大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和32年(あ)1836号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人フランクリン・イー・エヌ・ウオーレンの上告趣意について。

昭和二七年条約第六号日本国とアメリカ合衆国との安全保障条約第三条に基く行政協定一七条九項(f)所定の有能な通訳を用いる権利は、日本国の裁判権に基いて公訴を提起された合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族が必要とするならば、自らこれを行使すべきものであって、裁判所に有能な通訳を附する義務を負わせているものではないと解するのを相当とする。そして、米人弁護人は、昭和三一年九月二八日の第一審公判における証人宮内義之介の尋問に際してのみ通訳人の通訳を不適当であるとして異議の申立をしたにとどまり、原審において、被告人又はその弁護人から所論第一審通訳人の有能性の有無について証拠調の請求がなされておらない。また、原審が、米人弁護人の申請にもとづき右宮内義之介を、その公判において、再び証人として尋問した際、被告人又はその弁護人は、右証人の証言の通訳に対し何ら異議の申立をしていないことが記録上明らかである。しかも控訴裁判所は刑訴三九三条一項但書の場合を除き、職権で所論の証拠を取り調べる義務はない。されば原判決には所論のような違法は存しない。結局、所論憲法九八条二項違反の主張はその前提を欠くことに帰し、その余の論旨は、量刑不当の主張であって、いずれも刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己)

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