大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)1037号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人阿部正一の上告理由第一点について。

所論は、原判決添付第三目録中の漢字又は仮名をもつて田口四郎と記載された投票を候補者田口芳郎に対する有効投票である旨を主張するに帰する。しかし原判決のこの点に関し認定する事実によれば、本件選挙区内に田口四郎なる人物が実在し、しかも同人はこの地方において小学校教員、わら工品等の販売業をなした後、新聞販売業に転じ、他方角館町議会議員に当選し、また衆議院議員の選挙運動に関係する等、相当名を知られているというのである。してみれば原審がこれらの投票は、候補者にあらざる同人に対する投票として無効とすべきものと断じたのは相当である。上告理由は多くの判例を引用してその主張を強調するけれども、訴外人がその者に対する投票と認められるほど、地方的に著名であるかどうかに帰着する問題であつて、具体的場合により判断が異ることのあるのは当然であり、本件については、原審の判断を特に不合理と認めるに足りない。

同第二点について。

所論は、第三目録中の「田鉄」等と記載した投票は、田鉄とは、候補者田口芳郎の通称であるから、有効投票と認めるべきであると主張する。しかし原判決の認定する事実によれば、田口候補の家の当主は、代々「鉄蔵」を名のり、現に田口鉄蔵を名のる当主は候補者の実父であつて、投票当日において本件選挙区内の角館町町長選挙の候補者となつている。そして田口鉄蔵は「田鉄」と略称され、この略称は田口家の家号と化し、また家号たると共に、他面田口鉄蔵の通称として一般に使用され、当主でない候補者や他の家族の一員を指称するために使用されていないのみならず、当主田口鉄蔵は三〇年位前に「鉄蔵」を襲名し、角館町に居住し、町会議員の職に在り、近時町長を勤め、さらに町長選挙に当り立候補していることが認められ、その他公私各般の職に就いて広く活躍しているというのである。してみれば原判決が右の投票を田口芳郎の実父田口鉄蔵への投票と見て無効投票としたのは相当であつてその判断を誤りということはできない(なお昭和二九年二月一二日第二小法廷判決〔集八巻二号四八三頁〕。昭和二六年一〇月三〇日第三小法廷判決〔集五巻一二号六三七頁〕。仙台高裁秋田支部昭和二八年七月一三日判決〔行政事件裁判例集四巻七号一六六〇頁各参照〕)。

同第三点ないし第七点について。

所論について、原判決の挙げる証拠と説示とを精しく検討してみると、原判決の所論投票の効力に関する判断は、その理由とするところにより十分に首肯することができる。所論は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)

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