大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(あ)2439号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人三木今二、同前堀政幸の上告趣意第一点について。

論旨は、原判決が単なる国際慣習法でない明示の協定、すなわち、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定一七条(一九五三年九月二九日附議定書3の(a){2}にいわゆる「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」の解釈を誤まり、因って日本国裁判所が被告人に対し裁判権を有しない事件につき裁判を行った違法がある旨主張し、これを前提として憲法九八条二項違反を主張するものである。しかし、原判決が、右の「公務執行中」というのは、「公務執行の過程における」という意味であって、「勤務時間中」と解することはできない旨判示し、本件の場合は、たとえ公務に服する時間中であっても、その公務と関係のない個人的行為であるから、前記議定書3(a){2}に当らないとしたのは正当であると認められる。されば、所論違憲の主張は、その前提たる前記協定の解釈、適用を非難するに過ぎないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らないし、また、同四一一条を適用すべきものとも認められない。

同第二点について。

所論は、判例違反をいうが、所論判例(但し昭和二四年(れ)二五七号とあるのは、同年(れ)二九七号の誤記と認められ、また、昭和二四年九月二九日食糧管理法違反事件とあるのは、昭和二五年九月二九日窃盗及び物価統制令違反事件の誤記と認める。)は、単に当該事件につき採証上実験則に反して事件を認定した違法があるとして原審判決を破棄したに過ぎないものであって、本件には適切でない。されば、所論は、結局単に原判決には所論判例の場合と同様に採証上実験則に違反して事実を認定した違法その他証拠に基かないで事実を認定し又は審理不尽に基く理由不備の違法乃至事実の誤認があるというに帰する。従って、所論は、刑訴四〇五条の上告理由に該当しないし、また、記録を調べても同四一一条を適用すべきものとも認められない。

同第三点について。

所論は、量刑の非難であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、所論その他記録における一切の情状に照しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって、同四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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