大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(オ)1302号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人島田隆信の上告理由第一点三の(ロ)(ハ)について。

所論(三(ロ))は、被上告人の解除が相当の期間を定めた催告に基づくものでないのに、解除を有効と認定した原判決には、民法五四一条の解釈適用を誤つた違法があると主張する。この点について、原判決の認定するところは、昭和二六年一月二二日本件当事者間に成立した紡毛糸十七番単糸五千封度(一封度につき代金九百六十円替)納期同年二月二〇日まで代金現品と引換に順次受渡という売買契約において、上告人の依頼に基づき同月二九日その指定場所に上告人が送荷した千二百八十四封度この代金百二十三万二千六百四十円の内、上告人が昭和二六年一月三〇日金五十万円、翌一月三一日金十万円を支払い、残代金の支払については翌二月一日上告人がその代理人を通じて支払猶予を懇請したところ、被上告人はすでにその前日である一月三一日上告人に対し、同日中に残代金の完済がない場合は上告人がすでに支払つた代金に相当する商品は受渡をするが、その余の部分については契約を解除する旨を通告してあつたため、容易に右懇請に応ずる気配がなかつたが、結局上告人の哀願に応じ被上告人は残代金の支払を二月二日まで猶予したものの、上告人は遂に二月二日に金二十万円の支払をしたのみで残代金を完済しなかつたというのである。従つて原判決は、被上告人が解除の前提たる催告期間を二日間と定めたと認定した趣旨であり、所論はこの期間をもつて前記催告金額に比して不相当であるというに帰着する。しかし原審の認定するように、契約は右同年一月二二日成立したこと、代金の支払は現品と引換の約であること、本件の問題となつている受渡の現品は、上告人の依頼により被上告人が約旨どおり一月二九日指定場所に送荷したものであること、右送荷現品に対する上告人の支払は部分的でありかつ直ちに残代金について猶予の懇請をしたこと等の事実関係と、当事者双方が営利会社であるという記録上明らかな事実及び商人として送荷商品を代金の支払なきままに止め置くことは通常不利益と危険とを伴うものと認むべきことを総合するときは、本件残代金について二日間の催告期間は必しも不当であるとは認められない。従つて所論は採用できない。

また三の(ハ)の所論は、被上告人が右二月二日上告人の弁済した金二十万円を受領したことをもつて、催告期間を猶予したものと主張するが、原審認定の事実によれば、被上告人の催告は「完済がないときは既払代金に相当する商品の受渡はするが、その余の部分については契約を解除する」趣旨であつたというのであるから、右弁済の受領をもつて催告期間を猶予したものと判断しなければならないものではない。

同第二点について。

所論前段は、原審でなんら主張していない事実を前提とするか、原審の認定と異る事実を前提とするものであつて採用できない。所論後段は、荷為替の性質を誤解したものであつて、特段の事由もないのに貨物引換証を先ず荷受人たる上告人に交付しなければならないというような理由は全くない。

同第五点(一)について。

所論は、同一契約において前後二回の契約解除は許されないという見解に立つて原判決を非難するが、売買の目的物と代金との関係が互いに可分であり、その一部につき契約解除の要件を具備するときは、その一部の解除を妨げるものでないから、一個の売買につき数回に解除が行われることをなんら妨げるものではない。この趣旨に基づく原審の判断は正当であつて所論のような違法はない。

その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三)

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