大判例

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最高裁判所第二小法廷 平成9年(行ツ)96号 判決

兵庫県尼崎市杭瀬南新町三丁目二番一号

上告人

大同鋼板株式会社

右代表者代表取締役

深谷晉

右訴訟代理人弁理士

石田長七

西川恵清

森厚夫

大阪市西淀川区百島二丁目一番一〇号

被上告人

ダイト工業株式会社

右代表者代表取締役

澤田實

右当事者間の東京高等裁判所平成六年(行ケ)第一四一号審決取消請求事件について、同裁判所が平成九年一月二二日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人石田長七、同西川恵清、同森厚夫の上告理由について

記録によって認められる本件訴訟の経緯に照らすと、原審が所論の措置を採らなかったことに違法はない。論旨は、原審の裁量に属する審理上の措置の不当をいうものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 福田博 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 河合伸一)

(平成九年(行ツ)第九六号 上告人 大同鋼板株式会社)

上告代理人石田長七、同西川恵清、同森厚夫の上告理由

一、原判決には、判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背があるから、破棄を免れないものである。

(1) 訂正審判は、主として当該特許について一部に瑕疵がある場合に、その瑕疵のあることを理由に全部について無効審判を請求されるおそれがあるので、そうした攻撃に対して備える意味において瑕疵のある部分を自発的に事前に取り除いておこうとする者のための制度である(特許法第一二六条)。

この訂正審判は特許後に権利の一部が無効である場合にその部分の削除等を認めることにより発明の保護を図る制度として認められているものであるため、無効審判(同第一二三条一項)が請求された場合、権利者は特許が無効となることを回避するための防御手段として請求することが多いにもかかわらず、従来は、無効審判が請求されている場合であっても、別途訂正審判を請求しなければならず、無効審判と訂正審判がともに係属した場合、無効審判の審理対象である明細書及び図面が訂正審判の審決によって変更されることも生じるため、通常、訂正審判の審決が確定するまで無効審判の審理は中止され(同第一六八条一項)審理が遅延するという問題が生じていた。

このため、平成五年の一部改正において、無効審判が請求されている場合には、その手続において訂正審判と同内容の訂正を認め(同第一三四条二項)、訂正の可否については無効審判の審理とあわせて審理することにより審理遅延を回避するとともに、無効審判の係属中に訂正審判を独立して請求することはできないことを規定した(特許庁編 工業所有権法逐条解説 〔第一三版〕第二九四頁~第二九六頁)。

(2) この改正法の適用を受けて、本件特許第一五一〇五八一号について、被上告人が平成七年五月一〇日に請求し、現時点で特許庁に係属している無効審判(平成七年一〇一八四号)(甲第一号証)において、上告人は訂正請求の機会を与えられて、訂正が審理されることになっている(同第一三四条)。

右訂正請求における訂正内容が容認されれば、本件における無効理由が解消する蓋然性が非常に高いが、訂正請求書は手続補正により平成七年一〇月三一日に提出しており(原審における甲第七号証の一及び二)、既に、一年半近く経過しているにも拘わらず、未だ審理されていない。特許庁の審判長には、平成八年五月二七日に口頭(電話)で、そして平成九年三月六日付けで上申書(甲第二号証)により右無効審判の審理を進めて頂くよう要請している。

本件審決取消訴訟においては、特許庁の審判部における審理の経過を考慮していただきたいとして、訴訟手続中止の申立てをしたが、中止の決定がなされなく、特許庁の審決を待つことなく、請求を棄却するとの判決がなされた。この原判決は、上告人の特許が無効となることを回避するための防御手段である訂正請求の機会を実質上剥奪するものである。

右無効審判において訂正が容認され、無効否認審決が出されれば、再審事由に当たるものである。

(3) よって、訂正審判の制度趣旨及び存在意義を考慮すれば、本件の場合、特許庁における右無効審判の審決があるまで、訴訟手続を中止すべきである。

二、以上のとおり、原判決には、訂正審判の制度趣旨及び存在意義を無視しているものであって、判決に及ぼすこと明らかな法令の違背があり、破棄されるべきである。

以上

(添付書類省略)

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