を見定めて出航すれば新湊港より朝鮮への渡航は可能であるとするにあること、その鑑定書の記載自体によって明瞭である。犯人が客観的に犯罪の遂行に可能な手段を以てその実行に着手すれば、犯行実現の危險性あること勿論であるから、偶犯人の用意に欠くるところがあってその目的を遂げ得なかったとしても、それは障碍未遂を以て論ずべきであり、不能犯とみるべきではない。原審が前示上村義明の鑑定の結果を採って判示関税法違反罪の成立を肯定する資料に供したとしても原判決に所論のような違法があるとはいい得ない。論旨は理由なきものである。

同第三点について。

関税法所定の輸出行為は、海上にあっては目的の物品を日本領土外に仕向けられた船舶に積載することによって完成するのである。この見解は既に当裁判所の判例により示めされたところである(昭和二三年(れ)第四五〇号同年八月五日第一小法廷判決参照)。本件において、原審の確定した事実によれば、被告人は税関の免許を受けず法定の除外事由がないに拘わらず朝鮮釜山に輸送するため同港に仕向けられた神祐丸に判示貨物を積載して昭和二三年一二月一六日午前六時頃富山県新湊港を出航したというのである。

されば原審認定にかゝる被告人の犯行が密輸出行為の既遂たるべきこと勿論といわなければならない。原判決には所論のような違法はなく論旨は理由なきものである。

よって旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔)

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