大判例

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最高裁判所第三小法廷 平成6年(あ)945号 決定

本籍

長野県下伊那郡天龍村平岡一一八七番地の三

住居

名古屋市瑞穂区関取町一三八番地の三

カラオケスタジオ経営

高橋重德

昭和一八年八月八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、平成六年九月八日名古屋高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人青木俊二の上告趣意は、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 可部恒雄 裁判官 園部逸夫 裁判官 大野正男 裁判官 千種秀夫 裁判官 尾崎行信)

○上告趣意書

被告人 高橋重德

右の者に対する平成六年(あ)第九四五号所得税法違反被告事件につき、上告の趣旨は左記のとおりである。

平成六年一一月一五日

右弁護人 青木俊二

最高裁判所第三小法廷 御中

原判決は、左記に述べる理由により刑の量定が甚だしく不当であって、これを破棄されなければ著しく正義に反する。

一 原判決は、本件におけるほ脱税額が合計一億一七〇七万余円の多額に上り、そのほ脱率を通算すると九九パーセントを上回るものであり、被告人は、将来に備えての資金の確保をはかり、業務上得た利益に対する課税を免れるため、取引先から虚偽の販売手数料を作成してもらうなど、偽装工作までして所得を秘匿していたものであって、本件犯行の動機に酌量の余地はなく、また脱税額の高額であること、態様の悪質さからみて、その犯状は甚だ芳しくなく、被告人に有利な情状を考慮しても、第一審判決の量刑はやむを得ないものであり、重過ぎて不当であるとはいえないとしている。

二 被告人は昭和六三年頃より、エスアイイーなる会社と提携し、後には自ら独立してカラオケ機器やカラオケボックスを販売することとなり、相応な収入を挙げることとなったが、他方、カラオケボックスの販売については、調整区域に設置したカラオケボックスが撤去させられる可能性があるとの問題が生じ、更にカラオケボックスの販売については、五年間のメンテナンス保証をする必要があり、被告人はこれら設備等の販売業者として、これらの問題解決のための資金負担を余儀なくされる虞れがあるなどの問題を抱えるに至った。

更に右のような状況のもと、自らが、事業遂行の主役として経営を行なうとの経験に乏しい被告人としては、事業上将来発生する虞れのある、予期しない負担に対応するため、あるいは、はやりすたりの強い業種を営む以上は将来にそなえ、手許へ資金を確保するしかないとの気持に捉われ、結果として、平成元年ないし同三年の間の所得につき、本件の如く事実に反する申告をするに至ったものである。

右の如く、被告人はもともと二十数年にわたる会社勤務の生活を経過し、自らの事業としてカラオケボックス業を行なうようになったのは平成元年頃からであり、自己の事業の維持、確保について専念するあまり、本件の各違反行為に及んだものと見られるべきであり、この点において、被告人は、事業開始の当初から、自己の収益につき、ことさら税を免れようと企てて事業に就いたものではなく、その動機において、悪質もしくは厳しく非難される場合には該当しないものであること明白である。

三 前項の事実に加え、本件各公訴事実に関する所得税差額分の納付については、被告人において先に修正申告をなし、本税の金一億一七〇七万余円については既にこれを完納しており、本件公訴の対象となった本税全額が納付済である点については、情状として十分に酌量されるべきであり、更に被告人の前科は昭和四二年の略式裁判による業務上過失傷害事件(罰金一五、〇〇〇円)の一件のみである。

四 以上の経緯に照らせば、原判決の刑の量定は甚だしく不当なものであり、これが破棄されるのでなければ著しく正義に反するものといわざるを得ない。

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