大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和35年(オ)296号 判決

判   決

東京都大田区南六郷三丁目一九番地

上告人

二葉工業株式会社

右代表者代表取締役職務代行者

松原正交

同都墨田区緑町三丁目二〇番地四

上告人補助参加人

西村金属株式会社

右代表者代表取締役

西村寅吉

同都大田区南六郷三丁目一九番地

上告人補助参加人

生方博

右両名訴訟代理人弁護士

江波戸文夫

同都大田区南六郷二丁目二九番地

被上告人

根元嘉兵

右訴訟代理人弁護士

満園勝美

河鰭誠貴

横浜市西区岡野町五二番地

被上告人

大木信能

右当事者間の株主総会決議不存在確認請求事件について、東京高等裁判所が昭和三四年一二月一九日言い渡した判決に対し、上告人補助参加人らから全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人補助参加人らの負担とする。

理由

上告人補助参加人代理人江波戸文夫の上告理由第一点について。

所論は、本件株主総会決議不存在確認の訴は、過去の事実関係の存否を確定することを目的とするものであるから、不適法であると主張する。

しかしながら、本訴は、上告会社において昭和二八年三月七日および同年一二月一〇日第一審判決主文掲記の内容の株主総会決議が何ら行われなかつたのにかかわらず、商業登記簿にその旨の記載がなされ、会社その他の関係人においてあたかもこれが適法に拘束力を有するかのように取扱われ勝ちであるから、その失当であることを判決により明確にし、もつて上告会社および被上告人らを含むその関係人間において、右株主総会決議の拘束力のないことの画一的確定を計ることを目的としたものであること記録上明らかである。されば、本件は、被上告人らの第一審における請求趣旨の措辞は妥当でないが、論旨にいうように株主総会決議の不存在という単なる過去の事実関係の存否の確定を求めるものではなく、商業登記簿に登記されて外見上会社その他関係人に拘束力を持つかのように見える株主総会決議がその効力を有しないことの確定を求めるものであるから、論旨はその前提を欠くものといわなければならない。而して、商法二五二条は、「総会ノ決議ノ内容ガ法令又ハ定款ニ違反スルコトヲ理由トシテ決議ノ無効ノ確認ヲ請求スル訴」について規定し、商法一〇九条の準用によりその無効確定判決に対世的効力を与えているが、株主総会決議がその成立要件を欠き不存在と評価される場合においても、本件のようにその決議の内容が商業登記簿に登記されている場合に、その効力のないことの対世的確定を求める訴の必要性は決議の内容の違法の場合と何ら異らず、同条においてとくにこれを除外する趣旨がうかがわれないから、本訴は商法二五二条に照し適法であるといわなければならない。所論引用の判例は本件に適切でなく、論旨は採用できない。

同第二点について。

被告会社(上告人)の代表取締役であつた原告(被上告人)根元は、その所有する被告会社の株式のうち新株一六〇〇株のみにつき訴外新堂のため質権を設定してこれを同人に交付したものにすぎないのであつて、被告会社株式旧株四八〇株、新株一六〇〇株の株主であつた原告根元が、これによりその株式を失つたものでない旨の原判決引用の第一審判決の事実認定は、その挙示の証拠により肯認できるから、原判決に経験則違反、採証法則の違法はない。所論は原審が適法になした証拠の取捨、事実の認定を非難するものにすぎないから採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、九四条、九三条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 斎 藤 朔 郎

上告人補助参加人代理人江波戸文夫の上告理由

第一点 原審判決は民事訴訟法第三九四条に規定する判決に影響を及ぼすこと明かなる法令の違反がある。

即ち被上告人等の本訴請求は過去の事実関係の存否を確定することを目的とするものであるから原審裁判所は確認訴訟としては不適法として却下又はその請求を棄却せらるべきであつた。尤も上告人等に於いて原審の口頭弁論期日に於てその旨の主張を為さなかつたが確認訴訟に於ける即時確定の利益の存否は当該訴訟成立の要件であるから上告人等の主張の有無に拘らず原審裁判所は職権を以て調査し第一審判決を取消し訴を却下するか乃至第一審判決を取消しその請求を棄却せらるべきであつたと思う。

その理由は被上告人等は孰れも第一審判決主文掲記と同一なる請求趣旨の申立を為し第一審はその請求を認容し上告人(第一審被告)に敗訴の言渡を為したものであるが第一審判決主文並に第一審判決の認定した事実理由にも記載せらるゝ通り本訴の請求は単に第一審被告会社の昭和二十八年三月七日為された左記株主総会決議は存在しないことを確認する(左記事項は之を略す)並に第一審被告会社の昭和二十八年十二月十日為された本店を大田区南六郷三丁目十九番地四に移転する株主総会決議は存在しないことを確認することを訴求するものであつてこれは単に過去に存在しなかつた事実の確認を求めるものに過ぎない。

かような確認の訴は民事訴訟法第二二五条に規定するところの権利又は法律関係の存否を確定する訴ではないのであるから確認訴訟としての権利保護の要件を欠くものである。従つて原審裁判所は第一審判決を取消し訴を却下し乃至は即時確定の利益なしとして第一審判決を取消しその請求を棄却すべきではなかつたか。

然るに原審判決はこと茲に出でず判示して曰く「当裁判所も被控訴人等の本訴請求は孰れもその理由があるものと認めるそしてその理由は左に附加する外原判決がその理由において説示するところと同一(但し証人大本信能については第一審における訴の併合前の証言であることを附加する)であるからこゝにこれを引用する。

と為し上告人西村金属株式会社の控訴を棄却したことは民事訴訟法第二二五条の規定を逸脱して為された違法がある、この違法は判決に影響を及ぼすこと明かなる法令の違反であると思料するので之を以て上告理由の第一点とする。

蓋し被上告人等が主張するように本件係争の決議が真に不存在であり被上告人等が真に株式会社根元鉄工所の株主であるならば既に過去に流れ去つた事実の確認を求めずに真正面から不存在決議に基く不法登記の抹消と所有権その他被上告人等が保有することあるべき実体的権利に基き給付の訴を提起し一挙に紛争を解決すべきが訴訟経済の上にもはた又被上告人等の権利保護の上にも適切な手段ではなかつたか。

然るに被上告人等が本件請求のやうに過去に存在しなかつた株主総会決議の不存在の確認を求めるが如きは確認訴訟に於ける即時確定の利益がないこと明白である。

旧大審院は此点に判示して曰く「凡そ確認訴訟は現在の権利関係を確定するに於て起訴者が直ちに利益を有すべき場合に限り之を提起し得べきものにして他日に履行訴権を行使せんとするときの請求権保持の為めの前提として確認訴訟を提起するが如きは固より之を許されざることは既に当院法理として認むるところの判例なり」と。(最高裁判所事務総局編纂裁判例要旨集民事訴訟法(4)の二一五項御参照)

第二点 原審判決は吾人の生活実験則に違反し事実を認定した採証上の違法がある。

(以下省略)

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