大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)2285号 判決

主文

原判決中被告人水野義則に関する部分を破棄する。

被告人水野義則を罰金五千円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二百円を一日に換算した期間、右被告人を労役場に留置する。

右被告人に対し、公職選挙法二五二条一項の規定を適用しない。

第一審証人尼塚末吉、加藤与作、吉村甚吉、盛岡幹造、牧野旁枝、徳崎好夫、天野誉祐、台寿治、大久保正登、北村節夫、大横田義雄、小林敏雄、土井ツネ、橘三郎、尼子三郎、増田祝一、松永博士、平崎源平、今田寿盛、湊政一、中邑元に支給した訴訟費用は、右被告人の負担(ただし第一審相被告人等と連帯)とする。

被告人水野義則を除くその余の被告人等の本件各上告を棄却する。

理由

各被告人の弁護人田坂戒三、永井貢、鈴木惚三郎の上告趣意第一点は、事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。

同第二点について。

所論は、単なる法令違反の主張であるから、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。しかし、昭和二四年九月一九日人事院規則一四-七「政治的行為」五項一号にいう「特定の候補者」とは、所論のとおり、「法令の規定に基く立候補届出または推薦届出により、候補者としての地位を有するに至った特定人」を指すものと解すべきであって、原判決が、「立候補しようとする特定人」もこれに含まれるものと解したのは、あやまりであるといわなければならない。けだし、「特定の候補者」というのが、「立候補しようとする特定人」を含むものと解することは、用語の普通の意義からいって無理であり、同規則の他の条項ないし他の法令との関係で、ぜひそのように解さなければならないような特段の根拠があるわけでもないのに、「国家公務員法一〇二条の精神に背反する」というような理由から、刑罰法令につき類推拡張解釈をとることは、あきらかに不当というべきだからである(同規則五項一号の「候補者」とは、右のように、立候補届出または推薦届出により候補者としての地位を有するに至ったものをいうのであり、候補者としての地位を有するに至らない者を支持しまたはこれに反対することが、同号に含まれないことについては、所論の指摘するとおり、人事院当局自身のはっきりした行政解釈が存在する。なお、以上のように解する結果、国家公務員が、立候補しようとする特定人を支持して選挙運動を行うことは、政治的行為の制限に関する国家公務員法の罰則にふれないことになっても、それが、事前運動禁止に関する公職選挙法の一般的罰則にふれるものであることは、いうまでもない)。

そうすると、被告人水野義則につき、立候補しようとする特定人のための選挙運動に関し、国家公務員法一一〇条一項一九号の罪の成立を認めた原判決は、法令の解釈適用をあやまったものであり、原判決中同被告人に関する部分は、刑訴四一一条により破棄を要するものと認められる。

各被告人の弁護人田坂戒三の追加上告趣意および被告人桧垣新兵衛の上告趣意は、いずれも事実誤認の主張であって、適法な上告理由にあたらない。

なお、記録を調べても、被告人水野義則に関する前記の点を除いては、刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

以上の理由により、原判決中被告人水野義則に関する部分を破棄し、刑訴四一三条但書によって、さらに判決することとし、その余の被告人等の各上告は、同四一四条、三九六条によりこれを棄却すべきである。

被告人水野義則につき原判決の確定した事実(第一審判決判示第一事実、原判決がこれに附加した部分を除く)は、昭和二七年法律第三〇七号による改正前の公職選挙法一二九条、二三九条一号、二二一条一項一号、刑法六〇条にあたるので、刑法五四条一項前段、一〇条により重い公職選挙法二二一条一項一号の罪の刑に従い、所定刑中罰金刑を選択して同被告人を罰金五千円に処し、なお、罰金不完納の場合における労役場留置につき刑法一八条、公職選挙法二五二条一項の不適用につき同条三項、訴訟費用の負担につき刑訴一八一条、一八二条を、それぞれ適用する。なお、同被告人に対する公訴事実中国家公務員法違反の点は、前記の理由で罪とならないが、それは公職選挙法違反の事実と刑法五四条一項前段の関係にあるものとして起訴されているのであるから、特に主文において無罪の言渡はしない。

よって、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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