大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(あ)3030号 判決

主文

原判決並に第一審判決中被告人椎名隆に関する有罪部分を破棄する。

被告人椎名隆を懲役三月に処する。

但し一年間右刑の執行を猶予する。

第一審における訴訟費用中証人大須賀健治、同大須賀英雄、同大須賀やす、同深山操、同平山清、同佐々木佐太郎、同佐々木春吉、同岩井揚、同鈴木忠一に支給した分の三分の一並びに第二審における訴訟費用中証人井上貞嘉に支給した分を除き、その余の分を被告人椎名隆の負担とする。

被告人椎名隆に対し公職選挙法二五二条一項の期間選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定はこれを適用しない。

被告人佐藤実、同山口忠治、同柴海義雄、同岩井力三郎の本件上告を棄却する。

理由

弁護人平野一郎、同子安良平の上告趣意第一点、第二点は、単なる訴訟法違反の主張を出でないものであり(そして、原判決の判示は、正当である。)、同第三点は、事実誤認の主張であって、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人鍜治利一の上告趣意第一点は、単なる訴訟法違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(そして、原判決の判示は、正当である。)。同第二点は、違憲をいうが、憲法三七条二項は、被告人に反対尋問の機会を与えない供述者の供述を録取した書類を絶対に証拠とすることを許さない趣旨でないことは、当裁判所大法廷屡次の判例であるから、所論同条項の解釈を誤ったとの主張並びに刑訴三二一条一項二号を違憲であるとする主張は採用できない。同第三点は、違憲をいうが、その実質は、原審で主張も判断もない第一審における単なる訴訟法違反の主張であり、同第四点は、単なる訴訟法違反、事実誤認の主張を出でないものであり、同第五点は、量刑の非難であって、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

職権を以て調査すると、原判決の是認した第一審判決の被告人椎名隆の所為に対する法律適用において、買収の点につき公職選挙法二一二条一項一号の規定のほか同法一二九条を適用した点並びに本件一個の行為にして数個の罪名に触れる場合の法定刑の比較をするに際し、まず各条の所定刑の選択をした点等その法律適用の措置失当であるばかりでなく、同被告人に関する本件犯罪の日時、金額、犯罪の態様、被告人の経歴その他記録に現われた一切の情状を綜合すると、同被告人に対する量刑は甚だしく不当であって、刑訴四一一条を適用して同判決を破棄するを相当とする。しかし、爾余の被告人に対しては同条を適用すべきものとは認められない。よって、被告人椎名隆に対しては主文一項のとおり原一、二審判決を破棄し、同四一三条但書によって事件につき更に判決すべく、爾余の被告人に対しては同四一四条三九六条に従い主文六項のとおり上告を棄却すべきものとする。

原判決の是認した第一審判決の確定した被告人椎名隆の所為に法令を適用すると、同被告人の事前運動の点は、公職選挙法二三九条一号、一二九条に、買収の点は、同法二二一条一項一号に各該当するところ、右は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから刑法五四条一項前段、一〇条により重い後者の刑に従い、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期範囲内で同被告人を主文二項の刑に処し、情状に鑑み同法二五条を適用して主文三項のとおりその刑の執行を猶予し、訴訟費用の負担につき刑訴一八一条を、公職の選挙権、被選挙権の不停止につき同選挙法二五二条三項前段を各適用して主文四項、五項のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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