大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和39年(行ツ)28号 判決

上告人

日下正一

被上告人

岡山県人事委員会

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点第・二点について<省略>

同第三点について。

論旨は、要するに、人事委員会に不利益処分の審査請求をした当事者に同委員会の議事録の閲覚をする権利がないとした原審の判断は、法令の解釈適用を誤つたものであるというにある。

おもうに、人事委員会の審査手続は、審査決定の慎重性と内容の合理性とを担保するものであり、また、その議事録は、手続の経過および結果を記録してこれを公に証明するものであるから、厳格な意味での手続的正義を実現する上からいえば、右の手続を適正かつ公正に行ない、その議事録を正確に記録しているというだけにとどまらず、さらに、これを保障するために、当事者に対し議事録閲覧の機会を与え、これに関する不服申立ての途を開いておくことが望ましいということができよう。

しかし、人事委員会の審査手続においては、審査請求者は、審査手続の当事者としてその手続に関与し、手続が適正かつ公正に行なわそているかどうかを知りうる状態にある反面において、会議の議事録には、別段の規定がなければ、訴訟手続における調書のごときいわゆる絶対的証明力がなく、他の証拠によつてその記載を補つたり反証を挙げてその証明力を覆えすことができることに思いをいたせば、人事委員会の審査手続について前示のごとき制度を設けることは、絶対の要件と解すべきものではなく、これを設けるかどうかは、いつに立法政策に属する問題というべきである。殊に、右のごとき制度を設けない場合においても、審査請求者が、審査決定に影響を及ぼす手続上の瑕疵についても、それを理由として、審査決定に対し出訴しうることになつているのであるから審査請求者の権利保護に関するかぎり、別段、欠けるところはなく、かような制度の立て方をもつて直ちに違憲違法ということはできない。いま、現行法の規定をみるのに、地方公務員法は人事委員会の議事は議事録として記録して置かなければならないと規定するにとどまり、その細目は人事委員会の定めるところに委ねている(一一条三項、四項参照)。そして、本件に適用される岡山県人事委員会規則には、議事録にどのような方法で、どのような内容を記録すべきか、また、その議事録を一般の閲覧に供すべきかどうかについては、何ら規定するところがない。このような法制の下においては審査請求者に議事録の閲覧請求権が与えられているものとは認め難く、従つて審査請求者は、人事委員会によつて議事録の閲覧請求が拒否されたからといつて、その拒否処分の取消または無効確認の訴を提起することを許されないものといわなければならない。

されば、叙上と同趣旨に出た原審の判断は正当であつて、所論の違法はなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官田中二郎 裁判官石坂修一 五鬼上堅磐 横田正俊 柏原語六)

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