大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(オ)76号 判決

愛媛県八幡浜市一五八一番地

上告人

太陽石油株式会社

右代表者代表取締役

青木繁吉

被上告人

右代表者法務大臣

中村梅吉

右当事者間の船舶国籍証書並機船底曳網漁業許可証交付請求事件について、高松高等裁判所が昭和二六年一月一六日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

論旨は、違憲をいうが、その実質は本件証書等の交付を受けないことを法令に照し不服であるという主張に帰する。さすれば、右交付請求に対し明示又は黙示の拒否処分が為された場合、その処分の違法を主張して、これが是正を求める行政訴訟を提起しうるは格別、直ちに本訴のような給付の訴を提起することは許されないものとした原判決の判断は正当であつて当審もこれを支持する。従つて、本件上告は、その理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

昭和二六年(オ)第七六号

上告人 太陽石油株式会社

被上告人 国

上告人の上告理由

原審判決は憲法違反である即原審判決は三権分立の原則に反する違法がある。

(一) 裁判所の権能が各国民の権利(利益)の擁護にあることは今更申す迄もない、従つて第三者から自己の権利が侵害され或はされんとする際には直ちに裁判所に其の救済を求めうることは憲法の明示する所である。

その侵害者が個人たると、国家たるとによつて其の結論を左右すべきものでない。

本件は上告会社が主務官庁に対し船舶国籍証書並びに機船底曳網漁業許可書の交付を求めた所、既に数年を経過してゐるに拘らず主務官庁は依然として之が何等の手続を為さず其の儘放任しあるを以て上告人は致方なく之が救済を求めんとするに外ならない。

我憲法下に於ては三権分立主義の思想が根底なし司法行政及び立法が互に独立し相侵犯することなく夫々機能を果すべきである事は言を待たない所であるが今若し右三原則を文字通り厳守するに於ては本件の如く、行政の違法な処置によつて蒙る一般国民の権利の侵害に対して何等の救済方法なき結果と相成り憲法が保障した国民の権利の擁護に欠くる結果となるのである。

行政事件訴訟特例法第一条の精神は違法な積極的行政行為に限定せず違法は不作為の行政行為の為に損害を蒙つた場合に於ても民事訴訟により之が保護を求め得る趣旨であると解すべきであり又同条の「其他公法上の権利関係に関する訴訟については単に取消には変更等の形式訴訟に限ることなく、広く確認訴訟及び給付訴訟も包含してゐると解すべきものと思はれる然らば本件に於て主務官庁が上告人よりの書類を受理し直ちに決裁すべきに拘らず数ケ年も其の放任し上告人の権利を侵害した場合に於ては三権分立主義の例外の場合に該当し当然裁判の対象となし得べきものである、昔より「例外なき原則ない」との鉄則ある如く本件の場合にも裁判所に之が救済を求め得べきものなりと確信するのである。

(二) 然るに原審判決は裁判所が法令に別段の定なき限り行政庁に代つて自ら処分したのと同様の效果を生ずる判決をしたり行政庁に処分を命じたり出来ない若し裁判所にかゝる権能を認めるならば裁判所が行政権を行使し或は行政権を監督する結果となり三権分立主義に反する。

本件は船舶国籍証書等の交付を命ずる判決を求むるのは結局いづれも行政庁に対し行政上の処分をなすべきものを命ずる判決を求めるものであり……結局本件は不適法なり、云々」と摘示し上告人の控訴を棄却したのである然れ共前述した様に上告人の求むるのは違法な不作為な行政行為の為蒙つた其の救済を求めるものであつて其の立論を異にするのである。

(三) 今仮りに原審判決の通りとしても原審判決は破毀さるべきである。

本件船舶の機船底曳網漁業許可については、一件記録にも明かな様に、当時愛媛県軍政部アンドリスト大尉の勧告に基き当時の愛媛県当局は上告会社に対し之が許可を与へること約諾し上告会社は県の黙認の下に之が漁業に従事し居るのであつて既に上告会社は当時の許可官庁である県との関係に於て、公然と漁業を従事し居り実質は漁業権者であるがたゞ手続上其の許可書の下付が遅延し居たに過ぎない。

従つて上告会社に於て機船底曳網漁業許可書の下付を請求すとも既に実質上漁業権者に対する単なる書類の下付といふ形式的手続に過ぎないのであつて之が救済を裁判所に求めたりとしても直ちに行政権に対する侵犯等と目すべきものなり。

然るに原審判決は単にかゝる訴訟をも三権分立主義に反するものとして上告会社の控訴を棄却したのは我憲法の根本思想たる三権分立の原則に反するものである。

以上

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