大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和40年(オ)1295号 判決

上告人

宮地弘商事株式会社

右代表取締役

宮地弘

右訴訟代理人

渡部利佐久

被上告人

渡辺三代治

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人渡部利佐久の上告理由第一ないし第三について。

原審が所論の点についてなした事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できる。そして、当事者間に争なき事実と右認定により原審の認定した事実によれば、被上告人は訴外宇治田旭、同季子夫妻に対し、昭和三六年三月頃同人らの生計費として金一〇万円を貸与し、同年三月二二日同夫妻はそれぞれその所有にかかる原判示の物件を被上告人に対して譲渡担保に供し、さらに、同三七年二月被上告人は右宇治田夫妻の長女の大学進学に必要な費用として金六万円を貸付け、同夫妻は同月一三日被上告人に対し追加担保として原判示二回目の譲渡担保を供し、結局金一六万円の借入れのため金一〇万円を出ない物件を譲渡担保に供したというのである。

右のような事実関係に徴すれば、前記各譲渡担保による所有権移転行為は、当時宇治田夫妻は他に資産を有していなかつたから、債権者の一般担保を減少せしめる行為であるけれども、前記のような原審の確定した事実の限度では、他に資力のない債務者が、生計費及び子女の教育費にあてるため、その所有の家財衣料等を売却処分し或は新たに金借のためこれを担保に供する等生活を営むためになした財産処分行為は、たとい共同担保が減少したとしても、その売買価格が不当に廉価であつたり、供与した担保物の価格が借入額を超過したり、または担保供与による借財が生活を営む以外の不必要な目的のためにする等特別の事情のない限り、詐害行為は成立しないと解するのが相当であり、右と同旨の見解に立つて本件詐害行為の成立を否定した原判決の判断は、正当として是認できる。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切ではなく、原判決には所論違法はない。論旨は、右と異なる見解に立つて原判決を非難するものであつて、採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(長部謹吾 入江俊郎 松田二郎 岩田誠 大隅健一郎)

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