大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(オ)42号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告訴訟代理人弁護士花村美樹の上告理由について。

本件農地は被上告人先代別所平三郎の所有に属したところ桃園村農地委員会はこれを自作農創設特別措置法(以下法と略称する)第三条第一項第一号に該当する農地として買収計画を立てたので同人は右農地は法第五条六号に該当するから買収計画から除外さるべきものと主張し同委員会に対して異議の申立をしたが却下の決定があつた。同人はさらに三重県農地委員会に対し訴願をしたが同委員会は昭和二二年九月一七日付で却下の裁決を下し、右裁決に対しては出訴期間内に訴が提起されなかつたのである。そして右買収計画に対し三重県農地委員会の承認が与えられ、三重県知事は昭和二三年三月二四日買収令書を同人に交付して買収を行つたのであるが原判決は本件農地(訴外倉田繁造耕作の分)については法第五条六号に該当する農地として買収を免かるべきものであると判断し従つて桃園村農地委員会のした買収計画は違法であり、この買収計画に基づく三重県知事のした買収処分もまた違法であるから右買収処分の取消を求める被上告人等の本訴請求は正当であると判定したのである。

ところで法第五条はその各号の一に該当する農地については買収をしないと規定しているのであるからこれに該当する農地を買収計画に入れることの違法であることは勿論これが買収処分の違法であることは言うまでないところである。従つて右の如き違法は買収計画と買収処分に共通するものであるから買収計画に対し異議訴訟の途を開きその違法を攻撃し得るからといつて買収処分取消の訴においてその違法を攻撃し得ないと解すべきではない。法第七条が買収計画に対して異議訴訟を認めているのはただその違法の場合に行政庁の是正の機会を与え所有者の権利保護の簡便な途を開いただけであつて異議訴訟上の手続をとらなかつたからと言つて買収処分取消の訴訟においてその違法を攻撃する機会を失わせる趣旨であるとは解せられない。買収計画に対し異議申立や訴願をせず又は訴訟裁決に対する出訴期間を徒過したときは当事者はもはや買収計画に対しその取消を請求する権利を失うのであるからその意味では確定的効力があるのであるがその確定的効力は買収計画内容に存する違法を違法なしと確定する効力があるものではない。買収の計画は買収手続の一段階をなす市町村農地委員会の処分に過ぎないので更に都道府県農地委員会の承認及び都道府県知事の買収令書の交付を経て買収手続は完結するのである。しかして買収計画の確定的効力は前記の如くその内容に存する違法を違法なしと確定する効力がないのであるから都道府県農地委員会の買収計画承認の権限は買収計画の内容の適否を審査する権限を包含するものと解すべく更に都道府県知事は買収計画又はその承認の決議に対しこれを再議に付して是正させる権限を有するのである(農地調整法第一五条ノ二八)故に都道府県農地委員会や知事が右権限の適正な行使を誤つた結果内容の違法な買収計画に基づいて買収処分が行われたならばかかる買収処分が違法であることは言うまでもないところで当事者は買収計画に対する不服を申立てる権利を失つたとしても更に買収処分取消の訴においてその違法を攻撃し得るものといわなければならない、然らば右と同一の見解に立つ原判決は正当で論旨は理由なきものである。

よつて民訴第三九六条、第三八四条第一項、第九五条、第八九条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎)

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