大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和33年(あ)742号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人中村又一の上告趣意各論一、二について。

傷害罪は結果犯であって、その成立には傷害の原因たる暴行についての意思があれば足り、特に傷害の意思の存在を必要としないこと及び傷害致死罪の成立には傷害と死亡との間に因果関係を必要とするに止まり、致死の結果についての予見を必要としないことは当裁判所の判例とするところであり(昭和二五年(れ)一一九六号、同年一一月九日第一小法廷判決、刑集四巻一一号二二三九頁、昭和二六年(れ)七九七号、同年九月二〇日第一小法廷判決、刑集五巻一〇号一九三七頁)、そして、原判決の是認した第一審判決挙示の証拠によれば、被告人が第一審判決判示第一事実につき、暴行そのものについて十分これを認識していたものである事実と、該暴行と長浦ヨシエの判示傷害及び死亡との間に因果関係の存する事実とがともに認め得られるのであるから、被告人は第一審判示傷害の犯意を有していたものであって、これによって生じた判示致死の結果についても刑責を免れることができない旨の原審の判断は正当であり、所論引用の判例に何ら反するものでなく、むしろこれに合致する判断をしているのである。それ故所論は、原審の認定に副わない事実関係を前提として原判決の判例違反、法令違反を主張するに帰し、採るを得ない。

同三について。

所論は事実誤認、単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同四について。

所論のような場合が憲法三七条一項及び二項に反するものでないことは当裁判所の屡々判示するところであり、所論は採るを得ない。(刑集二巻五号五一一頁、二巻七号七三四頁、四巻一二号二六三六頁等。そして、原審は弁護人の申請した被告人の精神鑑定をその必要なしとして却下し、第一審鑑定人竹山恒寿作成にかかる精神鑑定書等により被告人が本件犯行当時心神喪失又は心神耗弱の状態にあったものとは認められない旨を判示している。)

同五について。

所論中判例違反をいう点は、引用の判例は、当該事案における量刑事由を判示しただけで、他の事案に適用すべき法律的見解を含んでいないのであるから判例違反の対象となり得ない判例であり、その余の論旨は量刑不当、単なる法令違反の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、死体遺棄の行為は、常に必ずしも傷害致死の行為に伴うものではなく、身体傷害により人を死に致した後、さらに死体を遺棄するにおいては、傷害罪のほかに死体遺棄罪を構成することもちろんである。(明治四四年(れ)一二八七号、同年七月六日大審院第二刑事部判決、刑録一七輯一三八八頁参照)

また記録を調べても所論の点につき同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

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