大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和42年(あ)1464号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人桜井紀、同天野末治、同大矢和徳、同花田啓一、同安藤厳、同伊藤泰方、同阪本貞一、同郷成文、同尾関闘士雄、同原山剛三(旧姓前島剛三)、同石川康之、同藤井繁、同原山恵子の上告趣意一について。

所論は、憲法二一条違反をいうが、公職選挙法一三八条一項は、選挙運動としての戸別訪問には、種々の弊害を伴い、選挙の公正を害するおそれがあるため、選挙に関し、同条所定の目的をもって戸別訪問をすることを全面的に禁止しているのであって、戸別訪問のうち、選挙人に対する買収、威迫、利益誘導等、選挙の公正を害する実質的違反行為を伴い、またはこのような害悪の生ずる明白にして現在の危険があると認められるもののみを禁止しているのではないと解すべきであるところ、選挙の公正を期するため戸別訪問を禁止した結果、言論の自由にある程度の制限をもたらすことがあっても、右禁止が憲法二一条に違反しないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和二四年(れ)第二五九一号同二五年九月二七日判決、刑集四巻九号一七九九頁)の趣旨に徴し明らかであるから、所論は理由がなく、その余の所論は、事実誤認、単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由に当らない。

同二について。

所論は、違憲をいうが、公職選挙法二五二条が憲法一五条一項に違反しないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和二九年(あ)第四三九号同三〇年二月九日判決、刑集九巻二号二一七頁)の趣旨に徴し明らかであるから、所論は採用することができず、その余の所論は、実質は、単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由に当らない。

同三について。

所論は、量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当らない。

同四について。

所論は、違憲(三七条、三八条)をいうが、被告人の氏名について黙秘権がないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和二七年(あ)第八三八号同三二年二月二〇日判決、刑集一一巻二号八〇二頁)とするところであり、氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、署名のない弁護人選任届によってした被告人の弁護人選任は無効であると解するのが相当である(昭和三九年(あ)第二〇二九号同四〇年七月二〇日第三小法廷判決、刑集一九巻五号五九一頁参照)から、所論は理由がない。

また、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって、同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本正雄 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎)

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