大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和38年(オ)1021号 判決

上告人

前田保三

右訴訟代理人

黒田寿男

小島成一

平井直行

窪谷朝之

被上告人

前田とら

被上告人

前田旭治

右訴訟代理人

矢田英一郎

(ほか六名)

右八名訴訟代理人

堂野達也

服部邦彦

主文

原判決中、被上告人らの建物明渡請求部分を破棄し、右部分の第一審判決を取り消す。被上告人らの上告人に対する建物明渡請求を棄却する。

その余の上告を棄却する。

訴訟費用は、一・二・三審を通じ三等分し、その二を上告人の、その一を被上告人らの各負担とする。

理由

上告代理人小島成一、同平井直行の上告理由第一点ないし第三点について。

原判決挙示の証拠によれば、原判決の認定した事実を肯認しえないわけではなく、右事実関係のもとにおいては、前田兼吉において本件宅地買受当時内心において上告人に対し将来適当な時期に本件宅地を贈与しようと考えていたが、その後当初の考えをかえて上告人に対しこれを贈与する意思をすてたから、本件宅地の贈与はついに実現されず、かつ、本件建物についての贈与も認められないとする原判決の判断は、当審も正当として是認しうる。

原判決には、所論のような違法があるとは断じがたく、所論は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨・判断、事実認定を非難するに帰し、採用しがたい。

同第四点の第二・第三について。

所論の点に関する事実認定は挙示の証拠により肯認でき、その事実関係のもとでは、本件宅地の所有者は前田兼吉であつて、上告人でないとした原判決の判断は、正当であり、原判決には、所論のような違法はなく、所論は採用しがたい。

同第五点について。

本件一件記録に徴しても、原審に所論のごとき違法があるとは認めがたく、所論は採用しがたい。

同第四点の第一について

思うに、共同相続に基づく共有者の一人であつて、その持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者(以下単に少数持分権者という)は、他の共有者の協議を経ないで当然に共有物(本件建物)を単独で占有する権原を有するものでないことは、原判決の説示するとおりであるが、他方、他のすべての相続人らがその共有持分を合計すると、その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといつて(以下このような共有持分権者を多数持分権者という)、共有物を現に占有する前記少数持分権者に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない。けだし、このような場合、右の少数持分権者は自己の持分によつて、共有物を使用収益する権原を有し、これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。従つて、この場合、多数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである。

しかるに、今本件についてみるに、原審の認定したところによれば前田兼吉の死亡により被上告人らおよび上告人にて共同相続し、本件建物について、被上告人前田とらが三分の一、その余の被上告人七名および上告人が各一二分の一ずつの持分を有し、上告人は現に右建物に居住してこれを占有しているというのであるが、多数持分権者である被上告人らが上告人に対してその占有する右建物の明渡を求める理由については、被上告人らにおいて何等の主張ならびに立証をなさないから、被上告人らのこの点の請求は失当というべく、従つて、この点の論旨は理由があるものといわなければならない。

よつて、原判決は被上告人らの上告人に対して本件家屋の明渡を求める部分について失当であり、その余は正当であるから、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八四条、三八六条、九六条、九二条、九三条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(松田二郎 入江俊郎 長部謹吾 岩田誠)

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