大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

最高裁判所第三小法廷 昭和28年(オ)890号 判決

当事者

上告人 東興商事株式会社

右代表者 吉永多賀誠

右代理人 徳田敬二郎

外一名

被上告人 株式会社高島屋

右代表者 榧木三男

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人徳田敬二郎、同島田徳郎の上告理由第四点について。

会社は定款に定めた目的の範囲内において権利を有し義務を負うものであるが、ここにいう目的の範囲には定款に定めた目的自体に包含されない行為であつても、目的たる事業を遂行するに必要な行為をも包含し、目的遂行に必要な行為であるかどうかは、定款記載の目的自体から観察し、客観的、抽象的に必要であるかどうかの基準によつて決すべきものであるという趣旨は、すでに当裁判所の判例とするところであること所論の引用するとおりである。そして会社を維持するため必要のある場合は、上告会社の本来の目的との関連において、床板の売買も、これを客観的、抽象的に観て会社の目的を遂行するに必要な行為となり得ると解するのが相当であり、これを消極に断定しなければならない特段の理由は認められない。されば原判決の説明の文言に多少議論の余地がありとしても、結論においては正当であり、論旨は採用することはできない。

同第一点について。

所論は、被上告会社が所論の口頭弁論において、床板の売買が上告会社の目的自体に該当しないということを認めたに過ぎないのを捉えて、被上告会社の争わない事実であると主張し、これを前提として議論をすすめるのであるから、論旨はもとより採用のかぎりでない。

同第二点について。

所論は、原判決に釈明権不行使の違法があると主張するが、前段にいう床板の数量は、原審の引用する第一審判決の適法に認定するところであるから、釈明を求める必要なく、また履行場所の如きは請求の当否の判断に必要な事項ではないから、釈明をさせないからといつて違法の問題が生じない。さらに所論後段は、当時木材が統制物資であつたことを理由として本件売買が不法原因の給付となるかどうかにつき釈明をさせなかつたことを非難するが、単に木材が統制されていたからといつて、直ちに一般に木材に関するすべての取引が違法であると速断することを得ないとともに、当事者がこの点について何の主張もしないのに、裁判所が職権をもつてこれを調査し、または釈明を求める実務を負うものではない。所論は理由がない。

第三点、第五点及びその他の所論は要するに原審の事実認定を非難するに帰し、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島保 裁判官 河村又介 小林俊三)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com