大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和39年(あ)1111号 判決

主文

原判決および第一審判決を破棄する。

被告人を免訴する。

理由

弁護人甲元恒也の上告趣意は末尾添付のとおりである。

職権により調査するに、農地法四条一項違反の内容となる犯罪行為は、都道府県知事等の許可を受けなかったということにあるのではなく、許可を受けることなく農地を農地以外のものにすること、すなわち、無許可で農地を潰廃する事実行為をいうものと解すべきであり、農地を農地以外のものにしたというためには、行為者がこれを宅地化する目的をもっている場合でも、必ずしも家屋建築工事に着手する必要のないことはもちろん、完全に宅地としての外観を整えることも必要でなく、農地をもはや農地として使用できないようにすること、すなわち肥培管理を不能もしくは著しく困難ならしめ、耕作の目的に供される土地とはいいがたい状態にすることをもって足りるものといわなければならない。

これを本件についてみると、第一審判決の挙示する各証拠および原審で取り調べた各証拠によれば、被告人は、昭和二八年二月頃、当時田であった本件土地を、納屋を建築する目的で買い受け、その頃から耕作に適さない山土および田の底土を入れて地盛りを始め、おそくとも昭和三一年二月頃までには、これを従来より約五〇糎高く地盛りし、地内に排水のための土管を埋設し、東側の石垣の構築をも終えている事実が認められる。そして、右各行為によって、本件土地は、もはや耕作の目的に供される土地とはいいがたい状態となり、農地の転用が行なわれたものと認めるのが相当である。

本件土地の北側道路沿いの石垣の構築が行なわれたのは、原判示どおり、昭和三二年二月頃であると認められるが、右石垣工事の行なわれる前に、本件土地の転用が終っていたと認めるべきことは前述のとおりであり、右石垣工事は本件土地を非農地化するについて、必要欠くべからざる行為であったとは到底認められないのであるから、右工事の時点をもって時効の起算点とした原審の判断はあやまりであるといわざるを得ない。

前記のとおり、本件土地は、すくなくとも昭和三一年二月頃までに、農地以外のものに転用されていたものと認められるから、その時から公訴の時効は進行を開始したものというべきである。そして、本件公訴が提起されたのは、昭和三四年一一月九日であることは記録上明らかであり、農地法四条一項、九二条違反の罪の時効期間は三年であるから、右公訴は、公訴時効完成後の提起にかかるものといわなければならない。

しからば、第一審判決は、刑訴法三三七条四号により、免訴の言渡をなすべきであったのに有罪の言渡をし、原判決がこれを是認したのは、いずれも違法であり、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

よって、刑訴法四一一条一号により、原判決および第一審判決を破棄し、同四一三条但書、四一四条、四〇四条、三三七条四号により、被告人に免訴の言渡をなすべきものとし、上告趣意に対する判断を省略し、主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 柏原語六 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎)

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