大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

最高裁判所第一小法廷 昭和25年(オ)67号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人坂井一治上告理由第一点について。

自作農創設特別措置法三条一項一号にいわゆる農地の所有者がその住所のある市町村の区域外において所有する小作地とはいわゆる不在地主の小作地を指すものであること同法の立法趣旨に照し明らかであるから、いやしくも小作地の存する市町村の区域内に住所を有しない一切の者の所有する小作地を指す趣旨と解するのが相当であつて、所論のごとくどこの市町村にも住所を有しない者の小作地を包含しないものと解すべきではない。さればこの趣旨を判示した原判決は正当であつて、文字を離れた独断であるとの所論はあたらない。論旨は理由がない。

同第二点について。

自作農創設特別措置法はその適用の地域について別段の規定を定めていないから、同法三条の規定は日本国内に存在する農地であればこれが適用あるものであつて、その所有者又は占有者が日本国内に居住する者であると否とを問うものでないと解するを相当とする。従つて、仮りに上告人の住所が当時日本国内になかつたとしても、その所有に属し北海道に存在する本件小作地に関して上告人は同条一項の適用を免れることのできないことは勿論である。さればこの趣旨を判示した原判決は正当であつて論旨は理由がない。

同第三点について。

自作農創設特別措置法六条の二の二項四号は農地買収計画を立てる当時には農地の所有者又はその承継人が現に耕作している農地ではあるが、昭和二〇年一一月二三日現在においては小作地であつて、同日現在において、右農地の小作人たりし者がその買収を請求した場合には市町村農地委員会は右農地の買収計画を定めなければならぬのであるが、若し右農地を買収すると小作人の生活状態よりも所有者又はその承継人の生活状態がいちじるしく悪くなるようなことになる場合に限つて、特に右農地を買収計画から除いて、農地改革によつて土地所有者又はその承継人の生活状態が当該小作人のそれよりいちじるしく低下することのないようにする目的で立法されたものであるに過ぎないのであるから、同号にいわゆる「当該小作地について耕作の業務を営むもの」とは、農地の買収計画を立てる当時において現実にその土地について耕作の業務を営むものの義であつて、所論のように買収計画当時にはいまだその土地について耕作の業務を営んではいないが、将来耕作の業務を営むことのあるべきものをも包含する義と解すべきでないことは明らかである。されば論旨は理由がない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com