大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1579号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人淺井精三上告趣意第一點について。

本件において、原審における辯論終結の期日と判決言渡期日との間に,一五日以上の期間の經過があったことは、所論のとおりであるが、舊刑事訴訟法第三五三條は、裁判官が審理を續行する場合次の期日との間に一五日以上の間隔を置くときは、裁判官が從前の審理の結果についての記憶が薄弱になり、ために心證を形成するに困難を來すこともないとはいえないので、特にその點を考慮して、この場合には公判手續の更新をすることを命じたものであって、一旦辯論を終結した後は、これを再開しない限り、審理の結果形成せられている心證に基いて評議判決をすればよいのであって前記のような理由により更新を必要とする審理というものは存在しないのであるから、本件のように、辯論終結の日から判決言渡期日までの間に一五日以上を經過したにすぎない場合には同條の適用はないものと解するが相當である。それ故論旨は理由がない。

同第三點について。

記録により本件審理の經過を辿ってみると、被告人に對し公訴の提起があったのは、昭和二二年五月九日で同年同月三一日第一審判決があり、同年六月四日被告人より控訴の申立を爲し、第二審即ち原審は同年七月一〇日本件を受理し、昭和二三年七月一四日公判を開廷し、即日辯論を終結して同月三〇日判決を言渡したという推移であって、原審が本件を受理してから、公判期日を指定するまでに一一ヶ月を經過し、その間、審理の進行について、何らかの考慮を拂った形迹は、少くとも記録の上では認められない。もとより、裁判が迅速に行われたかどうかは、事案の性質、内容その他諸般の状況、殊に本件のごとき被告人が當初から不拘束であった場合、他の長期勾留の被告事件が輻輳していて、これらを優先的に處理する必要上、本件が遷延を餘儀なくされたのではないか等について十分の檢討を加えた上でなければ、輕々にこれを斷ずることはできないのであるが、記録にあらわれた前記のような經過に徴してみれば、本件の審理は、迅速に行われたものとは言い難い。しかしながら、假りに本件原審の裁判が迅速を缺いたとしても、その故を以て、原判決を破毀すべき理由とすることのできないことは、すでに、當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年一二月二二日言渡、同年(れ)第一〇七一號大法廷判決)それ故論旨は、本件上告の理由としては、これを採用することができない。

尚被告人は第一審判決の後、改悛の情顕著なものあるにかゝわらず、原審が第一審判決と同一の刑を言渡したことは不當であるとの論旨は、原審の専權に屬する量刑の不當なことを主張するに歸するから、當裁判所に對する上告適法の理由とならない。

よって刑事訴訟法施行法第二條、舊刑事訴訟法第四四六條に則り主文のとおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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