大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(オ)801号 判決

上告人 江藤一夫(仮名)

右訴訟代理人弁護士 小田正弘(仮名)

被上告人 三田きく子(仮名)

右法定代理人親権者三田フミ未成年につき

その法定代理人親権者 三田健一(仮名)

三田ふき(仮名)

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人小田正弘の上告理由について。

民訴三五条六号にいう「前審」とは、当該事件の直接又は間接の下級審を指すのである。

本件に関連し所論のように調停手続が係属し、結局不調となつた事実が認められるが、右調停を前審の裁判ということはできない。されば所論の調停に関与した裁判官が本件の第一審判決をしてもなんら違法はなく、所論は理由がない。

その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

○昭和二八年(オ)第八〇一号

上告人 江藤一夫

被上告人 三田きく子

上告代理人弁護士小原正弘の上告理由

一、原判決は民事訴訟法第三百九十五条第一項二号の規定に違反した違法な裁判である。

即ち、被上告人の主張するところに因れば、被上告人の母フミは昭和二十四年八月七日頃旧盆の夜、殆んど強姦同様被上告人自宅の裏地で上告人に情交を迫られ、姦淫せしめられた結果姙娠して昭和二十五年四月二十六日被上告人を分娩した。依つて被上告人は上告人に対し認知を求むる旨の調停を青森家庭裁判所弘前支部に申立てたが、調停不調となつたので本訴に及ぶと言うに在り、原審裁判所もこの被上告人の主張を肯定して上告人に対して敗訴の判決を言渡して居る。

然れども前記被上告人の申立てた青森家庭裁判所弘前支部昭和二十五年(家)イ第九一号私生子認知請求の調停事件の調停に関与した裁判官は、本件原審判決に関与した裁判官判事中田早苗である。

之れ民事訴訟法第三百九十五条第一項二号に所謂法律により判決に関与することを得ざる裁判官が判決に関与した違法の裁判である。

二、子が姙娠より分娩に至るまで母の体内にあること通常は十ヶ月を要するものであることは現在の医学上の定説である。

被上告人の主張するところ又、原審判決が認定した事実によつて被上告人の母は上告人と情交したのが昭和二十四年八月七日で、被上告人の母が被上告人を分娩したのは昭和二十五年四月二十六日であつて、被上告人は満八ヶ月で出生した所謂月たらずの子であることは争のないところである。

然るに成立に争のない乙第一号証本田さち助産婦の証明書に依れば被上告人は推定十ヶ月で分娩された事実が明らかである。此の動し得ない証拠に因れば被上告人は被上告人の母と上告人と情交する以前に既に懐胎されたものである事実は明らかである。

原審は、この明らかな事実に反して上告人主張を退ぞけ、敗訴の判決を言渡したのは明らかに法律に違背した裁判である。

以上

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