大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和42年(オ)523号 判決

上告人

熊谷ハルヱ

右代理人

葛西千代治

被上告人

高橋照一

高橋睦

右両名代理人

内野房吉

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人葛西千代治の上告理由第一点について。

訴訟上の和解の内容がいかなるものであるかは、和解調書の文言のみに拘束されず、一般法律行為の解釈の基準に従つて判定されるべきものであるところ、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)が、賃貸期間終了後収去すべきものとされた建物は、本件建物および旧建物中残された台所部分を指すものであると認定判断したことは、右和解の文言およびその他挙示の証拠により是認でき、その間所論の違法は認められない。それ故、所論は採るを得ない。

同第二点について。

所論の点に関する原判決の事実認定は挙示の証拠により是認でき、その間所論の違法は認められない。所論は、ひつきよう原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採るを得ない。

同第三点について。

所論の点に関する原判決の事実認定は挙示の証拠により是認でき、その間所論の違法は認められず、論旨は採るを得ない。

同第四点について。

本件和解条項における収去すべき建物の表示は抽象的であり、また、買取請求の条項もあるから、右和解は建物収去のための債務名義としてその内容は必ずしも明確でなく、疑義あるを免れない。そして、債務名義の内容について疑義がある場合においては、さらに訴を提起する利益があるものと解すべきであるから、本件は訴の利益があるものというべきである。原判決はかかる見解を前提として本案につき審理、判断をしているものと認められるから、原判決には所論判断遺脱の違法はない。所論は採るを得ない。

同第五点について。

原判決の挙示する証拠によれば、本件和解による賃貸借が一時使用のためのものであるとした原審の認定判断は肯認することができる。そして、記録および弁論の全趣旨に徴し、被上告人らは訴訟上の和解による賃貸借なる旨およびその内容を主張しているのであるから、これにつき原判決が一時使用の賃貸借である旨を認定判断したからといつて、所論の違法は認められない。所論は採るを場ない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠 大隅健一郎)

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