大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)4231号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人大蔵敏彦の上告趣意第一点は違憲をいうが、その実質は単なる訴訟法違反の主張であり、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(原判決は、第一審判決が国税犯則取締法二二条一項にいわゆる煽動罪の意思の解釈を誤った違法あるものとしてこれを破棄し、第一審において適法に取り調べた証拠によって、本件公訴事実と同趣旨である被告人が原判示第一乃至第三の所為をなした事実を認定し、被告人の右所為が同取締法二二条一項に該当し有罪であるとして処断したのであるから、弁護人の所論各控訴趣意に対しても、結局において判断を示したものということができるのであって、所論のような違法は認められない。)

同二点の第一は、違憲をいうが、その実質は原判決の認定と異る事実関係を前提とする法令違反の主張に帰し(原判決は結局国税の納付を為さないことを煽動した旨認定している。)、同第二は、文書による煽動罪の成立時期に関する原判決の判断を非難する単なる法令違反の主張に帰し(原判決が文書による煽動罪の成立には、その文書を他人において現実に認識又は了解することを必要とせず、他人によって閲覧され得るような状態におくを以て足りる旨判断したのは正当である。)、同第三は、単なる法令違反の主張であって(原判示のごとく不特定多数人に頒布した以上、自ら国税納付義務者の閲覧され得るような状態に置いたもので煽動罪の成立するものであるこというまでもないから、所論の違法も認められない。)、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、同第四は、違憲をいうが、原判決認定の判示第一乃至第三の所為は所論のように吉田内閣のとっている税制に対する批判にとどまるものではなく、国民が負担する納税の義務(憲法三〇条)の不履行を慫慂し、公共の福祉を害するものであって、憲法の保障する言論の自由の限界を逸脱し、これを処罰する法規は、憲法二一条の条規に反するものでないことは、当裁判所大法廷の判決(判例集三巻六号八三九頁以下参照)の趣旨に徴し明らかである。されば、所論は、その理由がない。

よって、刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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