大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)300号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人野村均一の上告趣意は、末尾に添えた別紙記載の通りである。

(一)論旨は、原判決は外国人たる被告人に対し過大な罰金を科したのは国際正義もしくは国際情宜に反するものである。というのであるが、結局量刑不当の主張にほかならず、上告の適法な理由にならない。

(二)職権によって調査すると、酒税法の罰則規定は何度も改正されているが、本件犯行当時のものは昭和二三年法律第一〇七号によって改正されたものであり、それがその後昭和二四年法律第四三号によって改正されたのであるが、右改正法には「改正法施行前になした行爲に関する罰則の適用についてはなお從前の例による」旨の規定があるから、本件原判決が行為時法なる右昭和二四年法律第四三号による改正前の酒税法を適用したのは正当である。ただ原判決は、酒類、醪ならびに容器、器具を沒收するにつき酒税法第六〇条第三項、第六四条第二項のほかに刑法第十九条第二項を適用しているが、本件犯行当時の酒税法第六〇条第三項には「前二項ノ場合ニ於テハ其ノ製造ニ係ル酒類並ニ其ノ機械器具及容器ハ之ヲ沒收ス」とあり、同法第六四条第二項も右と同一の表現をしているのであって、右各條は刑法第一九條に対する特別規定であり、刑法第一九条第二項の規定と異なり酒類器具等は犯人以外の者に属すると否とにかかわらず沒收する趣旨と思われる。すなわち本件犯行当時の酒税法はその第一四条違反(無免許酒類製造)と同第一六条違反(無免許酒母醪麹製造)とを別けて前者は第六〇条でまた後者は第六四条で処罰していたのであるが、次の改正である昭和二四年法律第四三号により、酒税法第一四条違反および無免許酒母醪製造(第一六条違反の一部)をともに同第六〇条で処罰し、無免許麹製造は新設の第六二条で処罰することとし、従前の第六四条第一項第一号および第二項を削除したのであるが、改正された第六〇条第四項および新設の第六二条第二項にはいずれも「……ハ何人ノ所有タルヲ問ハズ之ヲ沒收ス」と規定してある。これは前法を変更したものではなく、その解釈を明かにしたものと思われる。ともかくも本件の沈收については、酒税法第六〇条第三項および同第六四条第二項だけを適用すればよかったのであり、刑法第一九条第二項の引用は蛇足と言うべきだが、本件の沒收物件は「被告人以外の者に属しない」と原判決も判示している次第であって、刑法第一九条第二項の趣旨にも反せず、いずれにせよ原判決を破毀すべきほどの法律適用の誤とは言えない。

よって、旧刑訴第四四六条に従い、主文の通り判決する。

以上は、当小法廷裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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