大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)2025号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人大野正直上告趣意第一点について。

本件は、第一審判決が「被告人は昭和二一年一月四日附連合国最高司令官覚書該当者の指定を受けた者であるが、昭和二三年一一月二七日林証寺において開催された居村農業調整委員候補者推薦詮衡委員会に字会代表者として出席した上、後藤源四郎を推薦し同委員会をして同人を農業調整委員候補者として推薦せしめ以て政治上の活動をしたものである」との事実を確定し被告人を昭和二二年勅令第一号(以下追放令と称す)第一五条違反の罪に問擬したので原審における控訴趣意は、農業調整委員は右勅令にいわゆる公職ではなく、被告人の行動は純然たる社会活動であって政治上の活動とはいえないと主張したのに対し、原判決は「昭和二三年一〇月一四日総理庁令農林省令第一二号によれば覚書該当者が農業調整委員に就職することを禁止しまたこれと、意思を通じて、覚書該当者の支配を実現するような行為を禁止してあることから看ると、右調整委員の職は法律上公職と同一の取扱を受けるものであることが明らかである。而して公職の候補者を推薦することがいわゆる政治上の活動であることは既に最高裁判所判例の示す通りであるから農業調整委員の候補者を推薦することも亦政治上の活動に該当するものといわなければならない」として、右主張を排斥したところ右原判決の判断は前記追放令第一号第一五条にいわゆる政治上の活動の意義に関する最高裁判所大法廷の判例(昭和二三年(れ)第一八六二号同二四年六月一三日大法廷判決)の解釈を誤り、これと相反する判断をしたものとして、原判決を非難するものである。しかし農業調整委員会は食糧確保臨時措置法により設けられたもので都道府県農業調整委員会は都道府県知事が、市町村農業調整委員会は市町村長が夫々農業計画及びその実施に関し必要な事項を決定するについて、必ずその議決を経なければならない議決機関であり、(同法第四条、第五条参照)しかも右農業計画というのは、同法第二条第二項によれば「主要食糧農産物の生産数量、生産者保有数量若しくは、供出数量(代替供出の範囲及び比率を含む)又はその生産に必要な肥料農薬若しくは、農機具、等の配給数量について行政庁の定める計画をいう」ものであるから、市町村農業調整委員会は単なる経済団体ではなく、行政庁であり、公職である市町村長が右農業計画を定めるにあたり必ずその議決を経なければならない一の政治的性格を有する議決機関であってこれが構成員である市町村農業調整委員も亦、公職である市町村長のする、主要食糧農産物の生産、保有、供出に関する、政治上の施策決定に参与するものであるといわなければならない。そして同委員の選挙に関しては、その選挙権被選挙権について、同法に規定せられ、その選挙手続については、同法施行令の規定するところである。してみれば被告人が居村農業調整委員会の委員候補者を推薦詮衡するための、会合に出席し、右委員候補となるべき者を推薦することは、間接とはいえ、公職である市町村長の政治上の施策又は活動の企画決定に参与し、これを推進し、支持し若しくは、反対することによって、現実の政治に影響を存ぼすような行為であって、前記当裁判所大法廷の判例の判示する政治上の活動というにあたるものといわなければならない。してみれば原判決は正に右判例に従った判断をしたものでその他原判決には何等右判例と相反する判断をしたところは存しない。よって論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決の検察官の控訴趣意に対する判断は、第一審判決が公訴事実第二乃至第五の事実は、犯罪の証明がないとしたのは事実を誤認したものであるとし第一審判決を破棄したに止まり、原判決は自ら何等被告人の犯罪事実を確定したものではない。被告人の行為がいわゆる政治上の活動となるか否かは差戻を受けた第一審裁判所が更に本件につき、審理をし、もし証拠により被告人に追放令第一五条に違反する犯罪事実があると確定した場合にはじめて、論ぜらるべきことであって、原判決のこの部分に対する判断は前記当裁判所大法廷の判例とは何等関係ないものであるから、原判決は、最高裁判所の判例と相反する判断をしたとの論旨は上告適法の理由とならない。

よって、刑訴第四〇八条により主文のとおり判決する。

右は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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